事例名称 |
トルエンタンクサンプリング作業中の静電気蓄積による爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1976年01月26日 |
事例発生地 |
岡山県 倉敷市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
トルエンタンクの屋根部の検尺孔からサンプル採取器を使いサンプリング中、突然爆発が起こった。静電気帯電防止対策をまったく取っていなかったため、サンプル採取器に帯電した静電気の放電によりタンク上部の可燃性混合気に着火・爆発した。タンク温度からトルエンは可燃性混合気を形成していたと推定できる。1名負傷し、タンクが破損した。 |
事象 |
製油所のトルエンタンクのサンプリングをタンク屋根から行っていて突然爆発した。 |
プロセス |
貯蔵(液体) |
物質 |
トルエン(toluene)、図2 |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
1. 作業員がタンク屋根に登り、検尺孔を開けて、試料採取器をタンク内に下ろし共洗いをすませた。 2. 1回目の試料採取を、採取器の栓をせずにタンク底部まで下ろし、そのままタンク上まで高速度で引き上げた。ゴム手袋をしたまま、ガラス瓶に試料を開けた。 3. 2回目の試料採取のため、採取器をタンク内に下した時、液面に到達する前に爆発し、タンク頂部が変形した。 |
原因 |
静電気火花放電であった。大きい引き上げ速度で採取器が静電気帯電し、ゴム手袋での取扱い、採取器の吊上げロープが木綿であったことからアースできずに帯電したままであった。その状態で次のサンプル採取を行ったので、検尺孔の入口で放電した。なお、タンク温度から可燃性混合気を形成していたと推定できる。 |
対処 |
自衛消防隊による散水 |
対策 |
1.タンク上部からのサンプリングは必ず静電気対策をとる必要がある。具体的には人がタンクに上がる前に人体の除電を行う、サンプル採取器の吊りロープは導電性を持たせ確実にアースを取る、さらに採取器の移動はゆっくりと行う。 2.可能なら、タンク上部からのサンプリングはやめて、別の方法を採用する。 3.作業基準を作成し、十分な教育を行う。 |
知識化 |
タンク上部のように気相からサンプルを取る時は、必ず十分な静電気帯電防止対策をとる。 |
背景 |
無知あるいは作業指示違反では、と考えられる。具体的には、”静電気対策が取られていなかった”ことに尽きる。なぜ、そうなったのか。 |
よもやま話 |
☆ タンクへの移送でも静電気は発生し、帯電する。特に液状での電気抵抗が1010Ωm以上の可燃物は流速制限とサンプリングまでに十分な静置時間を取るべきだ。また安全維持のためには気相部の窒素シールが有効である。なお、全ての油種に於いて移送開始時の初速制限が必要で、1m/sec以下とすべきであろう。 |
データベース登録の 動機 |
タンクサンプリング時に静電気対策を取らずに爆発した典型例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、管理不良、作業管理不良、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、無知、知識不足、何も考えない、不良行為、規則違反、安全規則違反、不良現象、熱流体現象、静電気帯電、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、負傷、組織の損失、経済的損失、タンク損壊など400万円
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情報源 |
消防庁、危険物製造所等の事故事例集‐昭和51年(1977)、p.130-131
北川徹三、爆発災害の解析、日刊工業新聞社(1980)、p.70-73
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
1 |
物的被害 |
トルエンタンク頂部切損変形 |
被害金額 |
372万円(消防庁による) |
全経済損失 |
370万円 |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
小林 光夫 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻、オフィスK)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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