失敗事例

事例名称 橋桁架設中桁が重心を失い落下
代表図
事例発生日付 1992年06月19日
事例発生地 愛知県南設楽郡鳳来町
事例発生場所 プレストレスコンクリート橋梁架設現場
事例概要 事故当日は上流側耳桁を門構にて吊り上げ所定の位置に横移動中、上流側へ1.4m横移動した時点で桁が傾いたので修正すべく架設桁上に仮置きしようと70センチ程戻した時、桁を吊り下げているゲビンデ鋼棒が曲がり、桁は上流側に弓なりなった。
ゲビンデ鋼棒が破断すると判断し、大事故になると思い作業員全員を待避させた。打開策を検討したが良い方法が無かったので、最小の被害を想定して門構のトラワイヤーを外した。桁は中央で折れて川底へ落下したが、落下する時にA2側台車をはねて、ガーダーを下流側へ飛ばし、門構脚にあたり川底へ落下した。人身に対する被害は無かった。
事象 平成4年6月19日14時過ぎ、桁長48.454m、桁重量175.5t/本のプレキャストT桁の架設中に、桁が約30度傾き弓なりになった。門構のトラワイヤーを外したら、桁が中央で折れ川底に落下すると共に、ガーダーも落下した。人身に対する被害は無かった。
経過 ・午前8時より機材の点検・使用材料の桁積みを行い、10時ごろより主桁を引き出し、12時ごろ架設桁上に引き出し完了。引き続き横移動装置の取り付けを行う。
・14時よりA2橋台側より主桁の吊上げを行う。その際、主桁が傾いたので2~3回吊り直しをした。その後A1橋台側の吊上げを行った。この時も主桁の傾きが生じたために吊り直しをし、垂直に吊下がった状態で3~4分観察した。
・架設桁は主桁軸と平行に設置されていないため、14時15分頃主桁A2側を上流へ約80センチ移動し主桁を軸線と平行にした。移動後2~3分状態を観察した。
・14時30分頃上流側架設位置まで約1.4m横移動した。その際、桁が傾きだしているのに気付き、急いで架設桁上に引き返すこととした。その途中で桁が約30度傾き上流側に弓なりになった。
・15時40分頃町道をまたいでいる門構のトラワイヤーを外したら、桁が中央で折れて川底へ落下すると共にガーダーも落下した。
原因 桁吊り金具と主桁が剛結されていなかったため、桁の横方向変位が自由な状態にあった。一般にPC橋のT桁では縦方向ほど横方向の断面二次モーメントは大きくなく、桁長が長い場合はほんの少しの桁の倒れが、横方向のたわみを進行させ大きなたわみを生じさせる事になる。
対処 ・主桁を再度製作し、吊り装置を主桁上面に固定して架設した。
・横ぞり修正装置を取り付けて架設した。
対策 ・桁吊り金具とPC桁を剛結構造にする。
・施工検討会の実施
知識化 ・桁を吊り上げる時は重心位置より上に支点を設ける。
・桁吊り装置は変形を拘束する構造とし、主桁と剛結する構造とする。
・長尺桁を吊り上げる時は横ぞり対策を講ずる。
背景 道路橋におけるPC桁は旧建設省の標準設計では支間45mまでであったが、架設現場条件ではそれ以上の支間のPC橋を計画する事がある。しかし、支間45mを越すPC橋を施工することは稀である。近年、トラッククレーンが大型化となり吊り能力も大きくなり、クレーン架設工法が多く採用されてきている。
よって、架設桁と門構による架設工法が減少傾向にあり、架設技能を持った橋梁鳶工もすくなくなり、職員、協力業者が十分な技量を蓄える機会も少なくなってきている。
今回の現場職員は経験があったため人身事故には至らなかったが、桁の吊り支点、重心位置との関係、横ぞり対策など、施工検討不足があると同時に職員に任せきりにし会社としての現場管理が不十分であった。
シナリオ
主シナリオ 調査・検討の不足、事前検討不足、普段使わない工法、定常操作、誤操作、桁と吊り具の剛結未実施、破損、変形、横方向にたわみ発生、破損、大規模破損、墜落
物的被害 ・主桁1本
・架設桁
・門構
・架設台車
被害金額 約5,000万円
社会への影響 非常に少ない
マルチメディアファイル 図2.現況図
図3.対策図
備考 プレストレストコンクリート橋梁には、主桁の製作方法として主に工場で製作するプレテンション工法と架設現場付近で製作するポストテンション工法がある。桁長が長く一般道路を運搬できない場合は、ポストテンション工法によるプレキャスト桁を架設現場付近で製作し、軌条又はトレーラ等で架設地点まで運搬し架設する工法が採られている。運搬した桁の架設工法は、門構またはトラッククレーンで吊上げ横移動し、所定の位置に据え付ける方法が一般的である。
本現場は橋台背面で製作したプレキャスト桁を架設桁上に引き出し門構にて架設する工法を採用した。
分野 建設
データ作成者 飯田 忠之 (株式会社 ピー・エス 土木部)
太田 豊 (株式会社 富士ピー・エス 東京支店)
國島 正彦 (東京大学)