事例名称 |
エチレン製造装置におけるガソリン塔内充填物の更新作業時の塔内火災 |
代表図 |
|
事例発生日付 |
1991年05月16日 |
事例発生地 |
岡山県 倉敷市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
エチレン装置のガソリン塔の解放時に内部に蓄積したスチレン、インデン等の重合物が発火した。改造工事の影響で、変更管理の問題である。プロセスにおける不可視部分が正常に機能しているかをチェックすることの欠如が問題だった。 |
事象 |
エチレン製造装置の定期修理で火災があった。定期修理に合わせ、ガソリン塔の塔内充填物の交換を計画した。ガソリン塔の開放作業中に、内部の重合物から発火した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
設備保全 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
|
物質 |
スチレン、インデンなどの重合物 |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
1989年5月 定期修理工事、発災塔の内部点検を行ったが、汚れはなかった。 1990年5月頃 塔内差圧が上昇した。重合物の存在と考えた。 1991年3月18日 5月の定期修理時の開放では、塔内重合物が空気と発火する可能性があるので、湿潤状態で作業をするよう指示を出した。 5月10日 定期修理のため停止した。 07:30 窒素洗浄終了し、可燃性ガス、液の排除を確認した。 13:00 ガソリン塔は水洗浄後、マンホールを開けた。 20:30 エアムーバーにより、塔内の空気の強制置換を始めた。 16日02:25 パトロールでガソリン塔上部マンホールより、黒煙と小さな炎を見つけた。 |
原因 |
エチレン装置のガソリン塔上部にある充填層部分にスチレンおよびインデンなどの重合物が多量に付着していた。この付着物の中の不飽和重合物が酸化発熱して出火したものと推定される。なお、停止時のパージ、冷却なども重合物の影響で均一にできず、部分的に高熱になっていたところも存在したと考えられる。 |
対策 |
塔内の温度計を増設し、温度監視を強化する。 |
知識化 |
1.プロセスにおける不可視部分の機能状況をチェックするシステムの確立が重要である。 2.重合性の大きい物質の蒸留では乾燥部分を作らないことが重要になる。重合は避けられないが、洗い流してしまえば蓄積することは少ない。 |
背景 |
改造工事の影響の見落としと考えられる。還流量が減りすぎたか、充填層への液分配板の不具合かで、充填物表面の一部が濡れなかった。そのため、充填物表面で易重合性のスチレン、インデン等が重合し、それを洗い流すことができずに重合が促進されて、自己発熱性の重合物が蓄積した。重合触媒として、前回の定修時に充填層表面に発生した鉄さびが働いていたと推定される。 ある意味で不可抗力であるが、充填塔の液挙動と物質の重合性に対する配慮が欠けていた。 |
よもやま話 |
☆ 一時エチレン装置ではやった改造工事で、従来の段塔から蒸留効率のよい充填塔に変更して還流量を減らした。減りすぎて充填物表面を洗い流せなくなったため、重合しやすいスチレンやインデンの自己発熱性重合物の堆積が起きた。重点塔の特性を良く理解したい。 |
データベース登録の 動機 |
蒸留塔形式を充填塔に改造した効果が行き過ぎたことによる事故 |
シナリオ |
主シナリオ
|
組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、価値観不良、安全意識不良、安全対策不足、調査・検討の不足、仮想演習不足、機械と物質の組合せで検討しているか。、計画・設計、計画不良、プロセス設計不良、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、火災
|
|
情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例‐平成3年(1992)、p.110-112
高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.117-122
|
死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
エチレンプラントのガソリン塔本体の一部変形及びその内部の充填材及びトレイ等の一部溶損. |
被害金額 |
5,000万円(消防庁による) |
分野 |
化学物質・プラント
|
データ作成者 |
新井 充 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
|