事例名称 |
濃度の異なる廃酸を混合したことによる廃酸タンクの爆発・火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1998年11月09日 |
事例発生地 |
福岡県 吉富町 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
新規グレードのメチルエチルケトンペルオキシド(MEKPO)の生産を開始した。その時の廃酸が旧グレードの廃酸と濃度が大きく変わっているのにも拘わらず、旧廃酸のタンクへ落とした。廃酸の混合で希釈熱が生じ、高温になった。新規グレードの廃酸中に含まれたMEKPOが高温により自己発熱分解を始め、爆発事故に至った。廃棄物の混合危険事例は、実験室では数多く報告されている。 |
事象 |
MEKPO製造の廃酸を2立方m廃酸タンクに入れたところ、夜に爆発・火災が発生した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
廃水・廃油処理 |
物質 |
メチルエチルケトンペルオキシド(methyl ethyl ketone peroxide)、図2 |
硫酸(sulfuric acid)、図3 |
事故の種類 |
爆発・火災 |
経過 |
「新規グレードMEKPO」を2バッチ製造し、その廃酸を、前週製造した他のグレードの廃酸が残っていた2立方mタンクに入れた。その後タンク内の廃酸の一部を10立方m廃酸タンクに送液した。作業員が控え室にいた午後9時59分爆発音とともに火災が発生した。 |
原因 |
2立方m廃酸タンクに残っていた高濃度の廃酸の中に、新規グレードのMEKPOを含む薄い廃酸を入れたため、希釈熱が発生した。この熱により新規グレードのMEKPOが急激に分解して、発生したガスが発火し爆発した。 |
対処 |
作業者が、火災現場を確認後、火災報知器を押し、消防自動車および屋外消火栓により初期消火を行った。 |
対策 |
「新規グレードMEKPO」の製造を中止した。硫酸を使用する他の製品については特に、廃酸の加熱安定性や混合時の危険性を評価し、設備の改善等安全性の確保に努める。 |
知識化 |
廃液、廃棄物の混合による反応、それに伴う発火・爆発は、見落とされがちであるが、思わぬ事故につながることがあり注意が必要である。 |
背景 |
知識不足、希釈熱の軽視等が指摘できる。新規製品に切替時に廃酸濃度の違いを管理者側が理解出来ずに作業指示を間違えたか、従前のままで作業を行った可能性が高い。 |
後日談 |
実際の廃酸を用いた模擬実験を行った結果、発火には至らなかったが、相当の発熱は観測された。 |
データベース登録の 動機 |
希釈熱による事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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調査・検討の不足、仮想演習不足、実態の作業無視、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、無知、知識不足、勉学不足、計画・設計、計画不良、プロセス設計不良、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、爆発・火災
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例‐平成10年(1999)、p.104-107
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
廃酸タンク全壊、隣接の排水処理施設(廃アルカリタンク及び接続配管全壊)焼損。爆風により20m離れた事務所の窓ガラス破損(消防庁による). 爆風で工場の壁面が約100平方mにわたって破損(読売新聞による). |
被害金額 |
約300万円(消防庁より) |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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図3.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
新井 充 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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