事例名称 |
空気加圧によりドラム缶からタンクに移送中のテトラヒドロフランの爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1995年10月24日 |
事例発生地 |
兵庫県 生野町 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
化学工場で有機薬品による爆発火災があった。ドラム缶を空気で加圧してテトラヒドロフランをタンクへ移送していた。突然ドラム缶が爆発して火災となった。原因は、静電気防止対策がなされてはいたが、その方法が不完全、不適切であったため、流動帯電による静電気火花によりドラム缶内の可燃性混合気が着火爆発したとみられる。 |
事象 |
化学工場で有機薬品による火災があった。テトラヒドロフランのドラム缶を空気で加圧して原料中間タンクへ移送していた。突然爆発してドラム缶が上方に飛び、テトラヒドロフランが室内に飛び散り炎上した。原因は、作業中に生じた静電気の火花によりドラム缶内の蒸気が着火、爆発したとみられる。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
移送 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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物質 |
テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)、図3 |
事故の種類 |
爆発、火災 |
経過 |
1995年10月24日09:45 テトラヒドロフランのドラム缶を工場内の調整室に搬入した。 移送用の配管と加圧用の配管をドラム缶に接続した。 移送用配管のフレキシブル部分のアース線を加圧用空気配管に接続した。 10:05 2本目のドラム缶を加圧して移送中に突然爆発が起こった。 缶の底が抜け、本体が上方に飛んだ。 テトラヒドロフランが室内に飛散し炎上した。同僚が消火した。 10:09 消防に通報。4台9人出動した。 二次災害防止のため、室内の危険物を移動した。 10:25 鎮火を確認した。 |
原因 |
移送配管のフレキシブル部分にはアースを付け、作業者は静電気帯電防止靴を着用していた。しかし、付けたアースの先は加圧用の空気配管であった。また移送用配管の缶内に差し込んだノズルはポリエチレン製(絶縁物)を使用していた。このため、テトラヒドロフランの流動帯電により静電気が帯電し、静電気火花により容器内の蒸気が着火・爆発したとみられる。 |
対処 |
1.自衛消防車1台、3人が出動し消火活動に当たった。 2.公設消防車3台、6人が出動した。 3.二次災害防止のため室内にあった危険物を安全な場所に移動した。 |
対策 |
1.ドラム容器本体をアースする。 2.確実なアース端子を使用する。 3.加圧用の気体に窒素を使用する。 4.帯電防止衣の着用と湿度管理を行う。 5.従業員教育を強化する。 |
知識化 |
1.静電気帯電を防止するにはその電荷を大地に逃がさねばならない。すなわち、静電気が帯電しやすい物体同士をアース線で接続しても電荷は逃げない。 2.ドラム缶を加圧して移送すると、缶内の蒸気と加圧したガスが当然混合する。つまり、可燃性液体の移送に空気を用いれば、可燃性混合気を形成する。 |
背景 |
1.静電気対策は行っていたが不完全であった。 2.加圧用の気体に空気を用いた。軽質の可燃性液体の移送に空気を使うのは問題である。 |
よもやま話 |
☆ 可燃物を入れたドラム缶に空気加圧を行うのは次の2点で不都合である。 1) 本文で書いたように爆発性混合気を形成する。 2) ドラム缶は耐圧設計されていない。天板と本体の接続も通常は単なる”かしめ”である。 ☆ 空気を使って移送するなら、空気駆動のポンプを使うべきだろう。 |
データベース登録の 動機 |
二重のミスで火災の例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、安全対策不良、調査・検討の不足、仮想演習不足、想像力不足、計画・設計、計画不良、設計不良、不良行為、規則違反、安全規則違反、不良現象、電気故障、接地不良、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、負傷
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例‐平成7年(1996)、p.78-79
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
1 |
物的被害 |
天井部(171平方m)破損.フレキシブルパイプ,配管の一部破損. |
被害金額 |
231万円(消防庁による) |
マルチメディアファイル |
図3.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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