事例名称 |
地震動のスロッシングによる屋外タンクの火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1983年05月26日 |
事例発生地 |
秋田県 秋田市 |
事例発生場所 |
火力発電所 |
事例概要 |
地震動に伴うタンク内液面のスロッシングにより、フローティングルーフが上下動を起こし、シール部から可燃性ガスが漏洩した。タンク内取り付けの付属設備とフローティングルーフの金属摩擦により可燃性ガスに着火、火災となった。地震動により可燃性ガスの漏洩や摩擦による着火をおこすようなタンクの設計には問題があった。泡消火設備が点検中のため消火が遅れたが、予備設備の準備等があればより早く消火できた可能性がある。 |
事象 |
マグニチュード7.7の日本海中部沖地震によりタンク内原油液面がスロッシングを起こし、フローティングルーフのシール部から火災発生した。当該タンクの泡消火設備は清掃点検中のため作動に時間がかかり、火災は2時間余りにわたって燃え続けた。 スロッシング: 液体容器の振動により引き起こされる内溶液の液面揺動をいう |
プロセス |
貯蔵(液体) |
物質 |
原油(crude oil) |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
1983年5月26日12:01頃 M=7.7の日本海中部沖地震が発生した。 地震発生直後、中央監視室の火災報知器の受信盤作動により、No.7~10タンクのヤード火災発生を覚知した。中央監視室の職員が現場に急行したところ、No.10屋外タンク(35,000kl)の浮屋根周辺部から黒煙が上がり、時折火災が目視された。自衛消防隊を出動させるとともに、直ちに公設消防及び共同防災隊へ通報し、出動を要請した。 公設、自衛、共同防災隊による冷却放水とともに、被災タンクNo.10及び隣接するNo.8、9タンクの冷却散水設備を稼働した。泡消火設備は定期点検中でポンプ電源が断路状態となっていた。 その後定期点検修理中の電源を復活させ、12時25分ごろ当該被災タンクの固定泡消火設備を起動させた。13時15分頃泡放射を止め、水に切り替えた。 13:30頃 放水を停止した。 14:29 鎮火を確認した。 |
原因 |
1.地震動に伴うタンク内液面のスロッシングにより、フローティングルーフが上下動を起こし、シール部から可燃性ガスが漏洩した。 2.タンク内取り付けの付属設備(固定泡放出口または散水配管)とフローティングルーフの金属摩擦により可燃性ガスに着火、火災となった。 |
対処 |
火災覚知後、自衛消防隊を出動させるとともに、直ちに公設消防及び共同防災隊へ通報し、出動を要請した。公設、自衛、共同防災隊による冷却放水とともに、被災タンクNo.10及び隣接するNo.8、9タンクの冷却散水設備を稼働した。その後定期修理中の電源を復活させ、当該被災タンクの固定泡消火設備を起動させた。 |
対策 |
タンク内側に取り付けられている付属設備の除去および突出部の材質を検討した。固定泡放出口及び散水配管をタンク外側へ取り付けた。さらに、ハロン消火設備の取り付け金具を銅製にした。 |
知識化 |
タンク設計や消火設備点検において地震の想定が不十分なため火災が発生し、また、消火に時間を要した。安全設計・管理において地震の想定が非常に重要であることがわかる。 |
背景 |
事故発生原因の2項目を考えると、タンクの設計において安全への配慮が不十分だったことが基本要因であったと考えられる。 |
よもやま話 |
☆ 地震による石油タンクの破損や火災の事故事例は他にもあり、スロッシングやバルジングといった共振現象が問題となることが知られている。 ☆ 工場の現場では叩いても火花の出ない特殊工具を使うが、こんなところで火が出る材料の組合せとはちょっとした矛盾だった。 |
データベース登録の 動機 |
地震によるスロッシングに起因するタンク火災例 |
シナリオ |
主シナリオ
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調査・検討の不足、仮想演習不足、地震時のタンク挙動、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、計画・設計、計画不良、設計不良、不良現象、機械現象、地震によるスロッシング、不良現象、機械現象、摩擦、二次災害、損壊、漏洩・火災、組織の損失、経済的損失、損害額3億円
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情報源 |
消防庁、危険物製造所等の事故事例集‐昭和58年(1984)、p.94-95
川崎市危険物安全研究会、今すぐ役に立つ 危険物施設の事故事例集(FTA付)(1997)、p.119-121
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
シール部全焼、ウェザーシールド全損、側板一部変形、泡消火設備一部損傷、ハロン消火設備配管及びヘッド焼損.散水管、ローリングラダー及びフォームダムの一部変形.火災報知設備及び計器等損傷. |
被害金額 |
3億500万円(自治省消防庁による) |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
土橋 律 (東京大学大学院 工学系研究科 化学システム工学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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