失敗事例

事例名称 鉄塔解体作業中に鉄塔が倒壊
代表図
事例発生日付 1996年08月29日
事例発生地 愛知県刈谷市
事例発生場所 高さ250mの鉄塔解体作業現場
事例概要 鉄塔の解体撤去のため、鉄塔の傾斜是正作業と控え線の盛り替え作業を行っていたが、その作業完了の報告がなされた直後、鉄塔が倒れ鉄塔周辺で作業していた作業員が被災した。その原因は、鉄塔の控え線引き込み用クランプの異常により、控え線に滑りが生じたことである。
事象 老朽化した高さ250mの鉄塔を、ジャッキダウン工法により解体する作業を行っていた。ジャッキダウン工法は、鉄塔下部のメインポストごとにジャッキ架台を設け、鉄塔下部から順次ガス切断し、その切断部分を取り除いた後、残った上部鉄塔本体をジャッキで降下さる方法を繰り返し行うものであった。この工法では、鉄塔のジャッキダウンの都度、控え線を引き込んだり、弛めることによって鉄塔の傾斜を是正していた。鉄塔の解体撤去工事は、仮設設備その他の準備工を終え、既に6回のジャッキダウンを繰り返し、40mの解体が進んでいた。災害が発生した日は、7回目のジャッキダウンを行うため、鉄塔の傾斜是正の作業と控え線の盛り替え作業が同時並行して始められた。最初の傾斜是正を終え、再度盛り換えが行われ、作業完了の報告がなされた直後、鉄塔が南側に倒れ鉄塔周辺で作業していた作業員4名が被災した。
経過 本解体作業で採用した工法は新しい工法であったが、作業の安全を確保するための事前検討が不十分であり、控え線盛り替え時の作業中止、不意の危険に対する退避経路の確保などの安全対策が十分に講じられていなかった。 また、鉄塔倒壊防止のための控え線を固定するクランプ留めに関するマニュアルを作成しないまま、作業が行われていた。
原因 北側控え線最上段の引き込み用クランプのくさびの取り付け、またはクランプボルトの締め付け不足などにより、控え線がクランプ内で滑りを生じ、控え線の張力が解放されたため、バランスを失った鉄塔本体が南側に倒壊した。
対処 鉄塔が倒壊したため地上において解体撤去した。
対策 作業の安全確保、控え線を固定するクランプ留め等に関するマニュアルを作成し、作業員に周知徹底する必要がある。
知識化 新しい工法を採用する場合には、作業の安全を確保するためのアセスメントを実施する体制を整備し、作業ごとの安全を検討し、その検討結果を踏まえて作業計画や作業マニュアルを作成する仕組みを構築する。また、その作業マニュアルに基づいて、作業員全員に対して教育訓練を実施する。
背景 ・新しい工法を採用する場合におけるアセスメントが不十分であった。
・作業の安全を確保するための事前の検討が不十分であった。
・控え線を固定するクランプ留め等に関する作業マニュアルが作成されていなかった。
データベース登録の
動機
構造物の解体作業時における倒壊災害が多いため。
シナリオ
主シナリオ 調査・検討の不足、事前検討不足、作業・工程検討不足、価値観不良、安全意識不良、安全対策不足、組織運営不良、運営の硬直化、教育・訓練不足、無知、知識不足、経験不足、非定常動作、状況変化時動作、緊急時動作、非定常操作、緊急操作、緊急停止、定常動作、危険動作、危険場所立入り、計画・設計、計画不良、専門性不適合、身体的被害、死亡、事故死、身体的被害、負傷、重傷、破損、大規模破損、倒壊
情報源 http://www.jaish.gr.jp/
死者数 1
負傷者数 3
物的被害 鉄塔
分野 建設
データ作成者 大幢 勝利 (独立行政法人産業安全研究所)