事例名称 |
ポリブタジエン製造装置の反応器における清掃中の残存ゴムの発火 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1997年07月06日 |
事例発生地 |
千葉県 市原市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
ポリブタジエン製造設備を停止し、重合反応槽を開放して内部の堆積ゴムを除去し、そのまま放置中、残存していたブタジエンゴムの酸化発熱によりゴムが発火した。作業中の酸欠防止と空気による酸化発熱の防止策を同時に講じる必要がある。 |
事象 |
ポリブタジエン製造設備を停止中、重合反応槽を開放して内部を清掃した。その時、残存・堆積していたがブタジエンゴムが発火して火災となった。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
設備保全 |
物質 |
1,4-ポリブタジエン(1,4-polybutadiene)、図2 |
1,3-ブタジエン(1,3-butadiene)、図3 |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
ポリブタジエン製造設備の重合反応槽を開放し、内部に残存しているゴムの除去作業を始めた。2か月に1回程度の作業である。 1997年7月6日17:00頃 すべてを除去できなかったので翌日も続けることとし、重合反応槽を開放したまま当日の作業を終えた。 20:13 重合反応槽内で火災が発生した。 自衛消防1台5人が出動した。 20:27 消防に通報した。9台24人が出動した。 20:43 放水により消火した。 |
原因 |
1.堆積残存していたポリブタジエンが空気により酸化発熱し、発火した。 2.過去にも仕上げ工程にあった堆積ゴムが発火を起こしている。 |
対処 |
1.散水設備により放水 2.自衛と公設の消防車により放水 |
対策 |
1.重合反応槽を停止する場合には酸化防止剤を予め注入する。 2.重合反応槽内のゴム除去作業時には散水を実施する。 3.防災組織員の集合研修を実施し、任務を再教育する。 |
知識化 |
1.設備を開放しての人手による作業では、ほとんどで酸欠防止のために換気などがなされ、空気が流入する。空気により酸化発熱する物質であれば自然発火を起こす。 自然発火を起こさないとしても、反応により酸素が消費されるから、酸欠事故に注意する必要がある。 2.リアクター内の残存物は、完成した製品ではなく、反応途中の物質や不純物と考えるべきである。 3.自然発火は、熱の蓄積により起こるので、注意深い監視さえ行えば、未然に防ぐことはさほど難しくはない。 |
背景 |
乾燥下で空気と接触させると酸化発熱する危険性を見落とした安全管理ミスが考えられる。反応器を開放すれば空気が流れ込むことは当然であり、過去の事例を生かし切れなかった。 |
後日談 |
1.共同防災へ出動要請を行わなかった。 2.指揮本部の副防災管理者が動きすぎたため、公設消防への情報伝達に問題があった。 |
よもやま話 |
☆ 高濃度のブタジエンは、特に微量でも酸素があれば、発熱重合を起こすのは、ブタジエン運転関係者では常識である。また、その重合物が空気の存在下で発熱するのも常識である。ブタジエン関係の事故は多く報告されている。 |
データベース登録の 動機 |
発火性のある重合物が残存する容器を大気開放した例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、安全対策不良、調査・検討の不足、事前検討不足、反応特性掴んでいない検討、無知、知識不足、勉学不足、計画・設計、計画不良、ドラムの開放計画不良、定常動作、不注意動作、危険防止の水撒きなし、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、火災
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例‐平成9年(1998)、p.290-291
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧‐平成10年版‐(1998)、p.76-77
産業安全研究所資料(非公開)
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
計装品及び照明設備焼損 |
被害金額 |
300万円(消防庁による) |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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図3.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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