事例名称 |
経年劣化と思われる原因による起爆薬工場の爆発 |
代表図 |
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事例発生日付 |
2002年06月12日 |
事例発生地 |
宮崎県 延岡市 |
事例発生場所 |
化学工場 |
事例概要 |
電気雷管用起爆薬を製造する工場で、造粒乾燥中に爆発事故が起こった。原因は乾燥機の部品にヒビが入っていて、そこから侵入した起爆薬が摩擦などで発火したものが爆ごうに転移したか、鉄さびの混入で摩擦感度が増大したために、造粒工程で発火・燃焼したものが爆ごうに転移したと思われる。経年劣化した設備の日常点検の問題か、異物の混入であり、設備管理、運転管理に問題を含んでいたものと考えられる。リスク管理が重要であろう。 |
事象 |
電気雷管用起爆薬(ジアゾジニトロフェノール)が造粒乾燥中に爆発した。 |
プロセス |
製造 |
単位工程 |
乾燥 |
単位工程フロー |
図2.単位工程フロー
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物質 |
ジアゾジニトロフェノール(diazodinitrophenol)、図3 |
事故の種類 |
爆発 |
経過 |
平常運転中に突如爆発した。 |
原因 |
明確には特定されていないが、発災社は以下の二つの可能性を示している。 1.造粒機下部の乾燥機に、接着剤で装着していた分離板のひびから侵入したジアゾジニトロフェノールが、衝撃・摩擦を受けて発火、燃焼し、爆ごうに転移した。 2.造粒機内のジアゾジニトロフェノールに鉄さびが混入し、摩擦感度が増大したため、造粒工程でジアゾジニトロフェノールが発火、燃焼し、爆ごうに転移した。 |
対策 |
1.設備面 (1) 造粒機下部の分離板の改造。張付から乾燥機との一体型として、火薬類が侵入し難く、清掃点検が確実に実施できるものにする。 (2) 鉄さびを発生させ、混入する部品類の材質・構造をゴムの一体物とし、鉄さびの発生・混入を防止する。 (3) 異物落下・混入防止板を設け、火薬類に異物が入らないようにする。 2.管理面 (1) 日常点検や定期点検の充実を行う。 (2) 発火・爆発の原因となる侵入薬および異物混入の発生防止の重要性の再教育をする。 |
知識化 |
1.事故が起こる前に、日常点検の在り方・方法を考え、見直していく必要がある。 2.ここでも鉄さびが問題になっている。空気と水は普遍的に存在し、しかもいろいろなトラブルの原因になる。鉄さびが生じる可能性のある系では、同様のことについて考える必要があるのではないか。 |
背景 |
この事故以前には、事故を起こしていない装置だったため、運転管理における経年劣化に対する問題意識が少しおろそかになっていた可能性がある。また、鉄さびはいろいろなプロセスで、分解などを促進させて事故に繋がっていることが報告されている。起爆薬の様に、起爆感度の大きい物質に対する管理に、経年劣化への対応同様に十分な配慮がなされていなかった可能性がある。 |
データベース登録の 動機 |
起爆薬の事故例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、経年劣化見落とし、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、不注意、注意・用心不足、作業者不注意、使用、保守・修理、点検不良、定常操作、誤操作、日常運転の見落とし、不良現象、化学現象、発熱・発火、二次災害、損壊、爆発、組織の損失、経済的損失、復旧費など
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情報源 |
経済産業省、プレス発表用資料、(2002)
九州経済産業局、九州経済産業局発表資料(2002)
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
乾燥機破損、木製の扉が吹き飛び、窓ガラス数枚破損、天井一部崩落など。 |
被害金額 |
約1,000万円(7月13日、新聞報道による) |
マルチメディアファイル |
図3.化学式
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
小林 光夫 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻、オフィスK)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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