事例名称 |
農薬製造装置で付帯ボイラーのエアヒーターの爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1997年02月10日 |
事例発生地 |
大分県 大分市 |
事例発生場所 |
農薬製造工場 |
事例概要 |
ボイラーを運転中、燃焼用空気に臭気処理をする排ガスを混ぜていた。ある製造装置のスタート時の作業で配管に滞留したイソブテンが、全閉であるべきバルブが全閉になっていなかったので、ボイラーに流れ込み、燃焼バランスを崩し、未燃ガスがエアーヒーター高温側に流れ込み、エアーヒーターが爆発した。 |
事象 |
農薬製造装置の運転開始時、スチーム用ボイラーにおいて、燃焼用の空気を加熱するエアヒーターが突然爆発した。原因は、燃焼用の空気への可燃性ガスの混入であった。製造課の不手際で混入した。 エアヒーター: ボイラー排気の熱回収を目的として設ける燃焼用空気とボイラー排熱の熱交換器 |
プロセス |
廃棄 |
物質 |
イソブテン(isobutene)、図2 |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
1997年2月10日09:00 スチームボイラーを定常運転中、製造3課が作業を開始した。そのとき、製造8課、9課の排ガス燃焼処理はボイラーでおこなわれていた(らしい)。 09:40 製造3課で当該装置の原料イソブテンの配管の弁を開いた。ほぼ同じ頃、ボイラーの排気の酸素濃度低下との警報が出た。圧力と蒸気流量も警報には至らないが上昇した。そこで、操作盤の燃料などの供給量を絞った。 09:45 蒸気流量が依然落ちないので、さらに燃料等の供給量を絞ったところ、ボイラーの燃焼が息つぎを起こしたので、運転を停止しようと燃料供給弁を閉じた。 09:50 燃焼用空気のエアーヒーターが破裂した。 09:55 製造課で異臭に気付き、ボイラー行きの弁を閉めた。 10:15 燃料を遮断した。 |
原因 |
ボイラーでは、臭気対策のため製造各課の3装置の排ガスの燃焼処理をしていた。排ガスと空気を混合してエアヒーター経由でボイラーへ送っていた。製造課でのスタート時にイソブテンを含む配管とボイラー行き配管の連絡の手動バルブが全閉になっていなかったため配管滞留したイソブテンがボイラー燃焼用空気に混入した。現在では、ボイラーでの燃焼処理を行っていないプロセス配管で、かってボイラー処理を行っていた名残で配管が接続していた。 |
対処 |
ボイラーを停止。 |
対策 |
構造的に可燃性ガスが設備に流入しない構造とする。 |
知識化 |
1.排ガスの燃焼処理では、臭気だけでなく可燃成分の処理に使われることもある。一般のボイラーであれば燃料を止めれば消火し、空気が排出されるのみだが、燃焼処理のボイラーでは、消火すると処理すべきガスが排出される。止める場合には、消火の前に処理するガスの流入を止めておく必要がある。 2.バルブには、人的要因でも設備的要因でも漏れが生じ、遮断の信頼性は期待するほど高くない。 |
背景 |
1.装置あるいは配管の使用法が変更されたときに、連絡バルブが残されていた。しかも手動弁一つの隔離で、これはバルブは漏れることがあるとの認識が希薄である。 2.作業標準に従って弁を閉めて確認をしたが、手動弁だったためわずかに開いていることに気付かなかった。 |
データベース登録の 動機 |
使わなくなった手動バルブを残しておく危険性の例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、不注意、注意・用心不足、作業者不注意、調査・検討の不足、仮想演習不足、想像力不足、計画・設計、計画不良、設計不良、誤対応行為、連絡不備、不連絡、機能不全、ハード不良、バルブ内洩れ、二次災害、損壊、爆発、組織の損失、経済的損失、損害額1500万円
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情報源 |
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧‐平成10年版‐(1998)、p.160-161
産業と保安、Vol.14(No.36)(1998)、p.6
産業安全研究所資料(非公開)
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
ヒーターの外壁に穴. |
被害金額 |
1,500万円(消防庁による) |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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