事例名称 |
半導体工場における排気管中の特殊ガスの空気との接触による火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1995年09月17日 |
事例発生地 |
千葉県 館山市 |
事例発生場所 |
半導体部品工場 |
事例概要 |
半導体工場において停電後に製造施設を再スタートしたところ、ジシランの排気管が瞬間的な燃焼により破損した。その復旧作業中、下流の配管での発熱を見つけた。配管を窒素置換後、様子を見ようと仕切板をゆるめた際、流入した空気と配管内残留物が反応して火炎が噴出し、4名が火傷を負った。行き止まり配管のため可燃性のジシランの窒素置換が不十分だった。ジシランを取り扱う設備あるいは作業面で十分でないところがあった。 |
事象 |
半導体工場において火災事故があった。台風による停電があり、復帰後にシリコンチップ製造施設を再スタートしたところ、ジシランの排気系配管が破損した。 その復旧作業中、下流の配管部での発熱を発見した。窒素置換を行い、様子を見ようと仕切板をゆるめた。そのとき、火炎が噴出し、4名が火傷を負った。 |
プロセス |
消費、使用 |
単位工程 |
その他 |
物質 |
ジシラン(disilane)、図2 |
モノシラン(monosilane)、図3 |
水素(hydrogen)、図4 |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
1995年9月17日08:31 台風の接近により約10秒停電し、生産装置が全面停止した。 14:00 点検確認をして順次再スタートしたところ、ジシランの排気系のフレキシブル配管が破損した。 破損部と真空ポンプの交換作業を開始した。 作業中に配管の下流部で発熱部を発見した。 直近のノズル部より窒素置換を実施した。 16:40 交換用のフレキシブル配管がなかったので、交換の前に配管内を点検しようと仕切板をゆるめた際に発火し、火炎が噴出した。4名が顔などに火傷を負った。 16:41 消防に救急要請をした。 16:55 負傷者を病院に搬送した。 |
原因 |
1.ジシランの排気系統の配管破損は、長時間の停電の間に大気が混入し、配管内の残留ジシランがポンプの吐出側で燃焼が起こった。 2.火傷が起こった発火は、開放したフランジから流入した空気と配管内残留物が反応した。立ち下がりの行き止まり配管のため、ジシランから窒素への置換が不完全だった。 |
対処 |
残留ジシランが発火したのみで火災にはならず、負傷者を直ちに手当てした。 |
対策 |
1.停電時の非常電源の確保。 2.修理・点検時の空気の流入防止。 3.異常時・修理時の作業手順の改善。 4.行き止まり配管などの滞留箇所を撤去。 5.ジシランの代わりにモノシランを使用。 |
知識化 |
1.特殊材料ガスの取り扱いは、有害性や自然発火性を有するため、その取り扱いには綿密な計画と十分な注意が必要である。停電による異常とその異常への対応の誤りは改善すべきであるが、これを予見できるかどうかは、空気、あるいは、水などが発火や爆発の原因物質となることを認識しているかどうかであろう。 2.行き止まり配管のガス置換は、拡散させる時間が必要なので、急いでは行えない。 |
背景 |
空気と触れて自然発火するジシランに対する設備と作業の対応が不適切であったと思われる。設備面では停電時でも空気を混入させないような設備を考慮すべきであり、行き止まり配管のガス置換は十分な時間が必要であった。 |
よもやま話 |
☆ 行き止まり配管の事故例は多い。これもその一つである。なお、燃焼が持続せず、消火器具を用いないで消火した燃焼は火事とはいわない。 |
データベース登録の 動機 |
半導体産業で使われる危険なガスの事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、無知、知識不足、経験不足、計画・設計、計画不良、パージ計画不良、使用、保守・修理、準備作業、定常動作、不注意動作、確認不足の動作、不良現象、化学現象、燃焼、身体的被害、負傷、4名負傷、組織の損失、経済的損失、損害額1000万円
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情報源 |
平成7年重大災害の概要、安全年鑑、p.236
情報紹介、高圧ガス保安協会九州支部・九州地区高圧ガス防災協議会会報、No.103(1997)、p.16
産業安全研究所資料(非公開)
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
4 |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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図3.化学式
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図4.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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