事例名称 |
施工が設計と著しく相違していたため、暗渠工等が工事の目的を達していないもの |
代表図 |
|
事例発生日付 |
1995年 |
事例発生地 |
福島県 |
事例発生場所 |
道路工事現場 |
事例概要 |
5号暗きょ工において、暗渠継手部24箇所のうち、23箇所については止水目地のパッキングが全く施工されておらず、残りの1箇所についても、全周の一部しか施工されていなく、施工が設計と著しく相違していたため工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額2,630,500円が不当と認められた。 |
事象 |
5号暗きょ工延長49mは、本件道路と交差する渓流の水を流下させるため、盛土の下部に、鉄筋コンクリート構造の工場製品で内空断面の幅、高さとも1mのボックスカルバートを25基(長さが1mのもの1基、2mのもの24基)設置するもので、設計図書等によると、次のように施工することとしていた。 (ア) カルバートの基礎として、地盤の上に切込砂利を敷きならし、締め固めて厚さ20cmに仕上げた後、基礎コンクリートを厚さ10センチ、敷モルタルを厚さ3センチ施工する。 (イ) 上記基礎の上に、次のようにカルバートを設置する。 1 カルバートの継手部の全周にわたって設けられた溝に接着材を塗布し、ゴム製のパッキング(幅28ミリ、厚さ20ミリ)を取り付ける(この部分を「止水目地」という。)。 2 カルバートを外側端部の4箇所の継手金具を締め付けることにより連結し、上記基礎の上に底面が滑らかで一様な勾配になるように据え付ける。 3 カルバートの継手部の内側及び外側の溝にモルタルを充てんする(この部分を「化粧目地」という。) 上記の止水目地は、カルバート内からの漏水や外周部からの侵入水によって外周部の土砂が吸い出されて空洞を生じ、カルバートや路体が変状を来すことを防止するためのものである。また、カルバート内側の化粧目地は、水の流下面を平滑にすることにより流下効力を増大させるためのものである。 検査したところ、カルバートは次のような状況となっていた。 (ア) 25基のカルバート延長49mが全体にわたって不等沈下(最大17.0センチ)しており、継手部が最大で2.5センチ開口するなどしていた。そして、ほとんどの継手部において漏水し、また外周部から水が侵入していた。 (イ) カルバートの継手部24箇所のうち、6箇所については化粧目地のモルタルがすべてはく落し、また、14箇所については一部分がはく落し流失していた。 (ウ) カルバートの継手部11箇所において、外周部の道路盛土が吸い出されていて空洞(奥行最大38センチ)が生じていた。 (エ) 基礎コンクリートに、10箇所の全幅にわたる亀裂(幅最大1.0m)が生じていた。 このように、5号暗きょ工のカルバートは継手部の止水目地の施工が設計と著しく相違したものとなっていて、5号暗きょ工及びその上部の盛土工は工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額6,487,800円が不当と認められた。 |
経過 |
・一般国道400号の道路改良事業の一環として盛土構造の道路を築造するため、3号、4号、5号の3本の暗渠工、盛土工などを国庫補助金55,578,182円で実施した。 ・設計図書では、カルバートの継手部の全周にわたって設けられた溝に接着材を塗布し、ゴム製のパッキングを取り付ける(「止水目地」)ことになっていた。 ・5号暗きょ工のカルバートは継手部の止水目地で施工が設計と著しく相違したものとなっていて、5号暗工及びその上部の盛土工は工事の目的を達しておらず、国庫補助金相当額6,487,800円が不当と認められた。 |
原因 |
設計図書にある、止水目地及び化粧目地の重要性を全く理解していなかった。また、単に作業量を減らすための、いわゆる手抜きというような理由も考えられる。 |
対策 |
罰則を設けるなどして、業界全体としてより緊張感を増やしていく必要がある。 |
知識化 |
設計図書は順守! |
シナリオ |
主シナリオ
|
価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、定常操作、手順不遵守、設計図書不遵守、機能不全、諸元未達、性能未達、起こり得る被害、潜在危険、税金無駄遣い
|
|
情報源 |
平成7年度決算検査報告(会計検査院)
|
被害金額 |
不当と認められる国庫補助金交付額 6,487,800円 |
マルチメディアファイル |
図2.5号暗きょ概念図
|
分野 |
建設
|
データ作成者 |
米澤 明男 (東京大学)
國島 正彦 (東京大学)
|