失敗事例

事例名称 紙製工場の抄紙室定常作業のカッター交換時の紙粉の爆発
代表図
事例発生日付 1995年02月05日
事例発生地 北海道 赤平市
事例発生場所 製紙工場
事例概要 抄紙工場で集塵装置ダクト内に紙粉が堆積していた。抄紙室にも紙粉の粉塵が浮遊し、湿度も低かった。平常の作業中に小さなきっかけで着火し、紙粉が爆発した。それが室内の浮遊粒子の粉塵爆発を呼んだ。環境管理の悪さが原因と思われる。
事象 製紙工場のロールの巻取り作業中に紙粉が着火し紙粉が爆発し、さらに室内に浮遊している粒子群が粉塵爆発した。
プロセス 製造
単位工程 その他
物質 紙粉(paper_powder)
事故の種類 爆発
経過 1. 製紙工場の抄紙室で抄紙機のドライヤーから原紙を切断するカッターのシリンダーを空気圧で動かした。
2. 次に抄紙機のドライヤーから原紙を剥がすカッターを作動させようとしたところで、この系統の集塵装置内の紙粉が着火、紙粉が爆発した。
3. 室内の浮遊粉塵に燃焼が伝播し、爆発が抄紙室全体に拡大した。
原因 着火源は特定されていないが、紙粉が堆積していたため、長期に置かれた紙粉が乾燥炭化し発火した可能性がある。あるいは、静電気、カッターと抄紙機の接触火花等が着火源として推定されている。集塵装置内に紙粉が堆積していたことと、抄紙室内に爆発を起こすような粉塵雲があったことが原因であろう。さらに、室内湿度が局部的には15%以下で乾燥していた。
対策 1.機械設備を改善し、粉塵の集積防止、集塵装置内の金属摩擦を減らす。
2.集塵装置の能力、集塵方法、清掃等を見なおし、紙粉を減らす。
3.室内環境(湿度,温度等)を適切に維持する。
4.安全管理体制を整備するとともに,安全管理規定,作業標準の整備と安全教育の徹底を図る。
知識化 紙は可燃物であり、粉塵になれば粉塵爆発を起こすことがある。他の固体物質でも粉を発生するようなものは、液体の危険物に準じた気相の安全管理が必要なのではないか。
背景 1.集塵装置の能力が不足し、ダクト内に粉塵が集積した。
2.作業環境の測定もしていない。室内にどの程度粉塵が浮遊しているか、湿度は十分に保たれているかなど問題があった。
3.基本的には可燃性の粉体を扱うための安全に関する調査と安全対策の欠如が考えられる。
データベース登録の
動機
思いがけない物質でも粉塵爆発を起こす事例
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、管理不良、作業管理不良、無知、知識不足、勉学・経験不足、計画・設計、計画不良、設計不良、使用、運転・使用、環境保持不良、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、負傷
情報源 中央労働災害防止協会安全衛生情報センター、労働災害事例 No.1055、中央労働災害防止協会ホームページ
死者数 0
負傷者数 1
被害金額 5億2,000万円(消防庁による)
分野 化学物質・プラント
データ作成者 小林 光夫 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻、オフィスK)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)