事例名称 |
減圧蒸留装置における重油留分のサンプリング中の火災 |
代表図 |
|
事例発生日付 |
1996年02月29日 |
事例発生地 |
三重県 四日市市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
定常運転中の減圧蒸留装置において、重油留分の定期サンプリングをしようとバルブを開いたが、試料がわずかしか出てこなかった。そのため、バルブを開いて対処中、突然流出して自然発火し、火災となった。サンプリングする重油留分の温度が自身の発火温度を超えているにもかかわらず、冷却装置を使用しなかった。サンプリングの位置を自然発火しない低温の部位とすべきである。 |
事象 |
定常運転中の減圧蒸留装置において、重油留分の定期サンプリングをしようとバルブを開いた。試料がわずかしか出て来ないので、バルブを調整していたところ、突然流出してサンプル受けのピットからあふれ、油温が300℃以上であったため、自然発火し火災となった。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
蒸留・蒸発 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
|
図3.単位工程フロー
|
物質 |
重油(fuel_oil) |
事故の種類 |
漏洩、火災 |
経過 |
1996年2月29日07:30 定常運転中の減圧蒸留装置において、重油留分の定期サンプリング作業を9名が手分けをして開始した。2名が採取しようと採取口のバルブを開いたが、試料が出なかった。 このため、2つのバルブを調整していたところ、突然採取口から約200Lが流れ出て、サンプル受けのピットからあふれ出た。 7:53頃 自然発火して火災となった。 自衛消防3台6人が出動した。 7:58 消防に通報。10台58人が出動した。 8:09 鎮火を確認した。 |
原因 |
1.前回のサンプリングの際、パージが不完全であったらしく、配管内に凝固物があった。 2.試料の出が悪いのでバルブを開けすぎ、流出し始めた際には即座に閉めることができなかった。 3.サンプリング試料用の冷却装置に温水を流しておらず、自然発火を招いた。 |
対処 |
大型消火器とPPT固定消火設備による消火作業。 |
対策 |
1.サンプルの温度が自身の発火温度以上の箇所は、冷却装置を備えるか、あるいは、温度が低い箇所にサンプリング箇所を移動する。 2.サンプリング用配管が閉塞している場合の作業マニュアルを明確に記載する。 3.指差呼称や作業標準の遵守などの安全教育の強化を図る。 |
知識化 |
1.サンプリング用のバルブを開いても試料が出てこないのは、バルブの故障や閉塞だけでなく、サンプリング用の配管の閉塞であることが少なくない。 2.配管内や反応器内では、発火温度よりも高い状態にある可燃性液体が存在し得る。もしこれらが漏洩すると直ちに自然発火を起こす。 3.サンプリングの原則は、より圧力の低いところ(このケースでは常圧に近いところ)、常温に近いところで行う。 |
背景 |
1.設備的に不備な点もあるが、明らかにヒューマンエラーである。発火温度以上のサンプリングでサンプリングクーラーの通水をしない、禁止されていたにもかかわらずバルブを全開したことで分かる。前回のサンプリング後にパージ不十分も作業標準違反ではなかったかと推定する。 2.頻度の少ない作業に対する管理監督者の事前の指示と注意がなかった。 3.設備面では、サンプリング箇所を温度が低くなる流出油冷却器の下流にすべきであった。 |
よもやま話 |
☆ これも行き止まり配管のトラブルである。サンプル採取時は高温でも、その後は放熱して周囲温度に下がる。サンプル配管で凝固するのが当たり前なので、何故パージが不十分だったのだろうか。 |
データベース登録の 動機 |
サンプル採取時の作業基準逸脱による事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
|
組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、不注意、理解不足、リスク認識不足、価値観不良、安全意識不良、安全対策不足、不良行為、規則違反、指示無視、不良現象、化学現象、溶解、二次災害、損壊、火災
|
|
情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例‐平成8年(1997)、p.74-75
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧‐平成9年版‐(1997)、p.200-201
|
死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
床面、操作スタンド、電動弁部分、計装ケーブル関係、配管保温の一部焼損. |
被害金額 |
7万6,000円(消防庁による) |
分野 |
化学物質・プラント
|
データ作成者 |
板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
|