事例名称 |
ゴミ固形化燃料(RDF)貯蔵槽の火災・爆発 |
代表図 |
|
事例発生日付 |
2003年08月14日 |
事例発生地 |
三重県 多度町 |
事例発生場所 |
発電所 |
事例概要 |
設置以来何度かトラブルを繰り返していたRDF燃料発電設備のRDF貯蔵槽の、大量のRDFが発熱した。放水などで対応している時に最初の爆発が起こった。消火が進まず、次に打つ対策の工事をしている時、最初の爆発から5日後に2回目の爆発が起こり消防士2名が亡くなった。完全に鎮火するまで、最初の爆発から47日を要した。 RDFそのものの不安定さと、無知あるいは未知による管理の悪さが原因と考えられる。 |
事象 |
ゴミ固形化燃料(RDF)発電所のRDF貯蔵槽でいくつかのトラブルがあった。それらに続いて8月14日に爆発が起こった。その対策で数日間放水を継続していたが、5日後に再度爆発が起こった。その後も貯蔵槽内で燃焼を続け、内容物RDFの残りを貯蔵槽から抜き出し、鎮火が宣言されたのは47日後の9月27日であった。 RDF: Refuse Derived Fuel 家庭から出る可燃性のゴミ(一般廃棄物)を破砕、乾燥し、石灰を加えクレヨン状に圧縮・成型した燃料であり、石炭等の固形燃料とは異なる。 |
プロセス |
貯蔵(固体) |
物質 |
水素(hydrogen)、図2 |
一酸化炭素(carbon_monoxide)、図3 |
メタン(methane)、図4 |
水(water)、図5 |
RDF燃料(refuse_derived_fuel) |
事故の種類 |
爆発・火災 |
経過 |
1.当該爆発事故に至るまでの発熱、発火トラブルの経過 2002年12月 1日 運転を開始した。 12月23日 貯蔵槽下部で異常発熱し、RDFの一部が燃焼した。 2003年 7月20日 別の倉庫に保管していたRDFの搬出作業中に発煙が起こった。 7月20日 貯蔵槽で水蒸気の発生を確認した。 7月23日 貯蔵槽温度上昇、発火を確認、一部のRDFを抜き出しを行った。 8月11日 貯蔵槽内火災は8月に入っても鎮火せず。貯蔵槽下部5箇所から注水を開始した。 8月12日 注水口を28箇所に追加した。 2.当該爆発事故の経過 2003年8月14日 注水作業を継続中、15:05第1回目の爆発が発生し、作業員4名が負傷した。 17:00頃から放水を開始して、18日まで続行した。 8月18日15:00頃 貯蔵槽上部点検孔から内部への放水を開始した。 16:00頃 放水を中断し、内部状況を観察した。 8月19日9:40~12:00頃 13:20~ 放水をした。 14:00頃 放水口を開口する火気工事を開始した。 14:17 2回目の爆発が起こり、消防署員2名が死亡し、作業員1名が負傷した。 以降 放水継続し、9月27日になって鎮火した。 |
原因 |
事故後の検討結果では、以下の原因が推定されている。 1.発熱・発火原因 (1) 有機物の発酵: RDFには発酵を起こす微生物が存在することが確認され、管理方法によっては発酵に十分な水分が存在する。 (2) 無機物の化学反応: 消石灰が炭酸ガスと反応して発熱する。発酵をしているRDF中では消石灰の炭酸化が並行して存在する。 (3) 搬入時の初期温度: 通常のRDF製造では考えにくいが、施設のトラブル時などで高温度のRDFが製造される可能性が否定できない。高温のRDFが搬入されれば、発酵や酸化が加速される。 (4) 化学的酸化: 4000立方メートルの大きなタンクに大量に蓄積されているので、上記に示すような何らかの原因で発熱があれば、蓄熱する。天ぷらのあげカスなどの特に酸化されやすいものでなくとも、容易に酸化される。 2.爆発原因 (1) 熱分解ガスの発生があった。 高温で空気遮断条件下では熱分解が起こる。同時に水性ガス化反応、発生炉ガス化反応が並行して起こる。 (2) 嫌気性発酵による可燃性ガスの発生が起こった。 (3) 空気の混入により、可燃性混合気が形成された。 |
対策 |
1.RDFの性状管理 従来の管理項目の他、水分量、粉化度、温度などの発酵や発熱に関連する項目についても管理する。カルシウム含有量もRDFの発酵が押さえられる添加量を確保する。 2.RDFの保管管理 発酵等を促進する要素を排除する。 (1) RDFの輸送時及び受入時に吸湿を極力さけるように設備と管理を改善する。 (2) 貯蔵面では、内部温度および一酸化炭素、メタンのガス濃度の測定により、RDFの発熱・発火をチェックする。長期保管を極力避け、長期保管をする場合は温度調節をする。貯蔵槽は下部からの空気流入をしない構造にする、デッドスペースを生じない構造上・運用上の工夫をした保管管理を行う。貯蔵槽を複数にする。 3.防災設備を充実させ、防災基準を制定する。 4.発熱発火時の対応では、短期間で大量の水を使用した完全消火と、鎮火後の速やかなRDFの排出をできるようにする。 そのた管理運営体制、RDF化施設との連携、周辺地域との連携、事故技術等の情報集積などが謳われている。 |
知識化 |
1.新たな技術は新たな危険をもたらす。この事故がその典型だ。 2.最初の小さな芽の時に徹底的な調査・研究と対策を行っていれば、後の大きな事故は起こらなかった。芽のところで危険を感知することが重要である。 3.生ゴミは可燃物。家庭から出るときはウエットだから燃えないが、乾けば燃えるし、発酵して発熱するのは当然だ。 |
背景 |
1.先行した事故があった。その時に徹底して調査・研究を行っていれば爆発事故は発生していなかった可能性がある。運転担当者に対するサポート体制の問題か。 2.研究段階で利便さばかりが優先し、RDFそのものの、あるいは設備とのマッティングでの安全性の研究不足があったのではないか。有機物が主体のゴミは可燃物であり、ドライにすれば燃えやすくなることは当然である。また、発酵菌が残っていれば、少し水分を含ませれば発酵し発熱する。大きな貯蔵槽なら当然放熱もしにくい。 |
よもやま話 |
☆ 生ゴミを取り扱いやすいようにペレット化し、廃棄物をエネルギー源にする取組はすばらしいが、安全に対する認識が一歩不足していた。一般ゴミは最も性状が安定しないものであろう。廃棄物処理場でも事故はかなり多い。RDFでも発酵しやすいものや天ぷらカスや使いふるしの揚げ油などが大量に混入したら、発熱・発火しやすいRDFができないかと思う。何らかの生ゴミの選別が必要ではないか。 ☆ 電力業界のある人の話では、RDF燃料による発電は10年程度前からある技術で、対策はわかっているはずとのことだった。 |
データベース登録の 動機 |
新規導入技術の初期トラブルを生かせなかった例 |
シナリオ |
主シナリオ
|
企画不良、戦略・企画不良、プラス要素だけで判断、組織運営不良、運営の硬直化、最初の失敗で追求せず、誤判断、状況に対する誤判断、計画・設計、計画不良、設計不良、非定常動作、状況変化時動作、想定外事象、二次災害、損壊、火災・爆発、身体的被害、死亡、2名死亡、身体的被害、負傷、5名負傷、組織の損失、経済的損失、社会の被害、人の意識変化、行政への不信
|
|
情報源 |
ごみ固形燃料発電所事故調査専門委員会、ごみ固形燃料発電所事故調査最終報告書、(2003)
|
死者数 |
2 |
負傷者数 |
5 |
物的被害 |
貯蔵槽屋根部分破損、一部焼損。貯蔵槽内RDF一部焼損。 |
社会への影響 |
2003年8月21日、発電所にいた企業庁職員や作業員、報道関係者ら約200人が敷地外に避難。22日~24日、隣接自治体の住民150人以上が頭や目の痛みを訴える。健康相談所を開設。 |
マルチメディアファイル |
図2.化学式
|
図3.化学式
|
図4.化学式
|
図5.化学式
|
分野 |
化学物質・プラント
|
データ作成者 |
小林 光夫 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻、オフィスK)
田村 昌三 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻)
|