事例名称 |
シランガスの排気ダクト内での火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1982年10月03日 |
事例発生地 |
宮崎県 清武町 |
事例発生場所 |
LSI工場 |
事例概要 |
半導体用の特殊ガスの一種であるモノシランガスが大気と接触して大規模な火災となった日本で初めての事例である。取扱いに無知であったことが最大要因だろう。取扱物質,材料に関する事前検討の不足が原因として重要であるが,事故後の対応(設備への損害をおそれて放水消火が遅れたこと)の悪さのために消火活動が遅れて,被害が拡大したといわれている。火災時の対応についても検討されていなかったのではないか。 |
事象 |
プラズマCVD装置のシランガス流量制御装置の不調のため過剰のシランが装置に供給され、そのため通常の状態より大量のシランガスがCVD装置に接続する排ガス燃焼設備に供給された。さらに排ガス供給設備に供給される酸素ガスが原因不明で停止された。そのため、大量の未燃のシランガスが排気ダクトに流入した。そこで空気と反応して自然発火した。さらに排気ダクトがポリプロピレン製であったためにダクトに沿って火災が拡大した。 |
プロセス |
使用 |
物質 |
モノシラン(monosilane)、図2 |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
1982年10月3日6:30頃 プラズマCVD装置の一つでシランガス流量制御装置のアラームが鳴った。 6:30頃 係員がガスバルブを閉め,ホールド操作を3~4回繰り返したが,アラームが鳴り続けるので当該炉を停止した。 8:20頃 出勤してきた係長に異状を報告し,ホールド操作およびバルブ等の点検を行っていた。その内に、排ガス燃焼装置の排気管付近から出火し,天井裏のポリプロピレン製の排気ダクトが燃えた。 |
原因 |
シランガス流量制御装置の不調と酸素ガスの供給が止まったために,大量のシランが燃焼されないまま排気管に流れた。これが空気と反応して発火し,ポリプロピレン製の排気ダクトが燃焼した。シランガス流量制御装置の不調の原因は,シランが配管内で酸化されて粉末が生成したことが原因とされている。 |
対処 |
従業員らが初期消火に当たったが失敗した。8:39に公設消防隊に通報があり出動し、消火活動に当たった。出火箇所の特定に時間がかかり,放水による設備への影響や高圧電気による感電を心配し,放水が遅れたことや,大量の黒煙と有害性ガスの発生で消火活動は困難であった。 |
対策 |
ダクトの不燃化,ダクトの接続部やエルボにガスや粉末が滞留しにくい構造,排気ダクトの独立化,排気ダクトを取り外し可能とし,掃除口を設置,排気ダクトに風速センサ,または,測定口を設置,火災検知センサを増強,天井裏点検用の通路,照明などの設置,容器の屋外設置,防火壁,防火タレ壁の増強,天井裏侵入口の設置,天井裏への消火器の配置等が行われた。 |
知識化 |
新規に取り扱われる物質の事前評価が重要である。 |
背景 |
当時取扱物質に関する一般的な知識不足により,シランガスの自然発火に関する情報が十分に把握されていなかった可能性がある。使用する材料の検討不足により,排気ダクトが可燃性のポリプロピレン製であった。なお、流量制御計の流量センサーの不調はしばしば発生していたようで、本質的な原因究明がなされていなかった。あるいは対策を取らなかった可能性がある。 |
後日談 |
この事故を契機に高圧ガス保安協会で自主基準が制定された。シランガス流量制御装置の不調は以前からしばしば起こっていたようである。 |
データベース登録の 動機 |
特殊材料ガスの大きな事故として国内最初の事故例。 |
シナリオ |
主シナリオ
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無知、知識不足、勉学不足、価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、調査・検討の不足、仮想演習不足、想像力不足、計画・設計、計画不良、設計不良、不良現象、化学現象、燃焼、二次災害、損壊、火災、身体的被害、死亡、身体的被害、負傷、4名負傷、組織の損失、経済的損失、損害額33億円
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情報源 |
近藤重雄、災害の研究25(1994)、p.251-268
林年宏、安全工学、No.183(1994)、p.369
上原陽一、小川輝繁、防火・防爆対策技術ハンドブック、テクノシステム(1998)、p.52-56
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死者数 |
1 |
負傷者数 |
4 |
物的被害 |
1階部分の垂れ壁面28.8平方mと天井48平方mと屋根裏焼損. CVD装置、パーニング装置、イオン注入装置、拡散炉などの精密機器類が被害. |
被害金額 |
33億4000万円(宮崎市消防局による) |
社会への影響 |
煙害約2200平方m. |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
和田 有司 (独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 開発安全工学研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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