事例名称 |
斜面に設けた土留め壁が崩壊 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1997年06月09日 |
事例発生地 |
秋田県 |
事例発生場所 |
送電線路新設工事における鉄塔脚部基礎工事現場 |
事例概要 |
この災害は、送電線路新設工事現場(鉄塔工事)において、斜面の上下に2段設けた土留め壁の配置を変更するため、下段側の土留め壁を撤去する作業中に、上段側の土留めで支えられていた盛土約5m3が崩壊し、撤去作業に従事していた土工4人の内3人が土砂に巻き込まれ被災したものである。 |
事象 |
建設中の鉄塔(高さ約60m)はその脚部が山の尾根をまたぐように設置されるものであった。その鉄塔脚部基礎工事において、脚部下の斜面に重機走行用道路と盛土置き場の確保のため、土留め壁が設置された。この土留め壁の撤去作業中に上段側に設置されていた土留め壁が崩壊し(土砂約5m3(高さ1.5m、延長約8m))、斜面下の下段土留めにおいて撤去作業に従事していた土工4人のうち3人が土砂に巻き込まれ被災(休業)した。 |
経過 |
作業当日の朝、作業性が悪いため重機自走用道路の配置に関して見直しがなされ、「一段目土留め壁」を撤去することになり、当該作業にとりかかったが、その後現場に到着した責任者が再度配置の変更を指示し、今度は「二段目土留め壁」を撤去していたところ、上部の「一段目土留め壁」が崩壊し、上段側の土留めで支えられていた盛土約5m3が崩壊し、撤去作業に従事していた土工4人のうち3人が土砂に巻き込まれた。 |
原因 |
土留め壁を設置するに際して、十分な強度計算がされず、土留め壁の強度が不十分であったこと。再三にわたり土留め壁の位置を変更したが、安全性を十分に検討せず、組立図もないまま施工されていたこと。その結果として、土圧等が土留めの耐力を上回ったため崩壊に至った。 |
対処 |
復旧後、新たな土留め壁を設置した。 |
対策 |
土留めの設計に当たっては、土圧等に対して十分な強度を持つものとすること。さらに部材の配置、寸法及び材質、取り付けの順序等が記載された「組立図」を作成し、それに基づき土留め壁の組立を行う必要があること。 |
知識化 |
本体構造物に比べて仮設構造部はおろそかにされがちである。事前調査などに基づき、安全で効率的な作業計画を立てるとともに、十分な強度の土留め壁を設計し、適切な組立図のもとに施工する。作業計画変更などで仮設の土留め位置などが変更になった場合は、安全性等を確認してから工事に着手する。 |
背景 |
・土留めに作用する荷重及び地盤の受働土圧やワイヤにかかる張力等の算定が行われていないなど、算定結果に基づいた設計が行われておらず、「これくらいの強度の土留め壁なら崩れることはないだろう」という安易な判断のもとに土留め壁を設置したこと(強度の検討なし。) ・作業計画の不備。 ・安全管理体制の不備。 |
データベース登録の 動機 |
施工途上の土砂崩壊災害の多発。 |
シナリオ |
主シナリオ
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調査・検討の不足、事前検討不足、作業・工程検討不足、環境変化への対応不良、使用環境変化、降雨、組織運営不良、管理不良、作業管理不良、価値観不良、安全意識不良、安全衛生教育不十分、無知、知識不足、危険性認識不足、計画・設計、計画不良、設計不良、製作、ハード製作、土木工事、非定常行為、変更、計画変更、破損、大規模破損、土留め崩壊、身体的被害、負傷、重傷、組織の損失、経済的損失、損害賠償、組織の損失、社会的損失、信用失墜
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情報源 |
http:/www.jaish.gr.jp/
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死者数 |
0 |
負傷者数 |
3 |
物的被害 |
土留め壁の崩壊 |
分野 |
建設
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データ作成者 |
豊澤 康男 (独立行政法人 産業安全研究所)
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