事例名称 |
常圧蒸留装置において不注意なバルブの開放により漏洩した残査油の火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1997年08月11日 |
事例発生地 |
三重県 四日市市 |
事例発生場所 |
製油所 |
事例概要 |
製油所の常圧蒸留装置の定常運転中に残査油配管の流量表示が不安定となり、点検作業の際にバルブを少し開いたところ、高温の残査油が噴出し、発火して火災となった。シールポットのドレンプラグを外し、さらに導圧管の元弁まで開けていた。 |
事象 |
製油所の常圧蒸留装置で、残査油の配管の流量計の表示に異常があった。点検・清掃作業をしようとして、導圧管上のシールポットのドレンプラグを外し、さらに導圧管の元バルブを少し開いたところ、高温の残査油が噴出して発火し、4名が負傷した。 導圧管: 各種の計測のためプロセスの圧力を測定器に伝える配管で、通常はプロセス流体そのものが入っている。行き止まり配管である。 シールポット: この場合、導圧管上に置かれた小さな容器でガスが導圧管に貯まり込んで指示値を狂わせないように気体を分離させる役割をしている。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
蒸留・蒸発 |
物質 |
重油(fuel oil) |
事故の種類 |
漏洩、火災 |
経過 |
常圧蒸留装置の定常運転中、残査油の流量計の表示が不安定になった。従業員が現地に行き、点検作業のため残査油配管に接続している導圧管のシールポットのドレンプラグを開けた上、導圧管の元バルブを少し開いたところ、高温の残査油が噴出した。 13:45 噴出油が着火し火災となる。自衛消防3台48人が出動、4名が被災した。 常圧蒸留装置を緊急停止し、残査油配管の縁切りを行った。 13:49 消防に通報した。8台53人が出動した。 固定泡消火設備と化学消防車の泡放射による消火と冷却を行った。 13:59 火災を鎮圧した。 |
原因 |
非定常作業である点検作業において、流量計の導圧管のシールポットのドレンプラグを開のまま元バルブを少し開いた。大気への二重のバルブを両方開いたと同じで、当然プロセス流体は漏洩する。漏洩液が高温(約320℃)の残査油のため、発火した(発火温度300℃)。 |
対処 |
1.常圧蒸留装置の緊急停止 2.残査油配管の縁切り |
対策 |
1.導圧配管の点検および清掃作業の作業マニュアルを作成する。 2.作業基準や作業指示書、作業規定の見直しをする。 3.保安特別教育計画の推進を図る。 |
知識化 |
あまりにも基本中の基本は作業マニュアルに書かれない。装置の運転マニュアル以前に、危険物を取り扱うべき者の守るべき基本の教育が必要である。 |
背景 |
完全なヒューマンエラーであろう。シールポットのドレンプラグを外しただけで内容物は出てくる。その状態でシールポットにつながるバルブを開ければ、プロセス流体が流出するのは当然である。運転マニュアル以前の運転担当者の常識である。何か思い違いをしていたとしか考えられない。 |
データベース登録の 動機 |
大気開放のままで元弁を開けた事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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手順の不遵守、手順無視、バルブ開閉ミス、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、不良行為、規則違反、安全規則違反、二次災害、損壊、漏洩・火災、身体的被害、負傷、4名負傷
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情報源 |
消防庁、危険物に係る事故事例‐平成9年(1998)、p.80-81
高圧ガス保安協会、高圧ガス保安総覧‐平成10年版‐(1998)、p.160-161
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
4 |
物的被害 |
常圧蒸留装置の一部表面積50平方m.残査油192リットル漏洩し焼損.残査油流量検出装置1台焼損、周辺機器の保温材等焼損. |
被害金額 |
9万円(消防庁による) |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
板垣 晴彦 (独立行政法人産業安全研究所 化学安全研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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