事例名称 |
ドラム缶に直接スチーム吹きかけて加熱中のアクリル酸モノマーの爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1981年02月24日 |
事例発生地 |
千葉県 市原市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
ドラム缶に入ったアクリル酸を凝固させないため、加熱を開始した。ドラム缶に防炎シートを被せスチーム吹き込んだ。しばらくして、ドラム缶が爆発した。加温されて、アクリル酸が重合を初め、暴走反応になった。 通常は加熱板を用いる間接加熱方法をとっていたが、この時だけは変更されていた。アクリル酸モノマーの凝固防止のための作業マニュアルはあったか? アクリル酸モノマーの重合反応の危険性について従業員に教育されていなかった可能性がある。 |
事象 |
アクリル酸モノマーの凝固を防止するためにドラム缶をスチームで加熱していた。ドラム缶内で重合反応を開始し、反応暴走により爆発した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
溶融・溶解 |
物質 |
アクリル酸(acrylic acid)、図2 |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
1981年2月24日21:00頃 アクリル酸モノマーの凝固を防止するために加熱を始めた。 ステンレス製200Lのアクリル酸モノマーのドラム缶2本に防炎シートをかけ、ゴムホースでスチームを引き込んだ。 22:00 交替番の引継ぎをした。 22:30頃 点検したところ異状がなかったので,引き続き加熱を続けた。 23:36頃 1本のドラム缶の内圧が上昇してアクリル酸蒸気を噴出し、着火、爆発した。 ただちに消火活動を開始したが、約10分後、2本目のドラム缶が爆発した。 23:55頃 鎮火した。半径約500mにわたって有害性ガスが立ちこめた。 約120m離れた警察署の窓ガラスが割れたほか、現場工室、隣接倉庫のスレート、網入りガラスなどが破損した。 |
原因 |
アクリル酸モノマーの凝固防止には、通常スチームコイルを内蔵させた間接加熱の加熱板を用いる方法を行っていた。事故当日は従業員が独断でスチームを直接ドラム缶に吹き付ける方法で加熱を行った。そのため、局部的な過熱によりアクリル酸の重合反応が開始され、重合熱により反応が暴走し、爆発に至った。 |
対処 |
1本目のドラム缶の爆発後に現場従業員が初期消火活動を行ったが、消火できなかった。自衛消防隊などにより約15分後に鎮火した。 |
知識化 |
安全対策は理由とともに教育する必要がある。 |
背景 |
アクリル酸モノマーの重合反応の危険性について、従業員に教育されていなかった可能性がある。それとも、作業を簡便化するために行った指示無視の可能性もある。 |
よもやま話 |
☆ アクリル酸モノマーのドラム缶の加熱では、スチーム配管が直接ドラム缶に触れて局所加熱から爆発になった例もある。 |
データベース登録の 動機 |
通常行われていた安全な加熱方法が行われなかったために起こったと考えられる例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、安全教育・訓練不足、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、無知、知識不足、勉学・経験とも不足、不良行為、規則違反、安全規則違反、不良現象、化学現象、異常反応、二次災害、損壊、噴出・爆発、組織の損失、経済的損失、損害額450万円
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情報源 |
消防庁、危険物製造所等の事故事例集‐昭和56年(1982)、p.34-35
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
工室や隣の倉庫のスレート、鉄扉、網入りガラスなど破損.現場から120m離れた市原警察署の窓ガラス数枚割れる. |
被害金額 |
450万円(消防庁による) |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
和田 有司 (独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 開発安全工学研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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