失敗事例

事例名称 橋梁整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため橋台などが不安定な状態になっているもの
代表図
事例発生日付 1992年
事例発生地 北海道常呂郡置戸町
事例発生場所 町役場
事例概要  プレストレストコンクリート道路橋を新設する際、右岸側橋台におけるかかと版に配置する鉄筋に対し、使用する鉄筋の径を誤って、配筋図を作成した。そのためこの設計に基づき施工したところ、地震時において右岸側橋台の安定が確保できず、橋台及びこれに仮設された桁が不安定な状態になった。したがって、これに係る国庫補助金相当額 30,453,600円が不当と認められた。
事象  右岸側橋台におけるかかと版の鉄筋については、設計の基礎となっている設計計算書によれば、応力計算上安全なものとなるよう上側面には主鉄筋として径22ミリの鉄筋を25センチ間隔に配置することとあった。しかし、配筋図を作成する際に、誤って径16ミリの鉄筋を使用することとしていた。この結果、かかと版と縦壁との接合部において上面側の主鉄筋に生ずる引張応力度(地震時)は、径22ミリの鉄筋とすれば2,020.1重量キログラム毎平方センチメートルとなるのに、径16ミリの鉄筋では3,856.3重量キログラム毎平方センチメートルとなり、鉄筋の許容引張応力度2,700重量キログラム毎平方センチメートルを大幅に上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えている。したがって、本件右岸側橋台は設計が適切でなかったため、地震時においてはその安定が確保できず、同橋台及びこれに架設されたプレストレストコンクリート桁は不安定な状態になった。
経過 ・プレストレストコンクリート道路橋を新設するため、橋台2基の築造及び、プレストレストコンクリート桁の製作する補助事業を工事費59,740,000円(国庫補助金35,844,000円)で実施した。
・設計計算書によれば、応力計算上安全なものとなるよう上側面には主鉄筋として径22ミリの鉄筋を25センチ間隔に配置することとあった。
・右岸側橋台における配筋図を作成する際に、径22ミリの代わりに誤って径16ミリの鉄筋を使用することとしていた。
・その設計に基づき、かかと版の施工を行った。
・橋台及びこれに架設されたプレストレストコンクリート桁が不安定な状態となった。
・これに係る国庫補助金相当額30,453,600円が不当と認められた。
原因  設計者個人のミスによるところが多い。典型的な例に、数字の見間違いがあるが、これは前に同じような工事をしたときに16ミリを使用したことがあり、それによるバイアスがかかることで、見間違い(思い込み)が起こると考えられる。また、設計書の見直しが徹底されておらず、組織的にも失敗に気がつかなかったことも考えられる。
対策  この失敗(鉄筋の径を誤ること)は頻繁に起こっており、まずは設計者がそのことを認識することが第一である。同時に組織的には、見直しの係りに設計者とは異なる担当者を設けることが必要だと考える。(これも設計者の目にはバイアスがかかっているものであるため。)
知識化  配筋図を作成する際に、使用する鉄筋の径を誤ることは非常に多い。設計計算書を注意して、何回も読み直すこと!
シナリオ
主シナリオ 誤判断、誤認知、勘違い、計画・設計、計画不良、設計不良、機能不全、諸元未達、強度不足、起こり得る被害、潜在危険、崩壊
情報源 平成4年度決算検査報告(会計検査院)
被害金額 不当と認められる国庫補助金交付額 30,453,600円
マルチメディアファイル 図2.右岸側橋台概念図
分野 建設
データ作成者 宮木 裕也 (東京大学)
國島 正彦 (東京大学)