失敗事例

事例名称 橋梁整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため橋脚が不安定な状態になっているもの
代表図
事例発生日付 1992年
事例発生地 愛知県豊田市
事例発生場所 市役所
事例概要  アーチ型式の鋼道路橋(橋長474.5m、幅員20.0m)を新設する際、橋脚2基の底版下面側の縦(水流)方向に配置する主鉄筋に対し、使用する鉄筋同士の間隔を誤って、配筋図を作成した。そのためこの設計に基づき、施工したところ、橋梁が不安定な状態になった。したがってこれに係る国庫補助金相当額17,358,000円が不当と認められた。
事象  橋脚2基における底版下面側の縦(水流)方向に配置する主鉄筋については、設計の基礎となっている設計計算書によれば、応力計算上安全なものとなるように、上段は径29ミリの鉄筋を12.5センチ間隔に、下段は径32ミリの鉄筋を12.5センチ間隔にそれぞれ配置することとあった。しかし、配筋図を作成する際に誤って上段の鉄筋を25cm間隔に配置することとしてしまった。この結果、底版下面側の縦(水流)方向の主鉄筋に生ずる引張応力度は、上流側橋脚では、1,943重量キログラム毎平方センチメートル(常時)、2,764重量キログラム毎平方センチメートル(地震時)、下流側橋脚では、1,864重量キログラム毎平方センチメートル(常時)、2,913重量キログラム毎平方センチメートル(地震時)となり、許容引張応力度1,600重量キログラム毎平方センチメートル(常時)、2,700重量キログラム毎平方センチメートル(地震時)を大幅に上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えてしまった。したがって、本件橋脚2基は設計が適切でなかったため、不安定な状態になった。
経過 ・アーチ型式鋼道路橋を新設するため、橋脚2基、橋台1基及び橋脚基礎の築造等を実施する補助事業を工事費700,651,320円(国庫補助対象額247,000,000円、これに対する国庫補助金135,850,000円)行った。
・設計計算書によれば、応力計算上安全なものとなるように、上段は径29mmの鉄筋を12.5cm間隔に、下段は径32mmの鉄筋を12.5cm間隔にそれぞれ配置することとあった。
・橋脚2基の配筋図を作成する際、底版下面側の縦(水流)方向に配置する主鉄筋に対し、上段の鉄筋を12.5cm間隔にするところを、誤って25cm間隔に配置するとしてしまった。
・これを基に施工したところ、鉄筋に生ずる引張応力度は応力計算上安全な範囲を超えてしまい、不安定な状態となってしまった。
・これに係る国庫補助金相当額17,358,000円が不当と認められた。
原因  設計者個人のミスによるところが多い。この場合、数字の見間違いになるが、これは前に同じような工事をしたときに間隔を25cmとしたことがあり、それによるバイアスがかかることで、見間違い(思い込み)が起こったと推測される。また、設計書の見直しが徹底されておらず、組織的に失敗に気がつかなかったことも考えられる。
対策  この失敗(鉄筋同士の間隔を誤ること)は頻繁に起こっており、まずは設計者がそのことを認識することが第一である。同時に組織的には、見直しに設計者とは異なる担当者を設けることが必要だと考える。
知識化  配筋図を作成する際に、鉄筋同士の間隔を誤ることは非常に多い。設計計算書を注意して、何回も読み直すこと!
シナリオ
主シナリオ 誤判断、誤認知、勘違い、計画・設計、計画不良、設計不良、機能不全、諸元未達、強度不足、起こり得る被害、潜在危険、崩壊
情報源 平成4年度決算検査報告(会計検査院)
被害金額 不当と認められる国庫補助金交付額 17,358,000円
マルチメディアファイル 図2.橋脚概念図
分野 建設
データ作成者 宮木 裕也 (東京大学)
國島 正彦 (東京大学)