事例名称 |
ケーブルクレーンで吊り上げた掘削土搬出用ベッセルに激突され法面を転落 |
代表図 |
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事例発生日付 |
1996年06月26日 |
事例発生地 |
広島県 |
事例発生場所 |
ダム建設工事に伴う町道付替工事作業箇所 |
事例概要 |
道路の付替工事において、擁壁の床堀作業を監視していた現場責任者が、ケーブルクレーンで吊り上げていた掘削土砂を搬出するベッセル(箱)に激突され、法面を38m下まで転落。 |
事象 |
ケーブルクレーンの稼働中に、吊り荷が横行する経路内にあたる路肩上にいた現場責任者にケーブルクレーンのベッセル(掘削土砂搬出用の箱)が激突し、現場責任者が突き飛ばされて法面を転落、死亡した。 |
経過 |
・道路の付替工事において、擁壁の床堀作業をドラグショベルを運転して行っていた作業員Aは、ドラグショベルにより掘削した土砂を土砂運搬用のベッセルに積み込み、ベッセルが満杯になったところで、ケーブルクレーンで吊り上げ、土砂捨て場に搬出する作業を繰り返していた。 ・午後の作業が開始されてまもなく、現場責任者が床堀作業の現場にきて作業の指示を行い、そのまま床堀作業の監視をしていた。 ・そのとき、作業員Aは、ベッセルに掘削土が満杯になったので、トランシーバーを使用して、ケーブルクレーン運転者Bにケーブルクレーンの巻き上げおよび横行の合図を送った。 ・合図を受けた運転者Bがケーブルクレーンの操作を行い、ベッセルを吊り上げ、約5mほど横行したところで、路肩上にいた現場責任者にベッセルが激突し、現場責任者は突き飛ばされて擁壁の床堀箇所に転落した後、さらに法面を約38m下まで転落した。 |
原因 |
この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。 1.作業状況の監視を主索道の直下に位置する場所で行っていたこと。 2.擁壁の床堀作業場所においては、他の下請の作業員による作業などが行われていたが、同時にその作業場所の真上を横行するケーブルクレーンが稼働していたこと。 3.合図者が、吊り荷が横行する経路の作業の状況などの安全確認を十分行わないまま、ケーブルクレーン運転の合図を運転室へ送ったこと。 4.ケーブルクレーンの稼働中に、吊り荷が横行する経路内への立ち入りを禁止していなかったこと。 5.作業計画を作成するなど事前の検討が不十分であったこと。 6.複数の作業が混在して行われることによる災害防止のための連絡調整が十分に行われていなかったこと。 |
対策 |
同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要と考えられる。 1.ケーブルクレーンの稼働中は、吊り荷が横行する経路内への立ち入りを禁止すること。 2.ケーブルクレーンの吊り荷が横行する経路内への立ち入りを禁止するために、柵、ロープまたは杭などにより経路を明示し、表示を行うこと。 3.専属の合図者を配置し、この者に吊り荷の横行範囲内への立ち入りを監視させながら安全確認を行わせて、ケーブルクレーン運転者への合図を行わせること。 4.作業計画を作成し、ケーブルクレーンの稼働中における立入禁止、作業の中断、合図者の配置など作業の安全を確保するための対策を検討すること。 5.元請は、関係請負人の作業員が、同一場所で混在して作業が行われることにより発生する労働災害を防止するための連絡調整を行うこと。 6.現場責任者に対する、安全管理計画および工程ごとの作業計画の作成など現場における安全管理全般にわたる管理者のための安全教育を実施すること。 |
知識化 |
並行作業、上下作業に注意! 重機やケーブルの可動範囲には立ち入らないことは建設工事での最低限の安全確保の要件である。 |
データベース登録の 動機 |
建設現場では並行(上下)作業は頻繁に行われる。建設現場でよく散見される典型的な災害事例であり、「重機やケーブルの可動範囲に立ち入らない」という最低限の安全確保の対応を取っていれば避けられた事例である。 |
シナリオ |
主シナリオ
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価値観不良、安全意識不良、リスク認識不良、価値観不良、安全意識不良、安全対策不足、定常動作、危険動作、危険場所立ち入り、身体的被害、人損、接触、転落、身体的被害、死亡
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情報源 |
http://www.jaish.gr.jp/
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死者数 |
1 |
負傷者数 |
0 |
被害金額 |
不明 |
全経済損失 |
不明 |
社会への影響 |
なし |
備考 |
なし |
分野 |
建設
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データ作成者 |
鈴木 芳美 (独立行政法人 産業安全研究所)
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