事例名称 |
ナフタレン酸化反応装置の反応器のデッドスペースでの爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1987年02月04日 |
事例発生地 |
神奈川県 川崎市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
ナフタレンを空気酸化してナフトキノンと無水フタル酸を製造する装置のナフタレン混合器内で爆発が起こった。破裂板3枚が飛散し、その一部が隣接事業所まで飛散した。人的被害はなかった。 原料の不揮発成分が風管のデッドスペースに蓄積して酸化され、低温発火性物質に変質し、蓄熱発火してナフタレンー空気混合気に引火して爆発したものと推定される。 危険性の検討が不十分で、設備の維持管理に不備があった。 |
事象 |
ナフタレンを空気酸化してナフトキノンと無水フタル酸を製造する装置のナフタレン混合器内で爆発が起こった。破裂板3枚が飛散し、その一部が隣接事業所まで飛散した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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反応 |
酸化 |
物質 |
ナフタレン(naphthalene)、図3 |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
当設備は1973年に設置されたもであり、1987年にはA,B二つの系列があったが、事故を起こしたA系列は1986年4月に増設されたものである。 1. A系列は稼働以来3回停止してタール付着の可能性のある風管や混合器の開放点検を行った。 この際付着したタールの掻き落としを行っただけで、完全な除去を行わなかった。 2. 事故直前まではA系列は正常に運転されていたが、1987年2月4日9時16分頃、混合器下部で突然爆発が起こった。 3. 混合器から反応器にいたるまでの間にあった3個の破裂板全てが破れ、その破片が飛散した。 |
原因 |
混合器内で噴射されたナフタレンに含まれる不揮発性分が、器壁に沿って落下して混合器下部の風管のくぼみに溜まった。それが酸化され、低温発火性物質となったと推定される。この部分は空気の流れのデッドスペースとなっていたので、除熱されず、酸化熱が蓄積して発火し、比較的新しい未酸化タールから気化したナフタレンガスー空気混合気に引火して爆発したものと推定される。図2参照 |
対処 |
インターロックが作動し、設備は緊急停止し、ナフタレン供給ポンプが停止し、20秒後に送風空気が停止して、設備が自動停止した。 |
対策 |
1.風管のデッドスペースをなくす。 2.3ヶ月に1回点検し、6ヶ月に1回内部のタールを焼却によって除去する。 3.破裂板の飛散を防止するためにスリット入りの破裂板を使用する。 |
知識化 |
1.設備に付着したタールなどは長期間に酸化されて、発熱開始温度の低い低温発火性物質に変質する危険性がある。 2.設備に付着あるいは混入する不要な物質が事故の原因となる可能性がある。 3.液体を噴霧しても、全てが均一の微少粒体になるわけではない。再結合して大きな粒になったり、固体や密度・粘度の異なる不純物は最初から異なる粒子になる可能性がある。 |
背景 |
1.設備の構造に関する危険性の検討が不十分であった。具体的には配管等の行き止まり部の持つ危険性と噴霧後の液体の挙動に関し無関心であった。 2.付着タールの清掃を行っているが、製品性状への悪影響か装置の詰まり等に対する関心だけで、それが貯まっていることの危険性に対し関心を払っていないように見受けられる。設備の維持管理の不備とも考えられるだろう。 |
よもやま話 |
☆ 行き止まり配管部などデッドスペースは各種のトラブルの元になっている。 |
データベース登録の 動機 |
配管形状の不具合で、噴霧された液体の一部が溜まり込んで酸化蓄熱から爆発に至った例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、管理の緩み、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、調査・検討の不足、事前検討不足、設備の構造と危険性、計画・設計、計画不良、設計不良、使用、保守・修理、清掃不充分、不良現象、化学現象、発熱、二次災害、損壊、爆発
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情報源 |
辻本典雄、第35回全国消防技術者会議資料(1987)
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
破裂板3枚、アーススクリーン破損、ナフタレン噴射ノズル1個、熱電対式温度計2本、化成器入口側のフレームアレスター変形. |
被害金額 |
80万円(消防研究所会議資料による) |
マルチメディアファイル |
図3.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
小川 輝繁 (横浜国立大学大学院 工学研究院 機能の創生部門)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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