事例名称 |
大学における高圧示差熱天秤からの火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1996年06月04日 |
事例発生地 |
東京都 港区 |
事例発生場所 |
大学 |
事例概要 |
高圧示差熱天秤で純酸素雰囲気下で実験中、突如爆発した。原因が分からないので、総括を行うのは困難であるが、純酸素加圧下では、金属でさえ燃焼の可能性があることが認識されているべきである。 |
事象 |
大学における、イットリウム系超伝導物質の研究において、YBa2Cu3O7-8超伝導体の熱的挙動を確認するために、示差熱天秤にかけた。600℃に達したところで爆発的に燃焼し、天秤内部が燃焼するとともに、配線取り出し口から燃焼生成物が吹き出した。 |
プロセス |
研究開発(研究) |
物質 |
チタン(titanium)、図2 |
酸素(oxygen)、図3 |
ステンレス(stainless_steel) |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
YBa2Cu3O7-8超伝導体が、酸素の差により超伝導を失う理由を検証するために、この物質を純酸素加圧下で熱天秤にかけ、その熱的挙動を測定していた。前日までに、同一試料で、大気圧下、純酸素圧0.2MPaG,0.4MPaGの実験が完了しており、当日は試料交換を行わず、9時頃に装置の電源を入れ、室温で酸素圧0.9MPaGまで30分かけて加圧後、重量曲線が安定するのを待った。その後、昇温速度5K/minで90℃までの加熱を行うプログラムをスタートさせた。火災発生後の自動記録は、107分後600℃でストップしていた。 |
原因 |
発火までの昇温がプログラムどおりに行われていること、発火直前の急激な発熱が記録されていないことなどから、ヒーター線ターミナルでの結線の不備などからスパークやショートにより非金属材料への着火が起こり、次いでチタンが燃え、その発熱により一気に天秤部が燃焼・融解し、さらに融解金属がステンレスと反応したものと推察される。 |
対処 |
ボンベのバルブを閉鎖し、初期消火活動を行った。 |
対策 |
スパークやショートを防ぐ構造にする。耐圧容器内部の不燃材料化、測定条件の改良、周辺への防護対策を行う。 |
知識化 |
純酸素加圧という比較的危険性の高い状態が認識されていたか疑問である。 |
背景 |
不明 |
よもやま話 |
事故を起こした装置は、約4ヶ月前に納入され、2ヶ月前に調整された後、同様の条件で14~15回実験が行われていた。 |
データベース登録の 動機 |
大学における事故 |
シナリオ |
主シナリオ
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不注意、注意・用心不足、使用前点検不充分、価値観不良、安全意識不良、安全教育・訓練不良、使用、運転・使用、不良現象、電気故障、結線不備、二次災害、損壊、火災
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情報源 |
T大学B研究所新物質科学研究部門U研究室火災事故調査委員会報告書
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
実験装置、書類、椅子など焼損. |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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図3.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
新井 充 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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