事例名称 |
A市東部に給水網本管敷き設工事中のH区間における大崩落死亡事故 |
代表図 |
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事例発生日付 |
2000年01月30日 |
事例発生地 |
中国A市東部 |
事例発生場所 |
A市東部における給水網本管敷設工事のH区間トンネル出口HK3+670区間 |
事例概要 |
1月30日A市東部における給水網本管敷設工事のH区間トンネル出口のHK3+670区間において、崩落事故が発生した。当局が応急処理を行なっている最中に再び崩落し、作業中の作業員7名が生き埋めになり、そのうち5名が死亡した。 |
事象 |
崩落区間の応急処理を行なっている最中に再び崩落し作業中の作業員7名が生き埋めになり、そのうち5名が死亡した。 |
経過 |
・2000年1月30日、某建設公司のトンネル内壁施工班10名は出口HK3+675~684区間の2次覆工のアーチ部の鉄筋の組み立て作業を行っていた。 ・掘削班5名はHK3+666~670区間で下半導坑のずり処理をし、格子上のアーチ桁取り付けを開始した。 ・15時頃、作業員はこの区間の右側壁のアーチ線の個所に亀裂が現れ、ずりやコンクリートが落ちてくるのを発見した。 ・建設公司の工事長等は直ちに補強したが、効果なく、作業員を撤収した。 ・建設公司の工事長等は、現場の状況について、現場工事部と工事管理部に通報した。 ・15時12分頃、右側壁の亀裂から崩落が発生し、アーチ部右半分(ずり量40m3余)が崩落した。 ・16時頃、工事部の臨時管理責任者、技術責任者、工事管理公司工程師、建設公司の工事長等は崩落した壁面にコンクリートを吹き付け、次に崩落したアーチ部を支え強化するなどの応急処理案を策定した。 ・16時30分~23時35分、責任者2名が掘削班5名、風槍班3名を引き連れ、応急対策に当たった。 ・2000年1月31日、10時~3時30分責任者はさらに掘削班5名、電気溶接班2名、内壁施工班4名を引き連れて、応急処理に向かった。 ・管理工程師と某局管理者及び工事長等はその間次々と現場を離れた。 ・午前3時30分頃、掘削班が鉄筋ネット取り付けを完了し、コンクリートを吹きつけようとしたとき崩落個所が再び崩落した。このときのずり量は20m3余であった。 ・崩落により、作業中の作業員7名が現場に生き埋めになり、午前5時頃全作業員を救出したが5名は死亡、2名は軽傷であった。 |
原因 |
1月30日、第一次崩落の直接的原因 ・設計図通りの施工が行なわれず、初期支持力が設計荷重に達していなかった。 ・崩落個所の壁岩は強風化軟質岩で水分がない場合にはある程度の強度がある。しかし浸水すると壁岩の強度は弱まる。 ・日常において、地山変位測定や監視を行なっていなかったため、壁岩の変位や強度の低下に対応する有効な処置をとることが出来ず、壁岩が変位を続け、強度は低下していった。 1月31日、第2次崩落及び人員死亡の直接原因 ・第1次崩落で、地山はゆるみ壁岩は既に強度を失っていたにもかかわらず、地山の水道の有無や地山の強度の確認などをして復旧計画をたてるなどの検討をせず、直ちに応急処理を開始した。 ・現場作業員は崩落処理の経験が浅く、応急処置が不適切であった。 ・タイバックアンカーを挿し込む時、ドリルの振動が崩落を助長させた。 間接的原因 ・施工者の施工管理が不備であり、設計どおりの施工が出来ていない。 ・安全管理体制が不備である。 ・現場技術員・監督員・管理者の非常時での安全意識の欠如(綿密な検討もせず、現場で、口頭による崩落応急処理案を策定したこと、および、応急処理時の管理工程師、某局管理者、及び工事長等は次々と現場を離れたこと) |
対策 |
・安全・品質保証システムを構築し、現場工事部の指導グループを整備する。 ・安全監督体制を構築し、段階的に徹底させ、各責任者に安全責任を付与して、安全作業をスムーズに行わせるようにする。 ・建設工事に参加する者は、安全教育と技能教育を受け、「安全第一、予防第一」という考えから、1名でも危険を訴えれば、作業を行なわないという制度を実施する。 ・工事品質に対する監督と検査を強化するべきである。 ・災害時には、2次災害をさけるため、事故原因を明確にし、適切な復旧計画を策定して、復旧作業にとりかかるべきで、闇雲に応急処置に取り掛かるべきでない。 |
背景 |
・某建設公司は市政府に登録しておらず、非合法的に工事の下請けをした。 ・安全管理体制を構築せず、勝手に従業員を雇用していた。 ・工事管理公司は監督管理が不全でかつ対応能力が不足しており、また、スタッフは無資格で作業していた。 |
後日談 |
・施工管理体制、安全管理体制が不備であり、施工担当者への行政処分などにより、責任を追及する。さらに、今後工事を続けていくためには、施工管理体制、安全管理体制の改善が必要である。 ・本工事にたいする管理を軽視し、応急処理も不適当であったとして、臨時責任者他監督・管理者には重要な管理責任がある。 |
シナリオ |
主シナリオ
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無知、知識不足、地山の強度低下についての知識不足、誤判断、誤った理解、亀裂発生と同時に実施した場当たり的補強、調査・検討の不足、事前検討不足、冷静な復旧計画なしで、作業実施、価値観不良、安全意識不良、安全意識・順法精神不足、災害防止への意欲不足、組織運営不良、管理不良、工事品質に対する管理能力不足、施工管理体制が不備、日常の地山の観察・観測・監視の怠慢、定常動作、誤動作、有効な処置の不実施、不良行為、規則違反、異常時の復旧作業に管理者が不在、非定常行為、非常時行為、崩落で緩んだ山での作業実施、非定常行為、変更、技術未熟な経験の少ない作業員、破損、大規模破損、壁岩の崩落、壁岩の再崩落、身体的被害、死亡、5人死亡、身体的被害、負傷
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情報源 |
平成13年度建設分野における失敗知識の分析とデーター化報告書
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死者数 |
5 |
負傷者数 |
2 |
分野 |
建設
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データ作成者 |
前川 行正 (日本技術開発株式会社)
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