事例名称 |
空気と窒素ガスとの接続間違えによる灯油タンク清掃作業中の酸欠事故 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1991年02月19日 |
事例発生地 |
大阪府 堺市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
タンクを開放して工事をするときにエアライン型頭巾をした。その時に酸欠事故が起こった。エアラインに間違えて窒素をつないだ。結果的にはヒューマンエラーであるが、ヒューマンエラーを起こし難くするための、フェールセーフ、フールプルーフの考え方が浸透していないのが問題である。 |
事象 |
浮き屋根式の灯油タンクの清掃作業前の点検に際し、保護具(エアライン型頭巾)の装着時に酸欠を起こした。 |
プロセス |
貯蔵(液体) |
物質 |
窒素(nitrogen)、図2 |
事故の種類 |
健康被害 |
経過 |
1991年2月7日 開放検査の準備に入った。順調に推移した。 2月19日 タンク底板検査のためのサンドブラスト作業が予定されていた。 10:00頃 作業員5名中1名がタンク外で監視し、4名がタンク内で所定の位置についた。 作業開始に備えて保護具を各自が装着、あるいは装着しようとしていたとき、3名が倒れた。 緊急連絡により現場に駆けつけた関係者により救急活動が行われ、救急病院に搬送された。1名が死亡、2名が入院する労災事故となった。 サンドブラスト作業: 微細な粉塵が大量に舞うため保護具が必要となる。 |
原因 |
1.典型的なヒューマンエラーであろう。エアライン型頭巾につながる空気ホースを窒素ガス配管に接続した。 2.間接的には、配管が複雑で、窒素配管が空気配管の近くにあったとか、作用指示の不徹底、現場確認の不備なども原因としてあげられている。 |
対策 |
類似災害防止の観点から製油所内空気配管取り出し口を総点検し表示を徹底する。 |
知識化 |
ヒューマンエラーは100%は避けられない可能性があるが、フェールセーフ、フールプルーフ技術の導入で、エラーを起こさない、あるいはエラーを起こしても事故に結びつかないシステムを考えることが重要である。 |
背景 |
一見ヒューマンエラーだが、この様なヒューマンエラーを防ぐ対策が取られていない。窒素を空気と間違えて使用すれば事故になることは目に見えている。窒素の配管、ノズルは窒素と一目で分かるような色や形態にしていたか、カップリングは他とは異なった型式のものを使用しているか、等の設備対応が最低限必要であり、設置者側の義務であると考える。また、ホースの接続作業も業者に任せず、設備を熟知した設備管理者が行わなければならない。監督者が所用で外出中に棒心が勝手にやったと情報源資料にはあるが、言い訳にもならないであろう。構内業者の教育も含め、設備管理側の責任が重大であると考える。 棒心;棒芯とも書く。現場作業等を行う小集団の指揮者をいう。boatswain甲板長からでた言葉といわれる。 |
よもやま話 |
☆ 製油所、石化工場などでは作業に使用する4種類の用役(工水、スチーム、空気、窒素)の供給ノズルを1カ所に集めている。(ホースステーション)その上で、お互いが間違わないように配管に色塗りをする、接続ノズルの形状を変える等の工夫をしている。 |
データベース登録の 動機 |
必然性を伴った人為ミスに見えるが、設備管理が問題だった事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、不注意、注意・用心不足、作業立会者不注意、使用、保守・修理、事前準備の不足、不良行為、規則違反、安全規則違反、身体的被害、死亡、1名酸欠、身体的被害、負傷、2名負傷
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情報源 |
平成3年の重大災害の概要、安全年鑑(1992)、p.215
高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.92-93
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死者数 |
1 |
負傷者数 |
2 |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
新井 充 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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