事例名称 |
高所作業車の油圧シリンダーが破損し、バケットから墜落 |
代表図 |
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事例発生場所 |
幹線電柱の鳥害対策工事現場 |
事例概要 |
幹線電柱の鳥害対策工事現場において、電気工である被災者は、高所作業車のバケットに乗って、道路側2本のバインド線を交換した後、引込用高所作業車のブームを一度下げて電線をたぐり、道路反対側の駐車場から作業をしようとした。そのとき、引込用高所作業車の第1段ブームと第2段ブーム下の「リンクA」が破損し、被災者が乗っていたバケットが「バキッ」という破損音とともに駐車場側に急降下したため、駐車場に転落した。 |
事象 |
午後5時頃、幹線電柱の鳥害対策工事において、電気工である被災者が引込用高所作業車のバケットに乗って、電線の補修作業をしていたとき、第1段ブームと第2段ブーム下の「リンクA」が破損し、バケットが急降下したため、駐車場に転落した。 |
経過 |
・午後1時30分頃、被災者が引込用高所作業車(ブームが屈伸するタイプでバスケット1人乗り)に乗って鳥害対策工事現場に到着した。 ・作業の割振りは、被災者が引込用高所作業車のバケットに乗って電線の補修作業を、作業班長が監視を、班員が下廻り作業(部材の受渡し等)を行うものであった。 ・午後5時頃、3本目の電柱の電線の補修作業を行うため、被災者は、引込用高所作業車のバケットに乗って電柱の一番上の活線のバインド線を交換した後、ブームを一度下げて電柱をたぐり、道路反対側の駐車場側から作業をしようとした。そのとき、第1段ブームと第2段ブーム下の「リンクA」が破損し、被災者が乗っていたバケットが地上約8.5mの地点から地上約1.5mの地点まで「バキッ」という破損音とともに駐車場側に急降下したため、駐車場側のアスファルト上に転落し、死亡した。 |
原因 |
・「リンクA」本体とボス部の溶接部(すみ肉溶接)が剥がれて突然破損したこと。 ・破損原因は、製作当初からリンクAが十分に溶着していなかった結果、年数の経過とともに次第にさびつき、亀裂が生じたものと考えられること。 ・法定の年次検査や月次定期自主点検を行っておらず、また作業開始前点検も行っていなかったことから、溶着部の剥がれ、亀裂等を見過ごしていたこと。 ・被災者は車両に付設されていたD環状の金具に安全帯をかけていなかったため地上に叩きつけられたこと。 ・現場では作業開始前の危険予知訓練で「バケットからの墜落」をあげていたにもかかわらず、その対策を実行していなかったこと。 |
対処 |
車両の点検・整備を行い、車両各部の亀裂、損傷箇所の補修を行った。 |
対策 |
・車両の点検・整備方法として、法定の年次特定自主検査、月次定期自主検査、作業開始前点検を確実に実施し、車両各部の亀裂、破損又は著しい汚れがないかを確認すること。また、異常を認めたときは、補修、その他必要な措置を講じること。 ・特定自主検査等の車両一覧表を作成し、点検簿等で検査・点検結果等を記録すること。 |
知識化 |
・特定自主検査等の点検簿等を作成し、検査・点検の励行を行う。 ・現場の安全パトロールを定期的に実施し、車両の点検・整備状況の点検項目を文書化し、チェックを励行する。 ・現場での安全帯の使用状況等をチェックし、危険予知訓練で決定した事項を確実に実施させる。 ・作業員に対し、安全衛生教育の実施、安全作業マニュアルに基づく作業の実施を徹底させる。 |
背景 |
これまで使用していた引込用高所作業車の使用上の異常について、全く誰も気がついていなかったこと自体、不思議なことであった。 |
後日談 |
引込用高所作業車全車両の検査・点検を実施した。 |
データベース登録の 動機 |
同種及び類似の労働災害を発生させないために! |
シナリオ |
主シナリオ
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調査・検討の不足、事前検討不足、作業・工程検討不足、組織運営不良、管理不良、作業管理不良、製作、ハード製作、機械・機器の製造、使用、保守・修理、修復なし、点検なし、検査なし、破損、破壊・損傷、破壊・破断、亀裂・割れ、身体的被害、人損、落下・転落、身体的被害、死亡
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死者数 |
1 |
負傷者数 |
0 |
物的被害 |
不明 |
被害金額 |
不明 |
全経済損失 |
不明 |
社会への影響 |
幹線電柱の鳥害対策工事の発注者に対する信頼感の失墜はもとより、社会的にも高所作業車メーカーに対する不信感や施工関係者への危険性への恐怖感を与えた。 |
分野 |
建設
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データ作成者 |
狩野 幸司 (建設業労働災害防止協会)
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