事例名称 |
5-クロロ-1,2,3-チアジアゾール(5CT)の爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1980年05月14日 |
事例発生地 |
埼玉県 浦和市 |
事例発生場所 |
医薬品工場 |
事例概要 |
新規物質5CTの製造依頼を受けた会社で5CTを製造中、突然爆発した。物質の潜在危険性に関する知識不足が、製造委託側、製造受託側双方にあったための事故と考えられる。 |
事象 |
5CTの製造試作において、減圧蒸留後に移送容器への充填作業中に爆発、火災が発生した。有害性ガスが発生し、付近住民の避難も行われた。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
充填・小分け |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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物質 |
5-クロロ-1,2,3-チアジアゾール(5-chloro-1,2,3-thiadiazole(5CT))、図3 |
事故の種類 |
爆発・火災 |
経過 |
1. 5CTの減圧蒸留を50mmHgで実施し、午前中に初溜分の溜出を終了、午後より主溜分を500リットル受槽にて受けた。 2. 受槽は水冷却後再びスチームにて約40℃に加温(5CTの凝固点20~25℃)して、フラッシュバルブにケミカルホースを接続し、ケミカルドラムに充填する作業中に爆発事故が発生した。 |
原因 |
不明 |
対策 |
原因不明につき、未対策 |
知識化 |
新たに扱う物質については潜在危険性の事前評価が必要である。 |
背景 |
5CTの潜在危険性 |
後日談 |
5CTは、摩擦や打撃により容器中で容易に発火し、発火すると爆発に移行しやすく、加熱により激しく爆発し、爆発威力はTNTの80%程度であることが、後の調査でわかった。 |
よもやま話 |
事故当時、日本においては新たに扱われた物質であったが、ドイツBASF社では爆発事故の実績があった。また雑誌の記事ではあるが、発災社に製造を依頼した大手会社は、前年に同じ5CTの製造委託をした別の会社での爆発事故もあり、その危険性を知っていた可能性があり、道義的な責任が問題視された。 |
データベース登録の 動機 |
危険性未知物質の爆発事例 |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、運営の硬直化、理不尽な要求受入、調査・検討の不足、事前検討不足、潜在危険性評価せず、非定常行為、変更、新規実験の実施、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、死亡、2名死亡、身体的被害、負傷、12名負傷、社会の被害、社会機能不全、600名緊急避難、400棟被害、組織の損失、経済的損失
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情報源 |
消防庁、危険物製造所等の事故事例集‐昭和55年(1981)、p.222-223
浦和市消防本部、近代消防、No.212、p.113-116(1980)
田村昌三、新井充、阿久津好明、エネルギー物質と安全、朝倉書店(1999)、p.58-59
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死者数 |
2 |
負傷者数 |
17 |
物的被害 |
工場など36棟全・部分壊.住宅397棟の建物や窓ガラス破損. |
社会への影響 |
塩酸ガス発生.付近異臭.付近住宅内の棚の中の物落下.誘爆、有害性ガスの汚染による危険性があるとし、1980年5月14日19:13に付近住民に対し避難命令.約610人が3カ所に避難.15日8:00解除. |
マルチメディアファイル |
図3.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
新井 充 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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