事例名称 |
溶剤プラントにおいてガスケット誤使用により漏洩した水素の火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1996年03月28日 |
事例発生地 |
岡山県 倉敷市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
溶剤製造装置でガスケット誤使用に起因する火災があった。定期修理時に交換したガスケットが規格と異なるサイズであったため、スタートアップでの水素の圧力上昇に耐えられず水素が漏洩して火災となり、さらにその火災により別のガスケットが破損して水素が大量に漏洩し火災が拡大した。火災後に早期に窒素置換がなされたので、周辺の焼損のみで済んだが、もしも水素の漏洩を止められなければ消火が困難になり被害は拡大する。定修時のガスケット管理が問題であったと推定する |
事象 |
溶剤の製造装置において、水素配管のフランジ部から水素が漏れて火災となり、近くのフランジ部のガスケットも破損して水素が大量に漏れて火災が拡大した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
反応 |
反応 |
付加 |
物質 |
水素(hydrogen)、図2 |
無水コハク酸(succinic anhydride)、図3 |
事故の種類 |
漏洩、火災 |
経過 |
1996年3月4日 定期の触媒交換作業を実施した。 6日 プラントの運転を開始した。その後徐々に水素の圧力を上昇させ定常連続運転に移行した。 28日 フランジ部のガスケットから水素が漏洩し、静電気により着火して断熱材の中で小火災となった。 10:25 一体として保温施工されていた近くのドレン弁のフランジ部が破損して水素が大量に噴出し火災が拡大した。 プラントの緊急停止を行い、従業員が初期消火と窒素置換を実施。 10:31 消防に通報した。4台11人が出動した。 10:40 鎮火の確認をした。窒素の導入は継続した。 |
原因 |
1.定期の触媒交換作業において、縁切りを行ったバルブのフランジ部を復旧させる際、正規のガスケットよりも一回り小さいガスケットを使用した。 運転開始後、ガスケットの有効幅が正規品の約1/7であったため、水素の圧力に耐えられなくなった。 2.一体として保温が施工されていた近くのドレン弁のフランジ部のガスケットが火炎を受けて軟化、破損したため水素が大量に漏洩し、火災が拡大した。 |
対処 |
1.緊急停止。 2.初期消火。 3.配管内の窒素置換。 |
対策 |
1.定期修理時の工事管理体制を見直し、ガスケットの誤使用の防止を図る。 2.断熱材内部でのガス漏れを検知するために、断熱材に検知口を設置して、ガス漏れ点検を強化する。 3.フランジ部自体の改善を図る。 |
知識化 |
1.ガスの漏えいによる火災は、ガスの噴出を止めることが不可欠である。止められないと未燃焼のガスによる火災・爆発の危険性がきわめて高くなる。 2.止められない場合には、消火せずに延焼を防ぐ以外に手段はなく、難しい対応を迫られがちである。 3.断熱材などで覆われてしまった配管の早期のガス漏れは、検知しにくい。 |
背景 |
1.工事管理ミスか、担当者のヒューマンエラーの何れかであろう。 2.定期交換における工程管理、資材管理の不備とも考えられる。 |
よもやま話 |
☆ ガスケット交換後には気密テストが行われるのが通例である。そこには合格していた。瞬間的なら、不適正なものでも合格する例である。 |
データベース登録の 動機 |
ガスケット誤用の例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、安全対策不良、不注意、注意・用心不足、作業者不注意、計画・設計、計画不良、工事管理計画不良、保温設計不良、使用、保守・修理、復旧、機能不全、ハード不良、ガスケット洩れ、二次災害、損壊、火災
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例‐平成8年(1997)、p.110-111
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧‐平成9年版‐(1997)、p.198-199
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
配管及び保温材の一部を焼損 |
被害金額 |
70万円(消防庁による) |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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図3.化学式
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備考 |
WLP関連教材 ・プラント機器と安全-設備管理/配管とバルブの安全 |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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