事例名称 |
一般廃棄物焼却施設における水素ガスの爆発事故 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1995年07月06日 |
事例発生地 |
神奈川県 伊勢原市 |
事例発生場所 |
清掃工場 |
事例概要 |
一般廃棄物の焼却炉で爆発が起こった。一般廃棄物の中に大量のアルミニウムが入り込み、それが原因で固い塊の灰をつくり、焼却炉の運転ができなくなった。その灰への散水が原因となって爆発した。廃棄物処理では様々な非定常作業があり、取り扱う物質の組成や性状が多様なため、危険個所の抽出や安全教育、マニュアルの作成が重要である。 |
事象 |
一般廃棄物の焼却施設で、突然爆発が起こった。焼却炉下部のホッパーシュートに堆積したクリンカーの除去作業中に突然爆発し、職員が高温のガスと灰を浴びて火傷を負った。 クリンカー: 高熱で溶けたアルミニウムなどの金属に焼却灰などが付着してできた固い塊 |
プロセス |
廃棄 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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物質 |
アルミニウム(aluminium)、図3 |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
1995年7月6日01:00 焼却炉の灰落としダンパーに異常を確認し、燃焼継続は無理と判断した。 01:45 ホッパーへのゴミの投入を中止し、埋火の準備を開始した。 04:00 埋火作業を完了した。 08:20 点検孔の灰落とし作業中に、クリンカーと思われる固い層があったため、断続的に注水しながら、突きノミでクリンカーを突き崩して除去していた。 09:59 灰落としシュート内部で爆発が起こり、点検口から高温のガスと灰が噴出した。 |
原因 |
灰落としシュートと灰押し出し機内で発生した水素を主成分とする可燃性ガスが、可燃性混合気を形成して高温のクリンカーなどによって着火した。 |
対処 |
救急車により病院に搬送 |
対策 |
1.アルミニウムを含むゴミは、灰詰まりの原因となるクリンカーを生じやすいので、大量の焼却をしない。 2.シュート内の灰詰まりを監視するためのカメラ、温度センサーを設置する。 3.灰除去の作業では水による強制冷却をせず、放冷する。 4.安全作業のためのマニュアルの作成を行う。 |
知識化 |
高温の廃棄物焼却灰は水と接触して水素を発生することがある。アルミニウムは低温でもアルカリや酸と接触して水素を発生する。 |
背景 |
二つの基本的要因があった。 1.本来産業廃棄物として処理すべき大量のアルミニウムが一般ゴミとして持ち込まれた。そのため、それを知らずに焼却処理して高温のクリンカーが発生し、焼却炉の運転停止に至った。 2.アルミニウムなどの金属分を含む高温の灰に水をかけると水素が発生するという、安全上の知識が欠けていた。そのため、クリンカー除去作業で高温のクリンカーに水をかけた。当時の設備では不可抗力とも考えられる。 |
よもやま話 |
☆ 家庭ゴミ等の一般廃棄物は、分別が進んだとはいえ、かなり雑多で危険なものを含むことがある。この例では、本来一般ゴミではなく、産業廃棄物として処理されるべきものが持ち込まれていた可能性がある。 ☆ 1983年に全く同種の事故があり、それに関連した報文が1994年に発表されている。裁判が絡んで報告できなかったようであるが、この事例以前に発表されている。 |
データベース登録の 動機 |
作業者が予期していなかった水素ガスの発生に伴う事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不足、組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、不注意、理解不足、リスク認識不足、計画・設計、計画不良、定常操作、誤操作、何となく注水、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、死亡、身体的被害、負傷、2名負傷
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情報源 |
安田憲二、竹生田秀夫、宮川隆、清水保夫、安全工学、No.198(1997)、p.183-187
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死者数 |
1 |
負傷者数 |
2 |
物的被害 |
灰落としシュート部分変形.隣接する加湿機室内一部破損. |
マルチメディアファイル |
図3.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
若倉 正英 (神奈川県 産業技術総合研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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