事例名称 |
作業間の連絡調整ミスによる墜落災害 |
代表図 |
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事例発生日付 |
2001年01月18日 |
事例発生地 |
兵庫県神戸市兵庫区 |
事例発生場所 |
建築現場屋上階 |
事例概要 |
修理の為使用禁止となっているクレーンを「使用禁止」とは知らず使用した為、旋回範囲内に立ち入って作業を行っていた作業員にクレーンのカウンターウエイトが当たり、その反動で飛ばされ約10m下方に落ち負傷した。作業間の連絡調整を確実に実施する必要がある。 |
事象 |
共同住宅新築現場の屋上で作業中、クレーンのカウンターウエイトに当たり飛ばされ、約10m落ち負傷した。 1 発生年月日:平成13年1月18日午前10時10分頃 2 工事の種類:建築事業(共同住宅) 3 被災程度:負傷 4 被災者:男 5 年齢:25歳 6 職種:型枠大工 7 経験年数:9年 8 現場乗込時年月日:7ヶ月 9 災害の種類:クレーン災害 |
経過 |
・前日の11時30分よりの作業打合せにて、クレーン担当社員より、タワークレーンの電気系統の不都合があり修理が必要となったので、今日の午後よりクレーンの使用は禁止とするが、翌日からは使用できるとの連絡をした。 ・夕方になり、タワークレーン修理業者より、作業の進行が遅れており、翌日の午前中まで修理がかかるので、明日の朝礼時に使用禁止の徹底を図っていただきたい旨の報告があり、当社クレーン担当社員は了承した。 ・災害発生当日午前8時より朝礼、体操、KY活動を行った後、元請より本日の作業の注意事項等の発表を行い、約60名の作業員は一斉に作業にとりかかった。クレーン使用禁止については特に言及していなかった。 ・型枠業者は、パラペット型枠組立作業を行う為、作業場所へ向かった。被災者は、セパ取付の段取りの為、必要な作業を行っていたが、10時の休憩時間になっても作業がのびていた為そのまま作業を続けていた。 ・午前10時10分頃、最上階エレベーターシャフト部にて、パラペット型枠組立作業中、セパレーターの溶接をしている時に、突然タワークレーンが旋回してきて、被災者とカウンターウエイトが接触した為、跳ね飛ばされ約10m下方に落ち負傷した。 |
原因 |
・クレーンの使用禁止が徹底出来ず(作業間の連絡調整不備)、別の業者がクレーンを使用できるものと思いクレーンを動かした。 ・クレーン作業半径内に何の連絡もなく立ち入った。 ・連絡調整がうまく行かなかった原因 1 当社担当社員が、当日体調不良で休みとなったが、クレーンの使用禁止についての連絡はなかった。 2 担当社員のみが変更を承知しており、他の社員はそれを知らなかった。 3 全員が、前日の打合せ通りに事故当日は、クレーンが使用出来るものと思っていた。 4 朝礼で全員にクレーンが使用出来ないことの徹底を行わなかったし、クレーン修理業者も特に朝礼で発言しなかった。 5 クレーン修理業者は、修理作業を行っていたが、作業が終わり試運転に入ろうとしていたので使用禁止の表示等を十分行っていなかった。 6 ほかにもクレーンを使用できるものと思っている業者もいたが、修理状況を見て使用をあきらめたが、他業者や元請に連絡することはなかった。 7 型枠業者もカウンターウエイト旋回範囲内にて作業を行っていたが、危険場所への立入禁止措置や、作業の監視対策が十分でなかった。 8 午前の休憩に入り、クレーン修理業者が持ち場を離れた為、誰でも使用できる状態となった。 9 クレーン運転手は、休憩時間であり、誰も付近にはいないものと思いこみ、周りをよく見ないでクレーンを操作した。 |
対策 |
・社員間の作業打合せを確実に実施し、打合せ漏れの無いようにする。 ・クレーン建方計画時に、図面で建物の最高高さの離隔を確認し、最低2m以上の離隔を確保する。クライミングの時期も同様に検討する。 ・機械の安全装置は解除しない。 ・危険場所への立入禁止を確実に行う。(旋回範囲内の立入禁止を徹底する) |
知識化 |
・災害事例シートに入れ、教育資料とした。 ・設備対策(2m以上の離隔)は当社のクレーン設置基準とした。 |
背景 |
同一場所に於ける多業種の作業員の混在作業に対する災害防止対策は、安全の交通整理を確実に行うことが最も基本である。その為に、交通整理を行うべき社員相互、元請と協力業者、及び協力業者相互の連絡調整(作業打合せ)を確実に行うことが必要となっている。 今回の事例は、交通整理を行うべき社員間相互の連絡調整が不十分であったことが原因で災害が発生したのであり、作業間の連絡調整不足の典型的な事例である。その背景には、人間には「ついうっかり」「危険に対する慣れ」といった本能的なものがある。確実に安全対策を確認する必要がある。 |
当事者ヒアリング |
被災者は、「まさかクレーンが旋回してくるものとは思わなかった」「死なないでよかった」と言っていた。 加害者は、「まさか人がいるとは思わなかった」と言っていた。 |
データベース登録の 動機 |
何度も同じ間違いを繰り返さないため |
シナリオ |
主シナリオ
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組織運営不良、運営の硬直化、使用禁止不伝達、使用、運転・使用、クレーン旋回、身体的被害、人損、カウンターウエイトに接触、身体的被害、人損、落下、身体的被害、負傷
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負傷者数 |
1 |
社会への影響 |
今回は負傷で済んだため特に影響がなかったが、死亡した場合はマスコミ等で報道され影響が出てくるものと思われる。 |
マルチメディアファイル |
図2.平面図と断面図
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分野 |
建設
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データ作成者 |
野中 格 (社団法人 日本土木工業協会)
國島 正彦 (東京大学)
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