事例名称 |
インナーフロートタンクでのガソリン受入中の火災 |
代表図 |
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事例発生日付 |
2002年11月23日 |
事例発生地 |
神奈川県 横浜市 |
事例発生場所 |
屋外タンク貯蔵所 |
事例概要 |
ガソリンをタンカーから受入中のインナーフロートタンクが火災を起こし、全面的に燃え上がるような大火災になった。原因の特定はできなかったが、受入配管内に残った加圧空気が一気にタンク内に放出されて、浮き屋根の一部とタンク壁が強く接触したか、受入開始時に何らかの振動で腐食していた部材が脱落し、その影響による金属間摩擦で、火花が発生した。浮き屋根シールの一部が損壊してできていたガソリン液面にその火花により引火したものと推定された。拡大したのは、インナーフロートの構造に起因している。直接の示唆はないが、設備管理の不備であろう。 |
事象 |
タンク貯蔵所の2000klのインナーフロート形のタンクに、タンカーからガソリンを受入中に、突如火災が起こった。幸いに周辺タンクへの延焼などはなかった。 インナーフロート型タンク: 浮き屋根型タンクの一種。通常は固定屋根(例えばコーンルーフ型タンク)の内側に浮き屋根を設けたタンク。固定屋根と浮き屋根の間の空間に可燃性ガスが貯留しないように、何らかの通風を配慮することが多い。貯蔵油種をガソリンに変更する、あるいは炭化水素エミッション防止対策として固定屋根式タンクからインナーフロート式タンクに改造する例がある。 |
プロセス |
貯蔵(液体貯蔵設備出荷・受入) |
物質 |
ガソリン(gasoline) |
事故の種類 |
火災 |
経過 |
2002年11月23日事故当日の経過 01:13 前日の出荷が終了し、タンクの残量を測定した。 11:03 タンカーからの受入開始した。最初は低速で受入、浮き屋根が浮上したことを確認して、受入速度を増加した。 11:06 受入タンクから突如火災が発生した。 11:08 構内の全作業中止を指示した。 タンクの歴史 1964年3月 コーンルーフ型灯油タンクとして完成、使用開始した。 1987年9月 インナーフロート型に変更、油種をガソリンに変更した。 1997年8月 内部開放検査、本体補修を行った。 |
原因 |
原因を特定する事実は得られなかったが、金属同士の摩擦による火花が有力とされた。考えられる金属摩擦の原因は以下の2つと考えられた。 1.浮き屋根とタンク側板の接触 受入配管内に存在した加圧空気が、荷役作業開始時にタンク内に気泡となって噴出、浮き屋根を強く振動させ、浮き屋根の一部(特に突起物)がタンク側板と強く接触した。発生した火花により浮き屋根のシールの劣化により露出していたガソリンに引火した。 2.受入開始時のタンク本体の振動や風による揺れにより、腐食の進行していたタンク側板側固定ボルトが切断に至って脱落し、針材が落下、タンク側板や支柱、浮き屋根などと衝突して発生した火花が、受入作業等で生じた可燃性混合気に引火して、火炎が走り、浮き屋根のシールの劣化により露出したガソリンに引火した。 火災がタンクの全面破損にまで拡大した理由は、アルミニウム製浮き屋根の焼損が進むとともに、火炎が急速に拡大し、浮き屋根と固定屋根との空間の気体が急膨張を起こした。そのためタンク内圧力が上昇し、通気口等の開口部から気体が急激に噴出するとともに、タンクが膨張変形した。圧力に耐えきれなくなった固定屋根の屋根板溶接線が破断開口した。同時に屋根梁材が落下し、浮き屋根のデッキスキンを破壊したことから、一気にタンク全面火災に移行した。 |
対処 |
受入停止、すべてのタンクの元弁閉止、公設消防の消火活動 |
対策 |
原因の可能性2つに対する対策が示された。この事故に対する対策ではなく、一般的な対策である。 1.荷役(受入)に対して(よもやま話参照) ・荷役終了時の残存加圧空気の減少 ・荷役開始時の配管内空気が残存する期間の受入流量の注意 2.内部浮き屋根の構造 ・浮き屋根の回転防止装置の強化 ・浮き屋根の組立時に、側壁に当たる外側部分に鋭い突起を出さない。 3.点検時の留意事項 (1) 定期点検 ・浮き屋根シール状況の確認 ・浮き屋根上への危険物の露出 ・回転防止ケーブルの状況 (2) 内部開放点検(10年に1回) ・屋根梁材の固定ボルトの状況 ・タンクの偏心 など |
知識化 |
1.インナーフロートタンクは火災が起こると、構造的に大火災になる要素を持っている。 2.定期検査や日常検査で点検すべきところを明確に定めて、抜けがないようにすることが事故防止の要点にであろう。 |
背景 |
確からしい事故発生原因は、結局管理の問題を指し示している。一つは浮き屋根のシールの劣化であり、もう一つはボルトの腐食である。保守点検の問題であろう。 |
よもやま話 |
☆ タンカーからのポンプ荷役の最後に、可能な限り液を押し込むため、ポンプに空気を吸い込むまで運転する。ポンプは原則ギアポンプを使用する。そのため圧送でないポンプ荷役でもタンク受入配管には空気が残っている。通常は船側で行っているので、受入側では制御し難い。受入配管にベーパートラップを設ければ、空気の大部分は除去できると考えるが、実際はどんなものだろうか。もし有効なら設置すべきであろう。 |
データベース登録の 動機 |
インナーフロートタンクの火災は構造的に拡大する性質を持っている例 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、不注意、注意・用心不足、不具合箇所の見落とし、不良行為、規則違反、点検作業不十分、定常動作、不注意動作、早すぎる速度、不良現象、機械現象、摩擦・衝撃、不良現象、化学現象、発熱・発火、二次災害、損壊、火災、組織の損失、経済的損失、直接被害額1.5億円
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情報源 |
横浜市消防局危険物課長・浜岡和友、Safety & Tomorrow、No.88(2003)、p.40-44
横浜市消防局・浜岡和友、産業と保安、Vol.19(No.24)(2003)、p.14-17
消防庁、平成14年中の危険物に係る事故の概要(2003)、p.26
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
屋外貯蔵タンク1基焼損。ハイオクガソリン約25キロリットル焼失。 |
被害金額 |
1億5000万円(消防庁による) |
マルチメディアファイル |
図2.被害状況
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分野 |
化学物質・プラント
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データ作成者 |
小林 光夫 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻、オフィスK)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
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