事例名称 |
脚立上で庭木剪定作業中に墜落 |
代表図 |
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事例概要 |
個人住宅の庭において、松の木剪定作業中に発生した墜落災害。 松の枝の一群の手前部分の剪定を終え、後背部分の枝を剪定しようと脚立を下りかけたときに、体のバランスを崩し墜落。 |
事象 |
被災者は、作業開始後90分ほど松の木の上部(高さ約3.7m~5.0m)の枝の一群の剪定を行い、次の作業に移ろうとしたとき、脚立の8段目附近(高さ約2.3m)から体のバランスを崩して下のコンクリート通路上に墜落し、頭部を強打し死亡。 |
経過 |
・当日の作業は、リーダー格の同僚作業員と被災者の2人で個人住宅の庭にある樹木の剪定作業を行うものであった。 ・当日朝、依頼者宅に到着後、2人で作業開始前の打合せを約10分間行い、被災者が玄関近くの表庭の松の木の剪定作業を、同僚が裏庭の樹木の剪定作業を各々分担して行うことになった。 ・このとき、リーダー格の同僚は被災者に作業中はヘルメットを着用し、安全帯を使うことを指示していた。 ・被災者は、作業開始後90分ほど松の木の上の部分(高さ約3.7m~5.0m)の枝の一群の剪定を行った。 ・この時被災者は、安全帯の処置を行っておらず、またヘルメットを不着用であった。 ・被災者が、次の作業である松の木後背部の枝の剪定に移るため、脚立を下りようとした際、脚立の8段目附近(高さ約2.3m)から体のバランスを崩して下のコンクリート通路上に墜落し、頭部を強打し死亡した。 |
原因 |
・地上から約2.3mの高さの所で剪定作業を行っており、墜落の危険性があったにもかかわらず安全帯を松の木に取り付けるなどの墜落防止措置を行っていなかったこと。 ・墜落した箇所がコンクリートの通路上であったが、ヘルメット(保護帽)を着用していなかったこと。 ・作業中の安全指示が徹底されていなかったこと。 |
対策 |
同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要。 ・墜落防止措置の徹底:5m程度の高所での松の木等の剪定作業では、脚立を使用する場合が多いが、このような場合には、安全対策の基本として作業者は安全帯を着用し、松の木の幹等に補助ロープを巻き付け、これに安全帯をかけて安定した作業姿勢で作業を行うこと。また、この作業を繰り返すときには、補助ロープを枝の適当な箇所に数本巻き付けて作業を行うこと。 ・作業時及び昇降時の安全の確保:脚立を使用しながら作業を行ったり、脚立上を昇り降りするときには、必ず保護帽を着用し、かつ、慎重に足元を確かめながら昇り降りをすること。また、樹木の剪定作業について基本となる安全作業手順を定め、その手順に従って作業を進めるよう教育をすること。 ・作業者もマニュアルに沿った手順で作業を行うこと。 |
知識化 |
最低限の安全対策が不可欠 |
背景 |
墜落災害は「繰り返し型」災害と呼ばれ、類似災害が数多く発生している(建設工事の労働災害の約4割は墜落・転落災害である)にもかかわらず、自分自身や身近な作業者にいつでも起こり得る災害であるとの意識は一般的に低く、最低限の安全対策もなおざりになりがちである。 |
よもやま話 |
墜落災害は個々の事例ごとに各々状況や背景は異なるものの、本事例のように、驚くほど類似した形で数多く発生しているところから、「繰り返し型」災害と呼ばれる代表的なものとされている。同種の災害の発生について記された古典も多く、例えば、吉田兼好の徒然草109段には、「・・あやまちは安き所になりて、必ず仕る・・」と言う墜落災害に対する木登りの名人の心得に対して兼好が感心する題材が取り上げられている。 |
データベース登録の 動機 |
墜落災害事例としてよく散見される典型的な事例であり、最低限の墜落防護対策を講じておれば防げた事例である。 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、安全対策不足、価値観不良、安全意識不良、安全教育不足、不注意、理解不足、リスク認識不足、定常動作、危険動作、転落、身体的被害、人損、落下・転落、身体的被害、死亡
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情報源 |
http://www.jaish.gr.jp/
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死者数 |
1 |
負傷者数 |
0 |
被害金額 |
不明 |
全経済損失 |
不明 |
社会への影響 |
なし |
備考 |
なし |
分野 |
建設
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データ作成者 |
鈴木 芳美 (独立行政法人 産業安全研究所)
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