事例名称 |
クレーンの吊り荷(野地板)を誘導中の大工が、バランスを崩して墜落 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1998年05月02日 |
事例発生地 |
鳥取県米子市 |
事例発生場所 |
2階建て木造家屋新築工事現場 |
事例概要 |
2階建て木造家屋新築工事現場の野地板の敷き込み作業において、2階梁上(高さ5m)で大工がクレーンに吊られた野地板を仮置き場所に誘導しようとしたところで、突風(風速約6m/s)が吹いたことにより、吊り荷((縦)1800ミリ×(横)900ミリ×(厚さ)9ミリの野地板30枚)があおられた。大工(C)はあおられ吊り荷を押さえようとして手を添えたがバランスを崩し、2.5m下の1階下屋野地上に墜落した。 |
事象 |
1998年5月2日午前9時30分頃、2階建て木造家屋新築工事現場において、クレーンに吊られた野地板30枚が突風にあおられ、大工(C)が1階下屋上に墜落し、休業3ヶ月の重傷を負った。 |
経過 |
・朝8時、現場に各作業員が集合し、各自の作業の準備にかかった。 ・木造建築物の組立て等作業主任者(A)(工務店社長)は、他の現場での作業があるため、作業の指揮は大工(B)に任せていた。 ・8時30分、作業員はベテランぞろいであるため、特別な打ち合わせを行わず、役割分担だけを決めて、大工(B)の指揮のもとに作業が開始された。 ・翌日より雨天が予想されたため、大工(B)の判断で当日中に2階野地板の敷き込みと雨養生用のシートの設置を完了させる作業手順へと変更した。 ・9時30分頃、梁上で大工(C)がクレーンに吊られた野地板を敷込み位置に誘導していたところ、突風により吊り荷があおられた。 ・大工(C)は、あおられた吊り荷を押さえるため、手を添えようとしたとき、バランスを崩して2.5m下の1階下屋野地上に墜落した。 |
原因 |
・作業主任者(A)(工務店社長)が大工(B)(作業主任者の資格なし)に責任と権限を明確に与えないまま、作業の指揮監督を行わせたこと ・大工(B)は、悪天候が予想される状況の中、軒先、梁上からの転落防止措置を講じないまま、クレーン使用による2階野地板を吊り上げ、荷受け作業を進めた。 ・大工(C)は、親綱・安全帯を使用せずに、屋根・梁上での作業を行った。 ・突風によりあおられている野地板を大工(C)は押さえようとした。 |
対策 |
・木造建築物の組立て等作業主任者(A)(工務店社長)又は、その代理の作業主任者の資格のある者が建方作業時は現場に常駐し、直接の作業指揮監督を行う。 ・突風時におけるクレーン作業を禁止する。 ・軒先・梁からの転落防止設備の未設置による屋根・梁上作業を禁止する。 ・屋根・梁上作業時の安全帯の使用を徹底する。 ・現場毎に親綱・水平ネットを用意する。 |
知識化 |
・作業主任者が建方作業時に常駐し、直接指揮監督を行うことを文書に公式化し、関係者に周知徹底する。 ・悪天候時の作業中止基準を明確にし、文章化し、関係者に周知する。 ・軒先の手すり、親綱、水平ネットの設置がなければ、作業を禁止する規則を制定し、全現場に徹底させる。 |
背景 |
・工務店の社長は、他の現場での仕事が急に発生したため、現場で作業の指揮をとることができなかった。 ・翌日から連休で天気予報も雨であったため、大工(B)の判断で、作業手順を変更した。 ・元請や工務店の経営者の安全意識が低調であり、指導力も不足していた。 ・作業者(大工)の安全帯の使用、作業方法の危険性に対する認識が薄く関係者との打合せが不十分であった。 |
後日談 |
・次回の建方時に作業主任者が現場で、屋根梁上作業時の安全帯の使用を作業前にミーティング及び作業中に口頭で指示し、徹底した。 ・元請の工事責任者が工務店において、親綱と水平ネットの必要数量を全現場に用意することを徹底した。 |
よもやま話 |
・元請や工務店社長の意識として、高所作業時の安全対策より、生産性(効率)、コスト低減が優先していた。 ・1年前に同種の災害が1件発生しており、元請から屋根・梁作業時における親綱や安全帯の使用等の指導が行われていた。 |
当事者ヒアリング |
・大工(C)は、日頃から保護帽のあごひもをしっかりと締める習慣がなく、また、そのことで注意されたこともなかったとのこと ・大工(C)は、安全帯を持っていなかった。高所作業時に使用する必要も感じていなかった。また、そのことで工務店の社長から指導を受けていなかった。 ・大工(B)は、外部足場の2層目上でクレーンの合図を行っていたため、突風の可能性について気がつかなかった。 |
データベース登録の 動機 |
同種及び類似の労働災害を発生させないために! |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、運営の硬直化、管理者不在、組織運営不良、構成員不良、管理者代理経験不足、組織運営不良、運営の硬直化、情報連絡不足、価値観不良、安全意識不良、転落防止措置不備、環境変化への対応不良、使用環境変化、突風、非定常動作、状況変化時動作、あおられた吊り荷おさえる、非定常動作、状況変化時動作、バランスを崩す、身体的被害、人損、転落、身体的被害、負傷
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情報源 |
建設業労働災害防止協会発行「低層住宅建築現場におけるわかりやすい日常の安全管理」(職長である親方のための安全衛生教育テキスト)(2002.3発行 CS-1災害事例研究の進め方、事例No.1より)
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
1 |
物的被害 |
特になし |
被害金額 |
不明 |
全経済損失 |
不明 |
社会への影響 |
低層住宅建築現場での労働災害の発生は、元請及び工務店の管理責任に対する社会的な不信を招くと同時に、施主、近隣住民、見学者からの危険性への不安感と不信感を増大させる。 |
分野 |
建設
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データ作成者 |
狩野 幸司 (建設業労働災害防止協会)
國島 正彦 (東京大学)
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