失敗事例

事例名称 金属粉工場におけるアルミニウムの粉砕作業中の爆発・火災
代表図
事例発生日付 1980年06月16日
事例発生地 大阪府 大東市
事例発生場所 金属製品製造工場
事例概要 アルミニウム粉の発生する工場で粉じん爆発が起こり、引き続き火災となった。工場内にアルミニウム粉や塊が貯蔵されていたために水による消火ができず、広範囲が全焼となった。原因は不明であるが、工場内にアルミニウム粉が溜まり、また作業中にアルミニウム粉が飛散する環境だったことは一つの重要な原因といえる。
事象 アルミニウム粉砕工場で爆発が発生し、続いて火災となった。見回り中の作業員1名が死亡し、工場3棟および社宅1棟、延283平方mが全焼した。消防隊到着時には、工場棟はほとんど原型をとどめず、木造の柱、梁が露出しており、かなり激しい爆発が発生したものと推定される。
プロセス 製造
単位工程 粉砕・粉化
物質 アルミニウム(aluminum)、図2
事故の種類 爆発・火災
経過 事故のあった工場では、事故当日の1980年6月16日は、1号スタンプ(粉砕機)を18時30分、2号スタンプを19時、3号スタンプを21時に止めることを予定していた。18時18分ごろ爆発が起こり、続いて火災となった。見回り中の作業員1名が負傷した。火災報知専用電話による通報により消防車が出動した。現場は危険物施設のため、関係者に状況の確認をした後、危険物の無い社宅を放水で消火した。工場にはアルミニウム粉および塊が多量にあるため、注水は慎み界面活性剤を発泡して泡消火を実施し、自然鎮火を待った。6月17日1時30分に鎮火を確認した。なお、負傷者は救急車で病院に運ばれた後に死亡した。
原因 事故発生時現場にいた作業員が死亡していること、および焼損が激しいことなどにより原因は特定されていない。アルミニウム粉が粉じん爆発を起こし、爆発により火災が発生したものと推定される。着火源については不明である。発災現場は危険物製造所であり、電気設備の防爆措置、静電気除電措置は行われていた。
対処 爆発後炎上したため、消防隊による消火が主な措置であった。山林に一部移った火は消防分団員が消火した。
知識化 アルミニウム粉などの金属粉は粉じん爆発を起こし、ひとたび発生すると著しい被害が生じることを十分に認識すべきである。防爆電気機器の使用や静電気の除去のみならず、作業場の清掃や粉じん飛散の対策などにも気を配る必要がある。また、アルミニウムなどが貯蔵されている場合は、火災時に注水できないことを考慮した緊急時対応計画を策定する必要がある。
背景 爆発の原因が不明のため基本要因を的確にあげるのは難しいが、アルミニウム粉は粉じん爆発を起こす潜在危険性を有していることを十分認識することは重要である。操業中の工場内では、室内一面にアルミニウム粉が舞い、梁や照明器具などの上にアルミニウム粉が溜まっていたとのことであり、これも爆発の一因であると考えられる。
データベース登録の
動機
金属粉じんの粉じん爆発事故、金属でも比表面積が大きくなっていれば簡単に爆発する例
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、計画・設計、計画不良、環境設定不良、二次災害、損壊、粉塵爆発、身体的被害、死亡、組織の損失、経済的損失、建家等損害850万円
情報源 消防研究所資料(1980)
死者数 1
負傷者数 0
物的被害 木造トタン葺ラスモルタル塗平屋建工場3棟及びスレート葺真壁平屋建て社宅1棟延べ283平方m全焼.
被害金額 損害見積額850万円(大東市消防本部による)
マルチメディアファイル 図2.化学式
分野 化学物質・プラント
データ作成者 土橋 律 (東京大学大学院 工学系研究科 化学システム工学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)