事例名称 |
ドラム缶から使用済み乾燥剤の汲出し中の爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1995年04月05日 |
事例発生地 |
茨城県 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
使用済みの乾燥剤を長期間保管した。乾燥剤にはプロセス流体であったフロンが含まれていた。そのフロンが1,1-ジクロロエチレンになり、さらにその一部が過酸化物に変質していた。作業のショックで爆発範囲内のにあったジクロロエタンと過酸化物の混合ガスが爆発した。化学的な検討をせずに長時間野積放置したのが原因である。 |
事象 |
化学工場の敷地内にある産業廃棄物野積場に、廃棄物のドラム缶が約半年間放置された。そのドラム缶から内容物を移し替えを始めた。そのときドラム缶内で爆発が起こり、1名が負傷した。 |
プロセス |
廃棄 |
物質 |
R-141b(フロン)(R-141b(flon))、図2 |
1,1-ジクロロエチレン(1,1-dichloroethylene)、図3 |
モレキュラーシーブ(molecular_sieve) |
過酸化物(peroxide) |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
1. 1994年9月26日 ある装置の最終工程の脱水槽から、モレキュラーシーブをドラム缶4本に抜き出し、工場内の産業廃棄物置き場に保管した。 2. 1995年4月5日 協力業者が、この6ヶ月強保管したドラム缶中身の乾燥剤を、汚泥置き場に廃棄するよう指示を受けた。 3. 指示を受けた下請けの作業者はドラム缶の乾燥剤を、トラクターショベルのショベルに移し替えて運ぶことにした。 4. 乾燥剤を200Lドラム缶から柄杓で汲出しショベルに移し替えを開始した。 5. 2本目のドラム缶の移し替えにかかった時、2本目のドラム缶内で「パチパチ」という音が聞こえた瞬間、ドラム缶内で突然爆発が起こった。 |
原因 |
ドラム缶の内容物である乾燥剤には、プロセス流体のフロンが含まれていた。そのフロンが長期野積の間にフッ素と水素が分離し、1,1-ジクロロエチレンを生成した。1,1-ジクロロエチレンの一部がドラム缶内に閉じ込められていた空気または他の物質に含まれた酸素と反応し過酸化物を生成した。過酸化物とジクロロエチレンとが爆発範囲内にあり、金属製柄杓とドラム缶の衝撃で爆発した。 |
対策 |
1.産業廃棄物として廃棄されるものは事前に化学分析をし、その結果に基づき化学変化の可能性を検討し、危険性を排除する処置を講ずる。 2.長期間保存する場合、事前検討を行い、保管中の化学変化により危険物を生じない様にする。 3.事前検討の結果より、廃棄物取扱い手順、作業基準等を定め、作業員に周知徹底する。 |
知識化 |
一見安定な化学物質も長期保管中に条件次第で化学変化をする。無条件に長期保管することは危険になることを銘記すべきである。 |
背景 |
化学物質の危険性を調査することもなく長時間放置した管理が基本要因と思われる。 |
データベース登録の 動機 |
廃棄物が長期保管中に化学的に変質した事例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、管理不良、下請け任せの作業方法、調査・検討の不足、事前検討不足、半年間の変化を考えない、計画・設計、計画不良、保管計画不良、使用、廃棄、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、負傷
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情報源 |
中央労働災害防止協会安全衛生情報センター、労働災害事例 No.1058、中央労働災害防止協会ホームページ
中央労働災害防止協会、災害発生状況の詳細(1995)
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
1 |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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図3.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
小林 光夫 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻、オフィスK)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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