事例名称 |
炭化水素類で閉塞した弁の加熱溶融作業中の火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1991年09月25日 |
事例発生地 |
大阪府 堺市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
化学工場の実験室での火事である。実験装置の流量計が流れないため、配管系の詰まりの溶融作業を行っていたところ出火した。閉塞したドレン弁を開状態のままで配管の復旧作業、火源となることが明らかなドライヤーの使用、ともに危険予知が欠如していたといえる。 |
事象 |
化学工場の実験室で火災があった。シクロドデカンを触媒を用いて空気により酸化し、シクロドデカノン、シクロドデカノールを生成する実験装置で、この酸化液(シクロドデカン、シクロドデカノン、シクロドデカノールの混合液)約50Lを酸化液タンクから抽出塔に送る配管に設けられた液量計に目詰まりが発生した。そこで清掃、調整を行っていたところ火災が発生した。 |
プロセス |
研究開発(研究) |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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物質 |
シクロドデカン(cyclododecane)、図3 |
シクロドデカノン(cyclododecanone)、図4 |
シクロドデカノール(cyclododecanol)、図5 |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
事故発生前日より流量計に異常がみられていたため、流量計の清掃を行った後、元の位置に取り付けて流量計の検定をしようとした。液が流れないため、流量計上流のドレンバルブを開け、配管およびドレンバルブの目詰まりを業務用ドライヤーで加熱溶融していたところ、火災となった。 |
原因 |
ドライヤーで目詰まりの加熱溶融を行っていたが、時間の経過とともに温度が上がり、ドレンバルブ先端より酸化液が吹き出した。このドライヤーの発熱部が火源となり着火したものと思われる |
対処 |
自衛防災組織による、化学消防車、大型高所放水車を用いての泡消火および冷却放水活動 |
対策 |
1.液の抜き出し口の向き、量について安全になるよう調整。 2.実験室内では、着火源となる器具(ドライヤー等)は使用禁止とし、室内の電気器具は全て防爆型にする。 3.リボンヒーターは温度制御装置を設け、誤っても配管が沸点近くにならないようにする。 |
知識化 |
非定常作業を行う場合、危険予知が事故防止に役立つことを知るべきである。 |
背景 |
バルブ開の状態で閉塞復旧作業をした誤判断と、裸火(ドライヤーは裸火)の使用での溶解作業の2つの安全の基本を逸脱した操作を行った。 完全な安全管理のミスと考えられる。 |
後日談 |
被災者は、自らが持っていたドライヤーが火源となって着火し、全身を熱傷、さらに燃焼ガスにより酸欠状態になったと推定されている。 |
データベース登録の 動機 |
危険予知の欠如がもたらした事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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無知、知識不足、勉学・経験不足、不注意、理解不足、リスク認識不足、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、非定常動作、状況変化時動作、閉塞時の作業、不良行為、規則違反、安全規則違反、二次災害、損壊、漏洩・火災、身体的被害、死亡
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情報源 |
高圧ガス保安協会、石油精製及び石油化学装置事故事例集(1995)、p.205-207
危険物保安技術協会、危険物事故事例セミナー(1996)、p.90-91
産業と保安、8(16)、18(1992)
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死者数 |
1 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
実験室約20平方m焼損.電気・計装設備焼損. |
被害金額 |
1万円未満(消防庁による) |
マルチメディアファイル |
図3.化学式
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図4.化学式
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図5.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
新井 充 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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