失敗事例

事例名称 金属粉工場におけるアルミニウム粉の袋詰め作業中の火災
代表図
事例発生日付 1981年12月23日
事例発生地 大阪府 大東市
事例発生場所 金属製品工場
事例概要 アルミニウム粉製造工程で、つや出し機からアルミニウム粉を取り出し中に発火し、作業員1名が火傷を負い、作業所の一部を焼損した。作業場には多量のアルミニウム粉があったため、注水消火ができず被害が拡大した。アルミニウム粉が燃え始めた時点で作業員が適切な初期消火が出来ていれば火災の拡大は防げた可能性が大きい。消火施設や訓練が不十分であったことが重大な問題と思われる。
事象 アルミニウム粉製造で、最終工程のつや出し処理を終わったアルミニウム粉をふるい機にかけて袋詰めする作業中に発火し、製品を入れる紙袋で覆って消火しようとしたが燃え拡がった。注水消火は爆発の危険があるため、高発泡による消火を試みたが、アルミニウム粉は消火出来ず、作業場の一部122平方mが焼損した。作業員1名が火傷を負った。
プロセス 製造
単位工程 充填・小分け
物質 アルミニウム(aluminum)、図2
事故の種類 火災
経過 1981年12月23日 つや出し機に粉砕したアルミニウム粉、タルク、ステアリン酸を入れて8時間回転して止めてあった。
24日08:00頃 4台あるつや出し機のうちの4号つや出し機から製品を取り出し中に発火した。つや出し機のブラシ回転用ハンドルを回しながらアルミニウム粉を下の木箱に落とす作業を実施していた。全部落として木箱を引き出した時にアルミニウム粉がジワジワと燃え拡がっているのを発見した。製品を入れる紙袋で覆い消そうとしたが、紙袋が燃えだし、さらにほうきでたたいたが消えず、助けを呼びに行った。
08:05 火災報知専用電話で火災を通報し、消防隊が出動した。工場内にはアルミニウム粉が多量に堆積しているため火の回りが早く、消防隊到着時すでに西半分の棟に火が回っていた。工場内には約5000kgのアルミニウム粉があるため、注水消火は爆発の危険があるので高発泡により消火を試みたが、作業場内のアルミニウム粉は消火できず、他の延焼防止に努めた。
09:30 鎮火を確認した。
原因 不明。つや出し機から取り出したアルミニウム粉に何らかのエネルギーが加わったと考えられる。
知識化 アルミニウム粉は発火、爆発の危険がある。また、一度火災になると、注水消火ができないため被害が容易に拡大する。したがって、アルミニウム粉を扱う工程では、発火・爆発防止に努めるとともに、火災発生時の緊急措置を適切に立案し、周知および訓練を実施すべきである。また、作業所内に堆積したアルミニウム粉は火災の火の回りを早めるため、作業所内の清掃にも努める必要がある。
背景 発火自体の原因は不明であるが、発火危険のあるアルミニウム粉を扱う工程にもかかわらず、作業員による適切な初期消火がなされなかったのは問題である。適切な消火施設を設置し、訓練を行っていれば、今回のような火災の拡大は防げたものと考えられる。
よもやま話 事例「金属粉工場におけるアルミニウムの粉砕作業中の爆発・火災」と同じ工場で起こった事故である。
データベース登録の
動機
アルミニウム粉の火災、金属でも比表面積が大きくなっていれば簡単に燃える例
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、管理不良、作業管理不良、計画・設計、計画不良、設計不良、非定常行為、非常時行為、パニック、二次災害、損壊、火災、身体的被害、負傷、組織の損失、経済的損失、損害額430万円
情報源 消防庁、危険物製造所等の事故事例集‐昭和56年(1982)、p.56-57
死者数 0
負傷者数 1
物的被害 ふるい機、スタンプ機
被害金額 約430万円(消防庁による)
マルチメディアファイル 図2.化学式
分野 化学物質・プラント
データ作成者 土橋 律 (東京大学大学院 工学系研究科 化学システム工学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)