事例名称 |
廃水中和処理槽の改修工事における電動グラインダの火花による爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1996年06月24日 |
事例発生地 |
愛知県 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
化学工場の廃水中和槽の上部にある通路の手直し工事で火気使用工事をして、爆発を起こした。廃水の危険性にまで注意が及ばなかったのであろう。 |
事象 |
化学工場の廃水中和処理槽の上部の通路改修工事中に電動グラインダを使用した。グラインダの火花により処理槽内の可燃性混合気が爆発した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
廃水・廃油処理 |
物質 |
廃水(waste water) |
有機溶剤(organic solvent) |
有機過酸化物(organic peroxide) |
事故の種類 |
爆発、火災 |
経過 |
廃水中和処理槽を稼働させたまま上部通路の改修工事を行うことになった。朝、工事作業者が取り付ける通路と工具を持って工場に到着,電動グラインダの使用許可を得た。それから作業に取りかかった。最初に既設の通路の手すりを取り外すため電動グラインダで切断を始めた。処理槽付近で爆発が起こり,付近が火災となった。 |
原因 |
1.電動グラインダを使用する際に火花の落下防止対策をしなかった。 2.電動グラインダの火花により廃水中和処理槽内の可燃性混合気が引火・爆発した。 |
対策 |
工事前の周辺状況の確認と安全対策の実施,作業環境の情報の伝達を確実に行う。 |
知識化 |
1.思わぬところに危険が潜んでいる。 2.化学プラントのプロセス廃水は単なる水ではない。プロセスで接触した各種の化学物質の混合溶液と考えるべきである。 |
背景 |
廃水中和処理槽の中で可燃性混合気が形成されていたが,設備管理担当者にその意識がなかった。廃水は危険な混合溶液という認識が重要である。廃水中和処理槽の構造が浮遊物が分離,付着しやすい構造であり,実際にニトロセルロースや有機過酸化物が付着していた。廃水に溶解してくる物質を見落とした。 |
後日談 |
事故後の分析により,廃水中和処理槽の表面上のガスにはトルエン,エチルベンゼンなどが可燃性混合気の濃度で検出され,槽内壁面に付着していたスラッジからは,ニトロセルロース,有機過酸化物が検出された。スラッジは月に1回スクレーバで掻き落としているが,事故当日は壁面に散水しただけであった。 |
よもやま話 |
☆ 廃水処理設備の火災事故は多い。プロセス廃水はプロセスで接触した有機物を含んでいる混合物である。特に高圧部分で軽質ガスと接触すると、大量のガスを溶解させ、廃水処理設備はほぼ大気圧なのでガスを放散させる。非常に危険なガス源になる。 |
データベース登録の 動機 |
廃水や廃棄物といった見落としがちな部分の危険性が事故につながった例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、無知、知識不足、勉学・経験とも不足、計画・設計、計画不良、工事計画不良、使用、保守・修理、火気使用工事、不良現象、化学現象、放散、二次災害、損壊、爆発、身体的被害、負傷、4名負傷
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情報源 |
中央労働災害防止協会、災害発生状況の詳細
中央労働災害防止協会安全衛生情報センター、労働災害事例 No.100129 廃水中和処理槽の上部で通路増設の作業中爆発、中央労働災害防止協会ホームページ
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
4 |
物的被害 |
廃水中和ピット電気設備、廃水中和ピット上家テント等 |
被害金額 |
318万円(中災防による) |
分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
和田 有司 (独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 開発安全工学研究グループ)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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