事例名称 |
吊り荷の荷崩れによるクレーン災害 |
代表図 |
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事例発生場所 |
木造住宅建築工事現場 |
事例概要 |
木造住宅建築工事現場の建方作業において、野地板16束(重さ約35kg)を、移動式クレーンで吊り上げ、旋回中、吊り荷が電話線に引っかかり、吊り荷が崩れ落ちて、被災者の頭上に当たり死亡した。原因としては、作業員の安全管理体制に問題があり、作業計画の十分な検討と、確実な監督・指導が不足していたことが挙げられる。 |
事象 |
木造住宅建築工事現場の建方作業において、野地板16束(重さ約35kg)を、移動式クレーンで吊り上げ、旋回中、吊り荷が崩れ落ちて、被災者の頭上に当たり死亡した。 |
経過 |
・木造2階建住宅の新築工事が行われる際、建方作業は、元請の大工6名を中心に総勢8名によって、元請がリースした移動式クレーン(トラッククレーン、吊り上げ荷重11トン)を使用して災害発生当日の早朝から作業が行われた。 ・現場は狭く、移動式クレーンは高さ5.2mの空中を走る電話線の直下、また市道の側溝をまたいで、アウトリガーを路上と、隣の畑に張り出し設置した。 ・当日の午後、野地板などの材料が搬入され、道路上に卸された。午後3時頃、これらの材料を現場内に移動させるために、元請の作業指揮者がクレーン運転士にその旨を指示した。 ・玉掛けは、その資格を持っている元請の作業指揮者及び下請の被災者の2名によって、ナイロンテープ(長さ5m、径33mm、両端アイ)2本を用いて、約16束の野地板(長さ2m、幅約10cm~15cm、一束15枚~20枚、重さ約250kg)を2点吊り(野地板束の両端から、それぞれ約30cmの位置に、目通しして、他端をそれぞれ移動式クレーンの補巻フックにかけた)し、作業指揮者がクレーン運転士に巻き上げの合図した。 ・同作業指揮者は荷が水平な状態で巻き上げられ、空中を走っている電話線の高さ程度(約5.2m)に上ったとき、現場内玄関先の荷下ろし位置に、敷材を並べるために移動した。 ・クレーン運転士は、荷下ろし位置に敷材が敷き終わりかけたので、電話線を越えてジブを旋回させようとしたとき、突然、吊り荷がずれ落ちその直下にいた被災者の頭部を直撃した。 ・なお、このとき附近の人が、吊り荷一部が電話線に引っかかったのを目撃している。 |
原因 |
(人的要因) ・危険意識の欠如 荷下ろし場所での敷材を敷く作業が終了してないのにクレーンが旋回し、作業員の真上に吊り荷を移動させた。また、合図がないのにクレーン運転士が勝手にクレーンを旋回させた。 ・推測判断 もうじき敷材作業が終了するだろう、吊り荷もこのまま大丈夫だろうと思い込みクレーンを旋回させた。また、吊り荷は地切れができたので、このまま移動しても荷崩れを起こすことはないだろうと思いクレーンを旋回させた。 (設備的要因) ・器具自体の欠陥 玉掛け用具のナイロンロープが吊り荷に対して太すぎて目通ししても十分しまっていなかった為に崩れを起こした。 (作業的要因) ・作業手順の不履行 クレーン作業では、有資格者が玉掛をする、合図者の合図でクレーンが動き出し作業をするのが基本の作業手順であるが、合図者の合図なしでクレーンが仕事をして災害が発生している。また、クレーン作業では、あらかじめ荷下ろし場所を決め荷物が降ろせる状態になってから、荷物を吊り上げ、荷物を移動させなければならないのに、荷物を吊り上げてから荷下ろし場所を作っている。 (管理的要因) ・監督、指導の不足 吊り荷の下で、作業員が作業をしている、また作業員の真上に吊り荷を移動させるのを見たら、直ちに作業を中止させ指導しなければならないのに、そのまま危険な作業状態を見過ごした。 ・安全衛生教育、訓練の不足 危険意識が欠落している為、合図もなしにクレーンを旋回させる、吊り荷の下でも平気で作業が出来る。危険な状態を見ても何の指導も出来ない。これは、経験不足でもあるが、クレーンを使用する作業の着手前に、災害事例だとか、当日作業の手順の確認とか、KY教育の不足も災害発生の要因である。 |
対策 |
・事前に作業計画をたて、合図を決め、合図者を指名し、作業する者、全員で綿密な作業前打ち合わせをすること。 ・また、それを確実に実行させる監督、指導を磨くこと。 |
知識化 |
・クレーン作業の場合は、事前に作業計画をたて、合図を決め、合図者を指名し、作業する者、全員で綿密な作業前打ち合わせをすることが必要である。 ・また、それを確実に実行させる監督、指導が必要である。 |
後日談 |
・吊り荷の荷崩れによる災害は、玉掛の不良によるものが多い。 ・切梁解体作業のように1本吊で作業を行う場合など、重心の位置を間違える、最後のボルトを外す為吊り上げていた切梁がボルトが外れたと同時に思わぬ方向に急に移動し災害になる。 ・強い風に吊り荷があおられて揺れ、作業員に当たるなどの災害も多い。 |
シナリオ |
主シナリオ
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手順の不遵守、手順無視、玉掛け方法不適切、価値観不良、安全意識不良、合図・誘導なし、定常操作、手順不遵守、クレーン頭上旋回、使用、運転・使用、電話線に接触、破損、破壊・損傷、吊り荷落下、身体的被害、死亡
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死者数 |
1 |
分野 |
建設
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データ作成者 |
國島 正彦 (東京大学)
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