事例名称 |
ワイヤブリッジのワイヤ取付部のアンカーが抜ける |
代表図 |
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事例発生日付 |
1994年10月14日 |
事例発生地 |
鹿児島県 |
事例発生場所 |
鹿児島県内の橋梁架設現場 |
事例概要 |
鹿児島県内のアーチ橋架設現場で、アーチ橋架設前の仮設備として、P1、P2脚間に渡り足場用、及び墜落防止用のワイヤブリッジを施工中、P2橋脚にワイヤを固定していた4個のアンカー金具のうち2個がアンカーと共に抜けた。そのためワイヤブリッジが傾き、このはずみでワイヤブリッジ上にいた5人の作業員のうち3人が転落し、2人が死亡し、1人が重傷を負った。 |
事象 |
橋梁架設現場でワイヤブリッジ施工中にワイヤを固定していたアンカー8箇所のうち2箇所の金具がアンカーと共に抜け、ワイヤブリッジが傾き、作業員3人が転落した。 |
経過 |
・事故の前日からワイヤブリッジの設置をはじめた。 ・その日のうちにアンカーを固定し、ワイヤの取付と安全ネットの設置を行った。 ・事故の当日はワイヤに鋼管パイプを取付ける作業を行っていた。片方の橋脚から約22m地点まで取付け終えた9時38分頃、8箇所のアンカーのうちP2橋脚の2箇所のアンカーが外れてワイヤーブリッジが大きく傾いた。 ・このはずみでワイヤブリッジ上で作業していた5人の作業員のうち、3人が約16m下の谷底に転落した。1人は安全帯を使用していて転落を免れ、もう1人はネットにしがみつき助かった。 ・転落した3人のうち、2人は死亡し1人は重傷を負った。 |
原因 |
・アンカーは金属拡張型アンカーを使用しており、アンカーの孔は規程通りの大きさで開けられていたが、抜けたアンカー孔にコーンが残っており、拡張部が十分広がっておらず、強度が出ていなかった。 ・アンカー基部が広がらなかったのは、打ち込み不足か、打ち込み忘れか、コンクリートの削り粉が残っていたか等で施工不良であった。 ・管理者がアンカーの重要性を認識せず、作業員まかせにし、確実に施工されているかどうかの確認がされていなかった。 |
対処 |
・工事再開後にはアンカーはせん断、引き抜きに対して、より確実な接着系アンカー(ケミカルアンカー)を使用した。 ・ワイヤブリッジが落下しても、人間が墜落しないような安全帯取付け設備を設けた。 |
対策 |
・ワイヤブリッジのアンカーはケミカルアンカーを使用する。 ・管理者はアンカーの施工には立会い、施工状況を確認する。 ・たとえ仮設とはいえ負荷試験を実施する。 |
知識化 |
・ワイヤブリッジのアンカーは必ずケミカルアンカーを使用する。 |
背景 |
・アンカーに取り扱い易い金属拡張型のものが使用された。 ・橋建橋が発行している「鋼橋架設工事における足場防護工の構造基準」で、ワイヤブリッジ用アンカー金具のアンカーはケミカルアンカーを使用するよう明示しているが、この現場では採用されなかった。 |
後日談 |
橋建橋安全委員会のある委員から「この種の工事では、ワイヤブリッジを設置することが初めからわかっている。下部工施工時に埋め込み式のアンカーを設置しておくのも一つの手だ」とのコメントがあった。 |
データベース登録の 動機 |
同じ間違いを繰り返さないため。 |
シナリオ |
主シナリオ
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無知、知識不足、勉学不足、不注意、注意・用心不足、取扱不適、価値観不良、安全意識不良、特性認識不足、組織運営不良、管理不良、管理の緩み、計画・設計、計画不良、専門性不適合、定常操作、誤操作、中途半端、破損、大規模破損、崩壊、身体的被害、死亡、事故死、身体的被害、負傷、重傷
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情報源 |
・失敗知識DB推進委員会建設分野研究委員会、日本橋梁建設協会提出資料 ・日経コンストラクション、建設事故重大災害70例に学ぶ再発防止策
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死者数 |
2 |
負傷者数 |
1 |
分野 |
建設
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データ作成者 |
鍋島 肇 (社団法人 日本橋梁建設協会)
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