事例名称 |
大雨の影響による脱硫装置反応器の出口配管フランジ部分からの漏洩、火災 |
代表図 |
|
事例発生日付 |
1998年07月30日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
大雨時に上部プラットホームのレインホールから落下した大量の雨水が、保温の雨仕舞いの悪さから高温フランジ近くに侵入した。フランジとボルトの冷却収縮の違いから、高温フランジ部からガス漏れが発生した。集中豪雨という思わぬ自然事象による火災であった。落雷や地震など自然事象を防災上の危険要素として考慮することが必要であろう。建設末期の些細な指示ミスと、運転時にこの板金の不具合を見落としたことが真の原因であろう。 |
事象 |
大雨の時に、軽油脱硫装置の反応塔出口側配管フランジ付近の保温下に雨水が浸み込んだ結果、フランジから水素、ミスト状軽油が漏洩、火災となった。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
反応 |
水素化脱硫 |
物質 |
水素(hydrogen)、図2 |
軽油(gas oil) |
事故の種類 |
漏洩、火災 |
経過 |
1. 発災数時間前に集中豪雨があり、レインカバーと保温板金の間に多量の水が流入した。 2. その後水素と軽油が漏洩着火した。 |
原因 |
雨水の流入で継ぎ手部のフランジとボルトが冷却収縮した。熱容量とプロセス温度の影響の大きさの2点から、ボルトの方が大きく収縮した。このためフランジが増し締め状態となり、締め付け力がリングガスケットに集中して塑性変形し、シール性が低下し、漏洩した。 |
対処 |
自衛消防により鎮火 |
対策 |
1.当該フランジ周辺への雨水流入防止対策を実施 2.同種環境の部位を点検、対策を実施 3.フランジの締め付け力の管理を見直し |
知識化 |
プラントの安全対策では大雨や、気温、など天候条件、地震、雷などの危険自然事象をも前提に安全対策を考慮することが必要である。 |
背景 |
建設担当者の想像力の欠如と、運転時の板金不具合の見落としが重なった。大雨による雨水の流入を予測していなかった。プラットホームのレインホールは建設の最終段階で現場を見ながら場所を指示するが、そのときに運転に入ってからのイメージを捉えられなかった。さらに完成後7年経過した装置であることを考えると、運転時の注意力が不足していたことも要因の一つだろう。 レインホール: 屋外型の装置において、床面に雨水がたまらないように2階以上の床に開ける小孔をいう。 |
よもやま話 |
☆ 装置建設ではバルブ位置やプラットホームのレインホールの位置まで気が回らないことがままある。トラブルがあってから高温部の上にフランジやベントバルブを設置したことが原因だったと気付かされる。 |
データベース登録の 動機 |
建設終期の現場指示ミスと設備管理ミスによる火災例 |
シナリオ |
主シナリオ
|
調査・検討の不足、仮想演習不足、想像力不足、組織運営不良、構成員不良、構成員経験不足、未知、異常事象発生、想定以上の大雨、計画・設計、計画不良、設計不良、不良現象、熱流体現象、熱収縮、二次災害、損壊、漏洩・火災
|
|
情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例-平成10年(1999)、p.66-67
川崎市消防局予防部保安課、川崎市コンビナート安全対策委員会資料(1998)
|
死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
圧力計、配管保温材焼損。 |
被害金額 |
10万円(消防庁による) |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
|
分野 |
化学物質・プラント
|
データ作成者 |
若倉 正英 (神奈川県 産業技術総合研究所)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
|