失敗事例

事例名称 石膏ボードの加工作業中、玄関吹抜け部から墜落
代表図
事例発生日付 2000年07月20日
事例発生場所 2階建て木造家屋新築工事現場
事例概要 2階建て木造家屋新築工事現場の2階の階段ホールに積んであった壁下地用石膏ボードを、大工が一人でカッターナイフを使って加工・切断作業中、不意に後ろに下がったところ、玄関吹抜け開口部から足を踏み外し、3m下の1階玄関土間コンクリート上に墜落した。
事象 7月20日午後2時頃、2階建て木造新築工事現場において、玄関吹抜け開口部から足を踏み外し、大工が1階玄関土間コンクリート上に墜落し、休業2ヶ月の重傷を負った。
経過 ・当日の朝、下請の工務店社長より電話で、作業員の作業配置、作業割当て及び作業内容の指示があった。
・元請の現場監督者及び下請の工務店社長は、現場に立ち寄った際、玄関吹抜け開口部の手すりを取り付けるよう大工に指示した。しかし、開口部の手すりの取付けを行ったかどうかの確認を行わずに現場を去った。
・大工は一人で2階の階段ホールに積んであった壁下地用石膏ボードを、カッターナイフを使って加工・切断作業をはじめた。
・午後2時30分頃、加工作業中に不意に後に下がったところ、玄関吹抜け開口部から足を踏み外し、1階玄関土間コンクリート上に墜落した。
原因 ・大工は、玄関吹抜け開口部において、開口部を背にして作業を行い、不意に後ろに下がったため墜落した。
・玄関吹抜け開口部には、転落防止用の手すりが設置されていなかった。
・元請の現場監督者及び下請の工務店社長は、開口部の手すりの取付けを指示していたにもかかわらず、手すりの取付け状況を確認することなく、現場を去ったこと。
対処 玄関吹抜け開口部には、必ず転落防止用手すりを設置してから作業を行う。
対策 ・吹抜け開口部には、転落防止用手すりの設置を徹底する。
・元請の現場監督者及び下請の工務店社長は是正指示した事項が確実に実施されたかどうか、その改善状況を確認する。
・作業者の安全作業優先の考えや意識付けの教育を実施するとともに危険予知活動の実践により、安全意識の高揚を図る。
知識化 ・吹抜け開口部等の転落防止用手すりの設置基準を文章化し、関係者に周知徹底する。
・元請の現場監督者及び下請の工務店社長などが現場での作業指示や安全点検パトロールを行う際に発見した是正、改善すべき事項は文章により公式化し、かつ、是正・改善状況の確認を励行させる。
・全作業者に対し、この種の災害事例に関する安全教育を実施し、安全作業方法の周知を行い、危険予知活動を徹底させる。
背景 ・玄関吹抜け開口部の転落防止用手すりの設置の指示を受けていた大工は、材料の上げ下げで邪魔になると思い、そのままにしていた。また、作業に熱中していて、背後の開口部の存在を忘れていた。
・元請の現場監督者は現場を多くかかえており、この現場に長時間駐在することができなかった。
・下請の工務店社長も大工に任せ切りで、自分が大工の作業状況や手すりの設置状況を確認しなくてもよいと思っていた。
後日談 ・開口部の転落防止措置の実施状況の確認不備がある場合は、その場で是正させるよう全現場の職長に指示した。
・是正指示事項の改善状況の確認方法として、写真添付の提出の義務化を行った。
・安全パトロール時に危険予知活動の実施状況をフォローし、指導するようにした。
よもやま話 下請の工務店には作業手順書や安全衛生管理規定がなかったが、これらは元請が作るものであると思っていたとのこと。
当事者ヒアリング ・大工は、日頃からヘルメットのあご紐をしっかりと締める習慣がなく、指示もされていなかったので、墜落したとき、ヘルメットがはずれた。
・作業前の安全ミーティングは、大工の一人作業であったので、行っていなかった。
データベース登録の
動機
同種及び類似の労働災害を発生させないために!
シナリオ
主シナリオ 誤判断、状況に対する誤判断、不注意、注意・用心不足、作業者不注意、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、定常動作、危険動作、危険場所立入り、定常動作、危険動作、落下・転落、定常動作、不注意動作、製作、ハード製作、落下・転落、身体的障害、重傷
情報源 建設業労働災害防止協会、「SMT講座」シート集
死者数 0
負傷者数 1
被害金額 不明
全経済損失 不明
社会への影響 低層住宅現場での労働災害の発生は、元請及び下請の管理責任に対する社会的な不信を招くとともに、施主、近隣住民、見学者からの現場における危険性への不安感と不信感を増大させる。
分野 建設
データ作成者 狩野 幸司 (建設業労働災害防止協会)