事例名称 |
板張り防護工解体中に、防護工の一部が損壊し県道上に落下 |
代表図 |
|
事例発生日付 |
2001年08月22日 |
事例発生地 |
愛知県豊田市 |
事例発生場所 |
愛知県内一般道路を跨ぐ高速道路の橋梁現場 |
事例概要 |
愛知県内の一般道路を跨ぐ高速道路高架橋の架設現場で、橋桁に設置していた、板張り防護工を、当該一般道路の交通規制(交通止め)をおこなって解体・撤去していたところ、上り線側防護工の一部が損壊した。 |
事象 |
2001年8月22日夜、防護工解体中に、足場板を受けていた角形鋼管と主桁下フランジを固定していたバイス型クランプの押しボルトが折れ、クランプが外れ防護工が崩落し集積した足場板と共に3名の作業員が、高さ10.3mから墜落し負傷した。 |
経過 |
・ 当高架橋の防護工は主桁の間隔が5mと広いため、ころばし(梁)材として角形鋼管を主桁下フランジ間の下面にバイス型クランプを使用して1.2m間隔で取付、その上に足場板を敷き詰めて、一般道路への落下物を防止する構造であった。 ・ 作業開始前のミーティングでは解体手順はつぎのとおりであった。 1 上り線はA班の担当とし、作業員4名に高所作業車(スーパーデッキ・総積載荷重800キログラム)とラフタークレーン各1台配置する。 2 解体作業の手順は防護工上に4名、高所作業車上に1名、地上クレーンの 玉掛け作業に1名配置する。 3 防護工上の作業員が手前から足場板を撤去・運搬し、高所作業車上の作業員が1枚ずつデッキ上に回収する。 4 足場板(1列4m分)を撤去後、高所作業車上から足場解体済み箇所の角型鋼管を撤去する。 5 上記の作業を解体始端部から終端部に向かって4mごとに移動しながら繰り返し行う。 ・ 以上説明を受けたが作業開始直前に、足場板の撤去作業に際して作業員の間で現地の状況を踏まえ、又作業効率を考え以下のように作業手順を変更した。 1 防護工上に作業員4名全員上がり足場板を終端部から撤去し、運搬し始端部に集積する。 2 防護工上に集積した足場板は高所作業車のデッキに回収しクレーンで地上に取り下ろす。 3 足場板の撤去が終わったら、高所作業車上から角形鋼管を取りつけているクランプを弛め撤去する。 ・当日は予定どおりに、20時から交通規制を行い作業を開始した。 ・ 20時20分頃、作業員4名が終端部側から足場板を撤去・運搬し始端部に集積していていたところ、集積した箇所の角形鋼管固定用クランプ6個の押しボルトが損傷しクランプが外れ、防護工上にいた作業員4名の内、始端部付近にいた3名が、足場板と共に10.3m下の道路に墜落して負傷した。 |
原因 |
・ 作業員が、決められた作業手順を勝手に変更した。 ・ 工事責任者や作業指揮者は作業員が手順を変更したことに気が付かなかった。 ・ 工事責任者や作業指揮者は、作業前のミーティングで作業手順を説明したので、そのとおり実施されるものと思い、作業状況の確認を怠った。 ・ 作業員が角形鋼管は丸形鋼管より強いとの過信から、許容荷重の確認を怠 り、防護工上に足場板を集積した。 ・ 集積した足場板の重量で、角形鋼管が大きくたわみバイス型クランプに水平 力が作用し、押しボルトが破断して防護工が崩壊した。 |
対処 |
・ 2次災害の発生を防止するために、高所作業車のデッキ上から、損壊部の防護工を撤去し、当日はその後の作業を中止した。 |
対策 |
・ 作業手順の説明は、作業員の意見もとりいれ詳しく行い、手順説明後に理解の状態を作業員1人1人に確認する。 ・ 職員、工事責任者、作業指揮者の職務を再確認し連絡、報告を密に行う。 ・ 足場板の回収は防護工上には、上がらず高所作業車のデッキ上から行う。 ・ 高所作業車のデッキに回収する材料は、積載荷重以下(足場板25枚)とし、順次デッキを降下させて、クレーンで地上に取り下ろす。 |
知識化 |
・ バイスクランプは挟む板厚を考慮し、型や寸法を選択する。 ・ バイスクランプは大きな曲げが作用する場合は、一部材2ヶ所使用する。 |
背景 |
・ 本工事の橋梁は、足場吊りチェーン用吊り金具が主桁に溶接されておらず防護工の構造が、角型鋼管をバイス型クランプで主桁下フランジ用いて取り付 ける構造となった。 ・ 防護工の設計荷重は1スパン当たり110キログラムとして管理されていたが、解体時には制限荷重が周知されていなかった。 ・ 作業開始時に工事責任者が、交通規制の作業に気を取られ、現場を離れていて作業手順が変更されたことが分からなかった。 ・ ミーティング時に、実行された効率の良い作業手順が見過ごされ、検討不足であった。 ・ 使用されていた、バイス型クランプが下フランジの厚さがt=53ミリ,t=26ミリの2箇所とも同じ物が使用され、特にt=26ミリの箇所は押しボルトの挟み長さが長くなり曲げに弱い状態になっており、検討不足があった。 |
後日談 |
・ 工事再開後は、作業ミーティングを行い、手順説明後に理解の状態を確認するため、正誤問題を用いた簡易なテストをした。 ・ 予め高所作業車の据付場所を昼間に確認し、防護工の回収を高所作業車のデッキ上から行ったが効率よく、解体・撤去が完了した。 ・ 現場で使用したバイスクランプと、同じ型の物を用意し、製造メーカーで再現実験を実施し押しボルト等の破断状況を確認した。 |
よもやま話 |
・ 少数主桁構造は美観、経済性を重視する形式であり、安全設備用の足場吊金具が設置されていない。 |
データベース登録の 動機 |
同じ間違いを繰り返さないため |
シナリオ |
主シナリオ
|
無知、知識不足、思い込み、組織運営不良、管理不良、作業管理不良、非定常行為、変更、手順変更、計画・設計、計画不良、解体した足場の集積、破損、破壊・損傷、角形鋼管たわむ、破損、大規模破損、防護工崩壊、身体的被害、負傷
|
|
情報源 |
失敗知識データベース整備事業建設分野研究委員会提出資料
施工会社の責任者からのヒヤリング
|
負傷者数 |
3 |
分野 |
建設
|
データ作成者 |
三品 武志 (社団法人 日本橋梁建設協会)
國島 正彦 (東京大学)
|