事例名称 |
医薬中間体ろ過工程で静電気帯電による火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1985年03月15日 |
事例発生地 |
山口県 新南陽市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
医薬品中間体の製造で固体をn-へキサンからろ過分離後、ろ過器から取り出し中に火災が発生した。ろ過品中のn-へキサンの蒸発とろ布の静電気帯電が原因である。ろ過後の固体には、必ず液体成分が残ることを意識していないことが要因と思われる。 |
事象 |
医薬中間体をろ過器から乾燥機へ移し変え作業中、ろ過品中のn-ヘキサンが蒸発し、静電気着火した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
分離 |
物質 |
ヘキサン(hexane)、図2 |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
1. 医薬中間体の反応を終了し、ろ過器でろ過を終了した。 2. ろ過器から乾燥機へ移し換えを始めた。移し換えはろ過器下部にポリプロピレン製のシューターを取り付け重力で乾燥機に落下させる。このときシューターに製品がつまらない様に手で叩いている。 3. 移し変え作業が終了し、ろ過器に残った製品を掻き出している時に突然シューター内で火災が発生した。 |
原因 |
1.移し換え品にはn-へキサンが20%含まれていた。シューター付近は可燃性混合気を形成していた。 2.グラスライニング製のろ過器からポリエチレン製のろ布とろ布押さえを引出した時に、ろ布に帯電し、ろ過器の金属部に放電した。 |
対処 |
自衛消防隊の消火活動、公設消防は出動だけ |
対策 |
1.移し換え作業時のn-へキサン濃度を下げる。 2.ろ布に導電性の材質を使用する。 3.作業者への安全教育の実施する。 |
知識化 |
1.導電性のない物質で試料を取扱うと静電気が帯電する。ごく当然のことだが、忘れられることが多い。 2.ろ過後の固体ではドライには絶対ならない。数十%の液が残っている。液が揮発性なら雰囲気が爆発範囲になっても不思議はない。 |
背景 |
1.静電気帯電に対しまったく関心がなかった。ポリプロピレンが非導電性で帯電することの意識がなかったと思われる。 2.n-へキサン蒸気の存在を意識しなかった。 ろ過器で残った固体には液成分が、必ず残り、軽質油ならそれが蒸発して空気と混合する。少し気を付けていれば、臭気で分かるが、事故がなかったことに安心して、安全意識が低下した可能性がある。 |
データベース登録の 動機 |
非導電性の布の使用に起因する静電気帯電による典型的な火災例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、安全対策不良、組織運営不良、管理不良、作業管理不良、無知、知識不足、勉学不十分、計画・設計、計画不良、設計不良、定常操作、誤操作、いつもの通りの操作、不良現象、熱流体現象、帯電、不良現象、化学現象、蒸発、二次災害、損壊、爆発、組織の損失、経済的損失、損害額400万円
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情報源 |
中央労働災害防止協会安全衛生情報センター、労働災害事例 No.631 、中央労働災害防止協会ホームページ
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
濾布、シューター、空調フィルター、フレキシブルホース、および製品等 |
被害金額 |
物的被害換算420万円(板垣資料による) |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
小林 光夫 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻、オフィスK)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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