失敗事例

事例名称 小分け作業中の含有有機溶剤の爆発
代表図
事例発生日付 1997年11月11日
事例発生地 千葉県 市原市
事例発生場所 化学工場
事例概要 シリコーン樹脂製造装置で有機溶剤に溶かした製品の小分け中に爆発が起こった。発生する可燃性蒸気の排気が不十分なうえ、絶縁性のろ布に静電気を帯電させ、火花放電させた。
事象 シリコーン樹脂の製造装置で、有機溶剤に溶かしたシリコーン樹脂の小分け中に爆発事故が起こった。製品(シリコーン26%、n-ヘプタン60%、トルエン14%)入り200Lドラム缶を、ドラム転倒機で傾けながら、ろ布を通してペール缶へ小分けをしていた。この時、ろ布近くで着火し、その火災により、ドラム缶の空気孔を通じてドラム缶内の気相部で着火爆発し、残存液の漏えいにより火災の規模が拡大した。作業員1名が死亡し、1名が重傷を負った。なお、ろ布の材料はポリエステルで絶縁性である。
プロセス 製造
単位工程 充填・小分け
単位工程フロー 図2.単位工程フロー
物質 ヘプタン(heptane)、図3
トルエン(toluene)、図4
シリコーンオイル(silicone_oil)
事故の種類 爆発・火災、漏洩
経過 1997年11月11日13:25頃 ペール缶に小分け作業中に、突然爆発火災が発生した。
13:28 近隣職場員による消火活動が開始された。
13:30 119番通報をした。
13:40 自衛消防隊が放水開始した。公設消防車が到着した。
13:41 救急車が到着した。
15:18 鎮火を確認した。
原因 作業場所周辺は、局所排気を実施していたが十分ではなく、ペール缶周辺に可燃性混合気を形成していた。発災時には、乾燥注意報が発令されており、作業者は帯電防止用作業衣を着用していたが、ろ布下部に帯電した静電気が近くの接地物体(ペール缶など)との間で放電し、周辺の可燃性混合気に着火したものと推定される。
対処 消火栓にて消火活動実施
対策 可燃性混合気発生防止対策、静電気火花発生抑制対策を確実に実施する。
知識化 溶剤蒸気が存在する場では、可燃性混合気が形成されて爆発が起こる可能性がある。小分け作業でも気を許すことはできない。換気により濃度を下げるとともに静電気火花などの着火源対策も必須である。
背景 可燃性蒸気の排気不十分、静電気火花の抑制不十分な状態で小分け作業を実施したことが事故発生の基本要因であろう。
よもやま話 ☆ 報告書などを見ると、事故が起こりやすい設備と作業のように見えるが、管理、監督者はどこまで実情を把握し、改善の努力をしていたのだろうか。絶縁性のろ布を用いて静電気帯電から事故を起こした例はほかにもある。
データベース登録の
動機
有機溶剤に溶解した無機製品の小分け作業場の換気の重要性を示す事故例
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、不注意、理解不足、リスク認識不足、調査・検討の不足、仮想演習不足、想像力不足、計画・設計、計画不良、設計不良、二次災害、損壊、爆発・火災、身体的被害、死亡、身体的被害、負傷、組織の損失、経済的損失、損害額1億円
情報源 中央労働災害防止協会安全衛生情報センター、労働災害事例 No.100203 中央労働災害防止協会ホームページ
消防庁、危険物に係る事故事例‐平成9年(1998)、p.58-59
中央労働災害防止協会資料
死者数 1
負傷者数 1
物的被害 第3工場内のケーブルダクト及び床焼損
被害金額 1億円(消防庁による)
マルチメディアファイル 図3.化学式
図4.化学式
分野 化学物質・プラント
データ作成者 土橋 律 (東京大学大学院 工学系研究科 化学システム工学専攻)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)