事例名称 |
塩化ベンジルの重縮合反応による爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1997年07月29日 |
事例発生地 |
兵庫県 播磨町 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
さびが共存すると重縮合反応を起こす塩化ベンジルを工場として初めて取り扱った。その時に、何の安全対策もとらずに受器に仕込み爆発事故を起こした。配管等のさびの存在による混合危険が発端と考えられる。 |
事象 |
多種類の香料や医薬品の中間体をバッチで製造する医薬品中間体製造装置において、原料である塩化ベンジルが異常反応を起こし滴下受器が爆発した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
仕込 |
物質 |
塩化ベンジル(benzyl chloride)、図2 |
塩化水素(hydrogen chloride)、図3 |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
前の工程が終了した後に、系内のメタノール洗浄および蒸気洗浄を行った。減圧乾燥の後、15時頃に原料である塩化ベンジル118Lを滴下受器に減圧下(300torr)で仕込み、反応開始前の準備を行った。およそ1時間後、滴下受器のエアー抜き配管から白色のガスが出ているのを発見し、滴下受器に触れたところ、人肌程度の熱を感じ、周囲にはむせるような刺激臭が漂っていた。保安監督者は、噴出するガスが塩化水素であると判断し、噴出するガスを水を入れたドラム缶で水封処理していたが、ガスの噴出が激しくなり水封処理を行っていたホースが手で押さえられなくなり、16時17分頃に滴下受器が爆発した。 |
原因 |
原料である塩化ベンジルの危険性を十分認識せず、異物の混入防止対策を行っていなかった。鉄さびが滴下受器内に存在しているのに気付かずに、減圧状態(300torr)で液温約40℃の条件下において、塩化ベンジルを滴下受器に仕込んだ。塩化ベンジルが軽石状の鉄さびの間隙に入り込み、重縮合反応を開始し塩化水素ガスを発生、急激な内圧上昇により受器が爆発したものと推定される。 |
対策 |
1.取扱い危険物の危険性の把握。 2.異物の混入の防止。 3.作業マニュアルの見直し。 4.人的被害の拡大防止。 |
知識化 |
扱う物質の混合危険性を事前に調査するのは当然であるが、同時に考えられうる全ての異物に関する検討が必要である。 |
背景 |
操作基準の不備、塩化ベンジルの特性把握なしなど、安全管理不足と考えられる。 当工場で塩化ベンジルの取扱いは発災時が初めてであり、当然調査し対策を取るべきことを行わなかった。さびは絶対的に排除すべきなのだが、滴下配管等がさびだらけであり、重縮合時に発生するガス量は容器の耐圧を遙かに超える量になることが分かっていなかった。 |
データベース登録の 動機 |
混合危険による事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、調査・検討の不足、事前検討不足、反応危険検討なし、不注意、理解不足、リスク認識不足、重縮合反応、計画・設計、計画不良、プロセス設計不良、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、負傷、5名負傷、組織の損失、経済的損失、損害額700万円
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例‐平成9年(1998)、p.100-101
産業と保安、Vol.14(No.22)、p.14-20(1998)
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
5 |
物的被害 |
スレート葺製造所建物及び設備半損、隣接事務所等2棟小損.破裂によりスレート片等の飛散物が半径100mの範囲に飛散し、住宅8棟小損. |
被害金額 |
740万円(加古川市消防本部による) |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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図3.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
新井 充 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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