事例名称 |
シアン化ナトリウムなどの毒劇物貯蔵倉庫の溶接の不始末による火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1980年10月01日 |
事例発生地 |
愛知県 大府市 |
事例発生場所 |
倉庫 |
事例概要 |
有害性物質なども保管する化学品倉庫の屋外で溶接工事を行った。溶接の火花が近くの化学製品に着火した。その火が保管する化学品に延焼した。多量の有害性物質を保管する場合、法律適用外であっても、地元自治体(特に消防)に通知し、火災時の対応を事前に協議することが必要であろう。有害性物質火災の発生に備えて自治体各部局は連携を強化すべきであろう。 |
事象 |
溶接火花により、倉庫外周に置いた発泡スチロールが着火した。それが消防法危険物や劇毒物、プラスチックを貯蔵していた倉庫に着火し、倉庫が焼損しただけでなく、火災によって生成した有害ガスで市民8000人が避難した。 |
プロセス |
貯蔵(固体) |
物質 |
ポリ塩化ビニル(polyvinyl_chloride)、図2 |
シアン化ナトリウム(sodium cyanide)、図3 |
事故の種類 |
火災、健康被害、環境汚染 |
経過 |
1980年10月1日12:00頃 溶接火花が倉庫脇のプラスチック製品に着火した。 12:13 大阪市消防本部出動指令 13:30頃 発災倉庫の所長が戻り、倉庫内にシアン化ナトリウム他の多量の有害性物質が保管されていることが分かった。 15:30頃 周辺住民への避難勧告が出された。 その後避難勧告は避難命令と変わり、避難地域は拡大した。 16:00頃 有害性物質の荷主担当者が現場到着し倉庫内の化学物質の説明した。 10月2日06:30 避難命令が解除された。 10月2日07:00 鎮火が確認された。 |
原因 |
溶接火花が倉庫外に堆積されていた発泡スチロール等に着火した。 |
対処 |
化学消火、住民避難 |
対策 |
可燃物近傍での火器使用作業における安全手順の確立 |
知識化 |
シアン化ナトリウムのような水や酸と反応して有害なシアン化水素を発生するおそれのある物質の保管が明らかな場合、注水消火を避ける。消火に使用した消火剤、無害化剤は回収し再処理をする。燃焼残渣は適切な方法で無害化する。 |
背景 |
可燃物の近傍で、不用意に火花が発生する溶接による改修工事を実施した。 |
後日談 |
化学薬品の保管方法の見直し、消防面の防災強化がクローズアップされた。 |
データベース登録の 動機 |
倉庫火災による有害ガスの発生により市民が被災した事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、管理の緩み、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、計画・設計、計画不良、工事計画不良、使用、保守・修理、不適正な火気使用工事、二次災害、損壊、火災、二次災害、環境破壊、有毒ガス発生、社会の被害、社会機能不全、住民8000人避難、身体的被害、負傷、3名負傷、組織の損失、経済的損失、直接損害8億円
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情報源 |
愛知県消防防災課、近代消防、No.217(1980)、p.102-106
古積博、中武功、大府市「MS運輸T倉庫」火災について
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
3 |
物的被害 |
火元倉庫A棟半焼(2155.5平方m)、類焼雨天荷役場半焼(457.13平方m)。 |
被害金額 |
約8億円(大府市消防本部による) |
社会への影響 |
黒煙が付近の住宅街を直撃し、塩素ガスによる目やのどの痛み多数。大府市が風下の住宅地域約2000世帯、8000人に避難命令、約400人が避難した。倉庫付近の河川では、放水により流出した化学薬品や化学消火剤が流入し、刈谷市境川で魚が大量死。 |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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図3.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
若倉 正英 (神奈川県 産業技術総合研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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