失敗事例

事例名称 ジオキサンが張り込まれた反応缶の粉体原料の投入中の爆発
代表図
事例発生日付 1997年04月16日
事例発生地 兵庫県 龍野市
事例発生場所 化学工場
事例概要 エポキシ樹脂の製造装置において、反応缶に原料を仕込み、溶解と原料の追加仕込みを順次実施中、マンホールから粉体原料を投入した際に静電気火花が発生し、反応缶内のジオキサンの蒸気が引火・爆発した。原因は、投入に使用した袋に粉体の摩擦により静電気が帯電したためと、アルゴン置換後の反応缶のマンホールを開けて作業したため可燃性混合気を作ったことによる。
事象 エポキシ樹脂製造装置において、反応缶に原料を投入中に爆発が起こった。反応缶に原料のジオキサンを仕込み、溶解と原料の追加仕込みを順次実施中、マンホールから粉体原料を投入した際に反応缶内で爆発が起こり、投入していた1名が死亡した。
プロセス 製造
単位工程 仕込
単位工程フロー 図2.単位工程フロー
物質 ジオキサン(dioxane)、図3
ソルビット(sorbit)、図4
次亜リン酸ナトリウム(sodium hypophosphite)、図5
事故の種類 爆発
経過 1997年4月16日09:55 仕込みを開始した。
 ドラム缶入りのジオキサンを反応缶に投入した。
 静電気対策としてアルゴンガスを注入し反応缶内部の置換を行った。
 約2時間、加温しつつ撹拌し溶解した。
15:10 撹拌しつつ、開放したマンホールからフレコン入りのソルビトールを投入した。
16:15 着色防止剤(ジ亜リン酸ナトリウム)を投入中に爆発した。
 作業員1名が吹き飛ばされて死亡した。屋根などを破損した。
 稼働中の機器の緊急停止をした。
 自衛消防35人出動し消火活動をした。
16:19 消防に救護要請。3台21人が出動した。
 フレコン:フレキシブルコンテナーの略称。布または合成繊維製の大きな袋で、上部に充填口、下部に排出口を設け、紐などで緊結する。ペレットまたは粉末の保管・移動に使われる。0.5~1トン程度の容量のものが多い。
原因 1.アルゴン置換後にマンホール開の作業を行い、可燃性混合気を生成させた。
2.着色防止剤の投入の際、その前に投入したソルビトールの空き袋(内袋ポリエチレン製)に入れて、これをゴム手袋をして仕込んだため、静電気放電が起き、反応缶内のジオキサンの可燃性混合気が着火、爆発した。
3.ソルビトール内袋のポリエチレンは絶縁物である。
対処 1.負傷者の救護
2.稼働中の機器の緊急停止
対策 1.原料の仕込み順序の変更
2.作業マニュアルの改訂
3.帯電防止作業衣の着用と作業場の加湿
4.溶剤の配管内の流速の制限
5.作業者の安全教育と管理徹底
知識化 1.袋入りの粉体原料を投入する際には静電気が発生するので、袋には導電性を持つものを用いると同時にアースへの接続など静電気の帯電防止を図る。
2.容器内のガス置換は、大気の流入を許すと無意味になってしまう。
3.引火性液体の原料は、液温が引火点よりも高いと周囲に可燃性混合気を形成するから、空気と遮断するか、あるいは、十分に換気する。
背景 1.安全確保の知識の欠如が最大の要因であろう。空き袋の利用やゴム手袋の着用など、静電気対策がなされていなかった。
2.反応缶内をアルゴン置換したにもかかわらず、マンホールを開放して作業を実施した。
データベース登録の
動機
あまりにも無謀な安全性無視に近い作業の例
シナリオ
主シナリオ 価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、無知、知識不足、勉学・経験とも不足、計画・設計、計画不良、設計不良、不良行為、規則違反、安全規則違反、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、死亡
情報源 消防庁、危険物に係る事故事例‐平成9年(1998)、p.92-93
産業安全研究所資料(非公開)
死者数 1
負傷者数 0
物的被害 製造所2階部分のみの被災でマンホール上部の屋根スレートの破損と母屋がわずかに変形.
設備被害:破裂板、メカニカルシール、フレキホース
被害金額 580万円(消防庁による)
マルチメディアファイル 図3.化学式
図4.化学式
図5.化学式
備考 WLP関連教材
・化学プラントユニットプロセスの安全/仕込み
分野 化学物質・プラント
データ作成者 板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)