事例名称 |
スチレン回収塔廃液タンクにおける高温の留出液の異常反応による火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1993年09月05日 |
事例発生地 |
大阪府 高石市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
樹脂装置の未反応スチレンを回収する蒸留塔で、塔頂コンデンサーが詰まり気味になった。塔底圧力、温度が上昇した。塔底液の留出先の廃液タンクで高温のため重合が起こった。気が付いた作業員が冷却作業を始めたが、間に合わず内液が噴出して、火災になった。廃液タンクの危険性に対する事業所の認識不足のため、蒸留塔および廃液タンクの温度圧力管理不十分による破裂事故であろう。 |
事象 |
合成樹脂製造工場で未反応スチレンモノマーを蒸留で塔頂留出として回収する。その蒸留塔の塔底廃液が留出先の廃液タンク内で異常反応を起こして、タンク火災になった。 |
プロセス |
貯蔵(液体) |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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物質 |
アクリロニトリル(acrylonitrile)、図3 |
エチルベンゼン(ethylbenzene)、図4 |
廃油(waste oil) |
事故の種類 |
漏洩、火災 |
経過 |
1.平常運転中の巡視で、廃液タンクの通気管から白い蒸気が出ているのを発見した。 2.工業用水を用いてタンク冷却をした。資料に記載はないが、タンクの冷却コイルの使用であろう。 3.廃液タンクの屋根が破損し、内容液が噴出し、火災になった。 |
原因 |
未反応のスチレンモノマーを回収する蒸留塔において、塔頂コンデンサーが回収スチレンの重合物のために目詰まりを起こした。その結果、塔内の温度、圧力が上昇し、設計温度(40℃)よりも高い廃液がタンクに入った。そのため、重合反応が起こった。タンクの温度と圧力が上昇し、廃液が噴出した。静電気火花により引火したと推定された。タンクの異常に気づいたときに、タンクの冷却をしたが有効ではなかった。なお、回収塔への供給液はアクリロニトリル、エチルベンゼン、スチレン、オリゴマーなどの混合物であり、塔底抜き出し液はアクリロニトリル、エチルベンゼン、オリゴマーなどの混合液と見られる。 |
対処 |
自衛消防(3点セット)及び公設消防 |
対策 |
管理作業標準書の見直し、監視体制不十分、類似施設の総点検 |
知識化 |
廃液は複雑な組成を有しており、温度が上がると思わぬ反応が起こることもある。廃液タンクの危険性は十分認識しておく必要がある。 |
背景 |
温度、圧力等の運転条件の管理不十分が見掛けの基本要因であろう。スチレンは非常に重合しやすい性質を持っている。高濃度になる塔頂で何らかの原因で重合によりコンデンサーの何処かが詰まり出せば、そこが核となってさらに重合物が溜まりやすくなる。スチレンの性状や詰まりの一般論を見落として管理していた可能性があろう。また、タンクの冷却コイルは高温になるのを防止するために設けられていたのではないだろうか。9月初めの未だ暑い季節では、通水してタンクを冷却しておくのが基本ではなかったかと推定する。 |
データベース登録の 動機 |
タンクへの留出温度が高かった為に起きた異常反応による火災例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、調査・検討の不足、仮想演習不足、想像力不足、無知、知識不足、勉学・経験とも不足、計画・設計、計画不良、設計不良、不良現象、化学現象、異常反応、不良現象、機械現象、閉塞、不良現象、化学現象、温度上昇、二次災害、損壊、破裂・火災、組織の損失、経済的損失
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例-平成5年(1994)、p.128-129
全国危険物安全協会、危険物施設の事故事例-Case 100-(1999)、p.23
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
タンク屋根板が破裂により開口、タンク本体及び付属配管の破損及び焼損、隣接危険物施設の一部焼損. |
被害金額 |
780万円(消防庁による) |
マルチメディアファイル |
図3.化学式
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図4.化学式
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備考 |
WLP関連教材 ・プラント機器と安全-運転管理/静止機器の安全 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
古積 博 (独立行政法人消防研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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